五輪男子 その1
2014年 02月 24日
五輪なので、初の試みとして国別に選手を挙げて行こうかな、と。
基本的にフリーまで出場した選手を対象にしていますが、フリーの中でも録画から漏れてる選手もいますので、そこはご容赦下さい(HDD残量が…)。
一応、日本語での国名で五十音順にしてみようと思いますが、イレギュラーの部分もあると思います。
<アメリカ> 2枠
●ジェレミー・アボット(28歳) 総合12位
SP: Let yourserf go(振付:ロビン・カズンズ)
FS: エクソジェネシス:交響曲第3部(振付:佐藤有香、ロベルト・カンパネラ、ジェレミー・アボット)
全米選手権ではノーミスだったのに、五輪の団体SPでは想定外の連続ミス。涙を浮かべ頭を抱えて落ち込んだアボット君。ついでに言うと、団体の演技を始める前に、女子アナがコーチの2人を見て「コーチの有香さんと夫のダンジェンさん」と言ってしまっていて、あちゃ~。2人は今でもコーチ業は一緒にしているけど、婚姻関係は最近ディボース。こういう情報はちゃんと押さえておかないとね…。言われた側はもちろん、聞いてる側もツライ。
団体での心の痛みを引きずっているかのような、緊張した面持ちで個人戦SPに現れたアボット君。
冒頭の4回転で右体側から激しく転倒、そのまま壁に激突、あまりの痛みに瞬間動きが止まり、なかなか起き上がることができない。手を壁の上に伸ばすけど、壁の上まで届かず、そこに掴って起き上がることもできない。思わず、心が叫ぶ「壁、いつもより高いんじゃない!?」(んなわけないんだけど…)。
中継の映像では映りませんでしたが、アボット君の転倒位置は、コーチの目の前だったようです。下の写真(引用元はmsn産経ニュースのこちらの記事)を見た時は絶句しました。有香さんとダンジェンさんは、アボット君の手を引っ張って助け上げることは出来ないのでしょうね…。お互いなんと苦しい時間でしょうか。選手はなんと孤独なのでしょうか。
もう何度も見てる演目(映画「ピナ」)なのに、ここがどの振付の部分か全く分からない(私が)。アボット君が必死に、足でスピードを上げながら、以後の演技構成を考えているのが分かる。簡単なつなぎをして、直後、見事な3-3。大きな拍手と歓声。スピンを終えると、手拍子が途切れることなく続いて。どんどん手拍子が大きくなったところで3A。歓声があがり、更に手拍子は続いていく。手拍子の中でスピンを2種類行い(★)、最後はステップ(★)。時間が間に合うかどうか、分からない。どこまで出来るかどうかも分からない。たぶん、途中で終わっているんだけど、本当に本当に、良く頑張った、アボット君!!スタンディングオベーション!なんと上記(★)マークの2つのスピンとステップはレベル4!!スコア見て涙が出たのは初めてかも(笑)。
FSでは、SPで痛めた右腰をかばうためにジャンプ構成を変更。元々小器用に身体を動かしまくる人ではないけれど、おそらく痛みもあり、身体のダメージによる動き難さも相当あるのでしょう、特に腰から上の動きが明らかにぎこちない。苦しい五輪となりました。
ただ、このFSは、演目として彼の良さが凄く引き出されていて、本当に素晴らしいですよね。今回のコンディションでさえ、アボット君のスケートの上手さが伝わってきます。
背景が、凄いスピードで飛ぶように流れていくのに、アボット君はとても静かな佇まいなの。帆に風を受けたボートのように、全く力みなく、ごく自然に流れていく。リンクがまるで、木立の間に人知れず存在する、明るく静かな湖のようです。どこまでも途切れることなく、淀みなく、一瞬の迷いもなく、続いていく確かな流れ。もしかして、あなたはボートに乗ってるのではなくて、風そのものですか。
●ジェイソン・ブラウン(19歳) 総合9位
SP=The Question of U byプリンス(振付:ローヒーン・ワード)
FS=リバーダンスより『Reel Around the Sun』(振付:ローヒーン・ワード)
4回転を持っていないので、今は上位陣には食いこんでいけない彼。でも、逆にそうだからこそ、余裕を持って演技に集中できる面もあるのでしょう。五輪初出場ながら、団体戦でも頑張りましたし、個人戦でも安定感がありました。
柔軟性があり身体のコントロール力が高い。また、手先・足先・首まで気を使った丁寧なムーブメント、正統派のジャストな音取りも、とても好感が持てます。FSの最後のステップでは、さすがに体力的にきつかったようで、「リズムにギリギリ遅れないように頑張ってます感」があったものの、上等の出来。
他の選手では、ステップなどの際に足元を確認するように下を向いてしまうことや、緊張しないためか観客を見ないように視線を水平より若干下方向に泳がせること、または視線自体は水平(以上)に上げていても、心の中で観客や外界を遮断していることが分かる「クローズドな空気」を出しちゃうことがある。
そんな中でジェイソン君が何より偉いと思うのは、彼の場合、「常に」視線が下に下がらないことです。視線を意図する方向にきちんと向けて、そこにいる誰かと(それがカメラであっても)「視線を合わせる」ことに躊躇がないことに、表現者としてのポテンシャルを感じます。彼は、とてもオープンにパフォーマンスします。ベテラン勢をいれても屈指のオープンさ。彼の魅力の1つでしょうね。
<ウズベキスタン> 1枠
●ミーシャ・ジー(22歳) 総合17位
SP: Still Got Blues, Still Got Rock
FS: World Dance Collection
モスクワ出身で中国等で育ち、ウズベキスタン代表となったジー君。
多様な文化的背景があるからか、目立つことが大好きだからか、いつも外見、演目、パフォーマンスが個性的。今回の振付も手掛けたそうですね。
今回も髪を赤くして「俺はちょっと違うんだぜ」感満載。ただ現在また中国に住んでいるせいか、色と染め方が何となく中国人旅行者に時々見られる「えっと…」的な微妙さであることは、気のせいってことにしておきたい。
観客へのあいさつの仕方(四方それぞれ違う挨拶)から始まって、リンクからの引き上げ方、キスクラでの振る舞いに至るまで、見事に「対観客」で自分を演出。アスリートというよりも、また身体表現者というよりも、観客の目の前で自分を出して注目を集めたいというパフォーマー気質が強いですよね(後で述べるボーカルもどき楽曲使用も)。アモディオ君にも、昔、そんな気質が少々見受けられましたが、ジー君はもっとずっとぶっ飛んでいるというか、はっちゃけてます。ここまで行くと、かなり好き嫌いが分かれるかもしれない。
FSはワールド・ダンス・コレクションと銘打たれていて、序盤はタンゴ。ねちっこいです。女性は想定しておらず、自己陶酔して1人で踊っているタイプです。苦手な人もいらっしゃるでしょう(笑)。次の「ある恋の物語」は、高橋さん他が過去に使用していた、おなじみのねちっこいアレンジのもの。導入部こそねちっこく(笑)ポーズしてたけど、その後は余裕が無くなったみたいで・・・「ウッ!」のところでも何もなし。ちょいと寂しい。
終盤はアップテンポの楽曲が続くので、体力が持たなかったかな。ステップは、彼らしい派手なパフォーマンスの見せ場であることは確かでしょうが、脚・足があまり動かないのですよね(笑)。空回りとまでは言いませんが、頭や腕を激しく動かしても、全身の動きになってないところが、いかんせん。どっちかって言うと、舞踊的な表現というより、ロック歌手の自己表現に近い。
なお、この終盤部分、一部ボーカルが入っていて(だからロック歌手の自己表現なのかもしれないけど。笑)、今季はこれを理由に殆どの試合でマイナス(1点)されていたそう。マイナスするかどうかは、その時々のジャッジが判断するのですってね(by本田さん)。今回、五輪の場でマイナスされなかったのでガッツポーズ(笑)。
マイナスされ続けても、この曲に拘って使い続けてきた頑固なジー君、良かったね。もちろん、この確信犯とも言える行為を不快に思う方もいらっしゃるだろうけど、私は「ルールはどんな場合も絶対でなくてはならない」という考え方が薄いので、こういうのは楽しいです。
次回は、カザフスタンからです。