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もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

ジャパン・オープン & カーニバル・オン・アイス 女子雑感

ただ過ぎに過ぐるもの
帆をあげたる舟。人のよはひ。春、夏、秋、冬。
(枕草子より。表記は私の好みなので受験生は気をつけて)

ってなことを思い出す今日この頃。
GPSもいよいよ今週末に迫りました。早く書かなくちゃと思いながら遅くなっちゃいましたが、女子雑感を。

●宮原さん/FS:ポエタ
何度も指摘しちゃうけど、年若い宮原さんには、まだまだ難しい楽曲ですわね。
年齢的に若く身体も小さいだけに、楽曲を大人っぽくして、五輪シーズンの前線に立たせたいのでしょうけれども。この楽曲は、今の彼女がどんなに背伸びしても、無理なところにあると思う。ここまで離れてると、ねらったところが逆効果というか、幼さや小ささがむしろクローズアップされるなあ、と。

●かなこちゃん/FS:映画「愛のイエントル」より、EX:King of Anything
FS、ブルーの濃淡のあるシンプルな衣装が素敵です。ブルーはカメレンゴさんご指定ということでしたが、やはり五輪を意識してのことかしら?

FS、随分ジャンプの失敗があって、ベソをかきたい気持ちでいっぱいなのに、懸命にそれを押さえて滑る様子が、天真爛漫なこの人らしくて妙に微笑ましかったです。

毎年のように、「大人っぽい」を極めて狭く解釈した、個性と真逆な楽曲選択をする彼女(というか周り?)。最後のシーズンにケチをつけたくないですが、最後のFSにもこの手の楽曲をもってきたか・・・と少し残念なのが正直なところ。

EXの方が、彼女の明るい可愛らしさが引き出されていて好きだな。佐藤有香さんの振付だそうで、当初はかなこちゃん、音の取り方が難しくて分からなかったとおっしゃっていたとのことですが、可愛くこなしていましたよ~。どうでもいいけど、有香さんの振付には、ちょっと都会的で、気取ったようなフレーバーがある(それをスノビッシュと捉えるかどうかは個々人で差があると思う)。そこには日本の80年代のポップカルチャーの匂いと少し親和性がある何かがあって、ちょうど80年代が10代とぴったり重なる私は、そこはかとなく懐かしさを感じる時があるの。有香さんの振付のそこが、実はかなり好き。(←こういう理由で好きってのは賛同者少ないと思うケド)

●真央ちゃん/FS:ピアコン2番byラフマ、SP:ノクターンbyショパン
FS、衣装もロシアで作られたとのことですが、最初に目が行ったのは、色。
バンクーバーの時は赤&黒で、五輪のラッキーカラーと言われる青でなかった点について、巷間噂もあったようで。そのためかどうかは不明ですが、今回は青系。が、単純な青ではなく、赤などの色が隠し味に使われている所が、タラソワさんらしいところでしょうか。

デザインも素敵ですね。あのお腹にある目のようなところ(パワースポット!?)から、光が放射されているようです。
実は、この夏、とある有名な(ずーっと昔に日本のテレビにも出たことがある)イギリス人男性のスピリチュアリストっていうか、サイキックパワー持ちっていうか、そういう類の人から、私が所属する女性だけの異業種交流会にビデオレターを頂いたんですよ(会員の1人が彼の日本での通訳なの)。その時、メインの話題とは別に、余興で彼の居間にある大きなスクリーンが映されたんです。そのスクリーンの中心部に、真央ちゃんの衣装にあるような目のようなものがあって、そこから光が放射されていたんですよ(動画だったので光が動いていて、とても不思議な映像だった)。彼曰く、この映像は24時間スクリーンに映し出されており、これにより宇宙のパワーをもらえるんだとか。

ほへ~と皆で見てたんですけど(一番耳目を集めたのは居間から見える豪勢な日本庭園だったんだが)、真央ちゃんの衣装を見て、ものすごく鮮やかにあの映像を思い出しました。あの時は宇宙パワーなんてホンマかいなって感じだったけど、今、私は全力で信じたいよ。真央ちゃんに、宇宙のパワーが授かりますように!

序盤から、こちらの期待感をあおるような演出感たっぷり。引き締まった表情で、「鐘」を彷彿とさせる動きから始まる冒頭。直後に、その動きを切り離すようなポーズが入り、別のステージに入ったことを感じさせます。その後の頭をゆっくりと左右に倒してぐるっと回す動きは、真央ちゃんの中にある新しい何かが頭をもたげたようにも感じます。ラストの上体をぐっとそらせて目線を天に向けて、胸をこぶしで突く仕草は、彼女の特異な神秘性と相まって非常に印象的。この演目を象徴するポージングになるでしょうね。拳を作った上でのムーブメントの多用や、仁王様のようなポーズでのツイズル(@ステップ)等を含め、全体を通して「鐘」と同様、真央ちゃんの「デモーニッシュな一面」(by中年ファン様)を表に出すことを狙った演目のように感じました。

まだ完全にこの演目のヴェールが取れた感じはしませんし、ジャンプのミスも散見されました。が、この楽曲を表現する上での確固とした方向性が感じられたところは、安心材料。どうでもいいことですが、中盤にある上に両手を上げてそれぞれ肩、次いで下に交互に下ろしてくる動きは、思わずラジオ体操を思い浮かべちゃうかも。ここは小塚君のFSにあるひげダンスと同様、日本人のみ受け取り方が違ってくるムーブメントですが、それもご愛嬌。

あとは、高難度のジャンプを複数入れ込んでも、ラストのステップを力強く決められるように、スタミナ消費のバランスに気をつけていくことですかね。無尽蔵のスタミナを持つ真央ちゃんという印象を持っていた私は、昨シーズンのワールド&国別対抗での電池切れには、本当に驚きました。と同時に、圧倒的な平等原則つまり年齢って誰でも重ねるってことに改めて思い至りましたよ・・・ああ無常。この点、今シーズンは、時差対策のためにGPS開幕戦に向けて余裕をもって渡米したとのニュースで、ご本人も子供のような体じゃないとおっしゃったということですから、佐藤コーチとともに調整されていくことでしょう。

SPはアイスショー雑感の時(こちら)とほぼ同じ。ご本人は柔らかくという意識で敢えてあまり力を入れないようにしているのかもしれませんが、指先はもう少し緊張感・・・というか気を使って力を入れた上での丁寧さみたいなものがあると、なお良いと思う。まあ、この時期にここまで注文するのは、どうかと思いますが。

●ロシェットさん/FS:ミュージカル「ノートルダムドパリ」より
やはりカナダの代表といえば、私の中ではロシェットさんだなあ。五輪シーズンだし、競技に戻って来て欲しい。

衣装と爪が揃ってボルドーで、とても素敵でした。うん、秋はやっぱボルドーだな、と思わせる説得力ある大人の美しさ。羽生君の演技が印象深い楽曲ですが、ロシェットさんは品の良いエスメラルダで、カジモドが夢想する彼女ですかね(まあ、そこまでキャラ立ちさせてないと思いますが)。

●ソトニコワちゃん/FS:序奏とロンドカプリチオーソbyサン=サーンス、EX:オブリビオン
いずれも「超」がつくほど個性的な衣装&振付。素敵過ぎる。下手すると突飛なだけで終わってしまいますが、そうならないのは、ソトニコワちゃんの振付の咀嚼にセンスがあることと、音楽性が高いからだと思います。

今回のFS、ミスが複数ある中、丁寧に音楽を聴いていることが良く分かりました。(振付がテンコ盛りであったことも手伝って?)余裕がなかった昨シーズンよりも、ずっと音取りが細やかで丁寧になった気がします。音楽のフィッティング具合は良かったですが、全体的には半分くらいの仕上がり具合でしょうか。この調子で最後まで仕上げて行って欲しいです。身長の伸びは止まったかしらね。止まったのなら、あと少し身体を絞れば、バランスのとり方一つとっても好転すると思うのですが。

●ワグナーさん/FS:ロミオとジュリエットbyプロコフィエフ、EX:Sweet Dreams
彼女のFSは、今回の見どころの1つでした。
最初、ワグナーさんがジュリエットですと?と思ったのですが・・・これが凄かった。主に音楽から導き出されるストーリーですが、彼女のジュリエットはねえ、すごく特殊なジュリエットなの。

冒頭はロミオとジュリエットの別れの音楽。直後に劇的で派手な音楽が入りますが、これはモンタギュー家とキャピレット家の争いに堪忍袋の緒が切れたヴェローナ大公が、「今度、街の中で人殺したらソッコー死刑だから!むきーっ!!」と宣言するものです。(ただ、終幕つまりロミオとジュリエットが亡くなる3幕の序曲としても使われるので、バレエ見にとっては、1幕の始まりに「前提なのでよろしく」なんて感じで存在する大公の宣言というよりも、2人の死の場面に続く印象が強い)

その後、ティボルト(ジュリエットのいとこに当たる)に親友マキューシオを殺されたロミオの血が逆流していき、ぶち切れる場面の音楽が長めに入り、モンタギュー家とキャピレット家の対立を表す楽曲が続きます(ここは「のだめ」のミルヒーのテーマをアレンジしたものなので分かり易いと思う)。

後半は、墓場(本当はキャピレット家の霊廟だけど、めんどくさいので「墓場」で統一)でロミオが仮死状態のジュリエットをかついで踊るPDDの音楽が入ります。ラストはバレエで使用されているものとは異なり、死が大げさにクローズアップされる音楽、つまりティボルトの死の場面のものがアレンジされています(バレエでは、死後の両家の和解あるいはロミオと天で結ばれることを示唆するように、少し明るい希望の見える音楽で終わる)。

以前から指摘しているところだけど、いつも身体のどこかが力んでいるアシュリーさんは、表現の幅がどうしても狭い。その狭い中で得意とする楽曲、つまりは彼女の「力み」と特に親和性の高い緊張感のある音楽だけを使用するなんて。しかも、ジュリエットを、争いと死の音楽だけで造形するなんて。やりおったな!(←ダウンタウンの浜ちゃん風で)って感じです。今回は音楽ばかり聴いてて、ワグナーさんの演技自体は二の次になっちゃったんだけど、それはGPSでってことで。

なお、バレエ「ロミオとジュリエット」でご確認したい方にお勧めの動画は、マクミラン版のこちら
ジュリエットは「踊る女優」と呼ばれたイタリア人ダンサー、アレッサンドラ・フェリ。ロミオは、私が時々フェルナンデス君を「スケート界のアンヘル・コレーラ」と呼んでいる、その大元のスペイン人ダンサー、アンヘル・コレーラ。2000年スカラ座での公演です。

見どころはストーリー順に以下のとおり。(3)と(4)で別れの音楽が使われています。
(1)2人が完全に恋に落ちちゃう場面(マドリガルと呼ばれる音楽が奏でられる)は、40分45秒あたり~44分あたりまで。
(2)有名なバルコニーの場面は、50分30秒あたり~58分55秒(1幕の終了)まで。
(3)ロミオとの別れの場面(戯曲ではひばりとナイチンゲールのやり取りがあるところですわね)は、1時間33分30秒(3幕始まり)~1時間39分10秒まで。
(4)墓場でロミオが仮死状態のジュリエットをかついで踊るPDD、ロミオの死、そしてジュリエットの死に至る場面は、2時間03分30秒~です。

あ、私の小さなお気に入りは、ロミオがジュリエットの手紙を乳母からもらって読む場面(1時間13分18秒~1時間14分03秒)。ここの音楽は、ジュリエットのライトモチーフの1つで、明るかったりはしゃいでいたり、無邪気なジュリエットを表す音楽です。手紙がジュリエットからで、内容もとっても嬉しいもの、ということがこれだけで分かる仕組みになっています。
by Koharu-annex | 2013-10-17 01:41 | 2013-2014 フィギュアスケート