もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

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●1位/ハビエル・フェルナンデス(21歳)/スペイン
SPは、映画「マスク・オブ・ゾロ」より。
米国映画とはいえラテン色の濃い映画。スペイン系の音楽が多用されているので、この演目もスペイン系に分類できるでしょうか。

フェルナンデスさんって、もともと器用で何でもそつなくこなしますよねえ。今回のパフォーマンスも「そつない」という印象です。ですが、いつも、それで終わってしまうようなところがある。熱いものを単純に外に出さない秘めたる深謀遠慮があると善解することも可能だとは思いますが、そういう風に解釈すべきではないと思う。だって、どの演目でも、ずっとそうなんだもの。

彼はいつも様々なキャラを演じるタイプの楽曲でやらされているけれども、そして彼はそれらにそつなく対処しているのだけれども、しかしながら。実際の彼は、思いのほか表現の幅が小さいのではないかという気がしてきました。逆にいえば、「これぞフェルナンデス!」というべき彼にぴったりの演目というものは、かなり厳選しないと出てこないのではないかと。

今回の楽曲は、出身国となじみのある楽曲ですが、この映画のキャラやこの音楽を表現するためには、もっと「熱いもの」を感じさせる方が良いので、それが得意でない彼との間には思いのほか距離があると思います。

FSは、チャップリン・メドレー。
いや、だからチャップリンは・・・。ジー君のように「モノマネ」に徹する覚悟をもって、茶目っ気さと可愛らしさで押すならまだしも、普通にやろうとすると難しい演目だと思うが・・・(チャップリンについては信ちゃんに関するこちらの過去記事に詳しく書いているので、お時間があればご覧ください)。

ただね、彼にはちょっと冷めたような影のあるところがあって、突き放したように冷静にこちら側(=世間)を見ているようなところがある。そこは信ちゃんよりかはチャップリンに近いなあ、とも思うのです。

しかし、あの・・・勝手に推測しているだけなんですけど、フェルナンデスさん自身としては、こういうマイム等の小技を効かせる演技って、あまりお好きじゃないのではないでしょうか・・・?
もちろん、フェルナンデスさんって、一昨年あたりの演目(モロゾフさんのだと思う)から明らかなとおり、マイムやジェスチャーなどの小技を器用にこなすことは私も承知はしているのですが、どうも楽しそうに(=積極的に自ら好んで)やってない感じ。語弊を恐れずに言ってしまえば、振付がそうなっているのでここれはこうやらなくちゃな(→で、器用なのである程度以上にはできてしまう)、という空気が流れてるような気がしてならんのです。・・・気のせいですか?

●2位/パトリック・チャン(21歳)/カナダ
SPはエレジー(ラフマニノフ)、FSはラ・ボエーム。
SPは昨季のEXで、振付はジェフリー・バトルさんとのこと。滑りなれた曲とはいえ、競技用のプロになると勝手が違うのでしょうね。加えて、シーズン初めとか、コーチが変わったとか、もろもろの事情があるのかもしれませんが、とにかくジャンプの調子が悪く、乗り切れないまま終わった印象です。

FSについても同様。特にFSはオリジナルがオペラで明確なストーリー性がある音楽で、実際、チャンさんもそのストーリーを演じる意向であったでしょうに、そこまでフォローできなかった感じです。

●3位/織田信成(25歳)/日本
SPは、いにしえの月に抱かれた新月。
「古の月に抱かれた新月」って美しい言葉だなあと思ったのですが、英語の「The New Moon in the Old Arm's Moon 」って「地球照」を意味するのですね。今回お勉強しました。ありがとう、信ちゃん。知識が1つ増えたよ(笑)!とても美しい言いまわしで、あの地球照の神秘的な雰囲気を増す気がします。

なぜこの衣装・・・という疑問をやっぱり抱いてしまうワタクシですが、そこはさておき。
私は初めて聴く楽曲だったのですが、とても素敵ですね。何が素敵って、派手派手しくなく抑制的でありながら、美しいものの核心を的確に捉えているようなところが。
前半の旋律の中心は、フルートとチェロですかね?これらの楽器の響きって、信ちゃんの「目立つわけじゃないけど愛すべき庶民」というタイプにとてもよく似合う。後半の金管がパッパカ吹き鳴らすことをせず、非常に気を使って穏やかな音を出しているところも良い(吹き鳴らすタイプの楽曲って、時として演技と大きく乖離しますから)。

音楽を表現するタイプの演目って、曲想や曲調もさることながら、使われている楽器の音の響きが、表現者のゆるぎない個性の部分に合致すると、作品としての完成度がとても高くなると思います。この楽曲は、信ちゃんの演目としては久しぶりに完成度が高くなりそうで、ワタクシ、とっても期待大です。

そして、振付がまた良いですね。こちらも抑制的で。ローリー・ニコルさんということで、皆様がよく「さらさらプロ」とおっしゃる方だと認識しておりますが、今回その「さらさら」の匙加減が、振付・音楽・信ちゃんの個性の三者を結びつけるのに絶妙なバランスであったと思います。

今回は復帰後のGPS初戦ということで、堅実に安全策のプログラムをこなす作戦で、信ちゃんの意識もそこに集中しがちだったと思いますが、滑り込むと音楽とのますますのマッチングが見られるのではないでしょうか。

ところで、10月27日付日経新聞夕刊の、SP結果を伝える記事の信ちゃんの写真。
変な顔過ぎて悲しくなりました。信ちゃんに限らず、マスコミ報道において、ジャンプ途中のひどいお顔の写真がチョイスされることがありますが、あれって、何を基準に選んでいるのでしょう。時に悪意(そこまでいかなくても、からかいや、編集部の内輪受けの遊び気分)が感じられることがあります。これって、報道の姿勢としてどうかと思います。

FSは、魔法使いの弟子。
多くの人が「キャラ的にぴったり」と納得して笑ってしまうような楽曲チョイス。フィンランドの大会後に、「ぴったり過ぎてそれでいいのかと思ってしまう」という趣旨の楽しいコメントを頂いたのですが、そこはひとまず置いておいて(笑)。

まず指摘しておきたい疑問は、なんで「魔法使いの弟子」(byデュカス)だけでなく「ダフニスとクロエ」(byラヴェル)を使うのか、というところです。デュカスとラヴェルは、同時代のフランスの作曲家ですが、そういう共通点で選んだのかしらん?でもさ、話がまるで違う楽曲をもってくるってのは、ストーリー性のある演劇的な演目でキャラ立ちさせるためには、良くない選択だと思うのです。敢えて、もってくる必要はなく、交響詩「魔法使いの弟子」の中で完結させた方が良かったのではないでしょうかね~?

そのせいってことはないのでしょうが、信ちゃんの今回の演技は、まだ「弟子を演じる」というところまでは行ってないですねえ。まだまだ振付を追っかけてる段階なのかな。
ローリー・ニコルさんが「弟子になりきって」と言っているということを日経か何かの報道で読んだけれども、そして実際、弟子的なものを表しているんだろうなあ~という振付はそここに見受けられたものの、物語を紡ぐところまでは行けていないので、今後に期待、です。

●4位/フローラン・アモディオ(22歳)/フランス
SPはファルーカス、FSはテレビ放送されずに残念。
SPはスペインのギター曲で、本当に今年はスペイン系が多いな、と。

ええっと、アモディオ君、一生懸命フラメンコ風の振付をこなそうとしているのですが、何となく中南米系のリズムに無理矢理「接ぎ木」しているように見えちゃうなあ。ムズムズしてる感じがするんだけど(笑)。
そういう意味でも、もう少し身体に音楽を入れる必要があると思いますが、まあ、シーズン初めですし、というところでしょうか。

●6位/デニス・テン/カザフスタン
SPは放送なし、FSは映画「アーティスト」より。
うーん、乗り切れないまま終わってしまった感じですかね。

●8位/無良崇人(21歳)/日本
SPはマラゲーニャ、FSは、Shogun。
SPは闘牛士を意識した衣装、FSは陣羽織をイメージした衣装ですかね。どちらも比較的ボリュームのあるタイプで、ジャンプが不調の今回はちょっと重そうに見えました。

無良さんって、もっとスピードが出てて思いきりが良いイメージなのですが、今回は元気がなかったですね。SPもFSも普段なら彼に合いそうな、男らしい派手さのある音楽ですが、今回は動きとかい離してしまいました・・・。
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by koharu-annex | 2012-10-29 20:47 | 2012-2013 フィギュアスケート
こちらもSPとFSをまとめるので、最終順位の順番に感想を。
関係ないけど、私、アメリカ大会のフラワーガール達の衣装、結構、好きだな。

●1位/小塚崇彦(23歳)/日本
SPは、映画「栄光への脱出」より。
イスラエル建国をテーマにした映画のサントラで、壮大な音楽。

いや~、私が見てきた小塚君の演技の中で、最も良かった!
過去、私が見た小塚君の中で、最も音楽に乗って伸びやかに滑っていたのは「ナウシカ」だったのですが、これは完全にナウシカを超えたと思います。

滑空するようなスピード感あふれる滑りでした。思い切りよく、躊躇なく、飛んでいくように見えました。本当に空を飛んでいるかのようでした。念のため書いとくけど、下半身だけじゃなく、上半身もです。飛んでます。それがまた、この音楽と本当に良く合っていた。小塚君の良いところが、最も良い形で出てるんじゃないでしょうか。

ガッツポーズもむべなるかな。何度も繰り返していたことにも納得です。

FSは、序奏とロンド・カプリチオーソ。
もう~、テレ朝も「序奏と」を入れないんだから!これ入れないと、サン=サーンスじゃなくて、メンデルスゾーンになっちゃうんだってばー。

滑空度が低くなって、堅実度が高くなっていましたが、ともあれFSは第一位。
優勝おめでとう!

●2位/羽生結弦(17歳)/日本
SPは、パリの散歩道。
うわ、なんて綺麗な4回転!(私でも綺麗さが分かる)

羽生君ってドラマチックな音楽も似合いますが、過去のEXからも明らかなように、ロックも非常によく似合いますよね。(ゲイリー・ムーアって、まっすぐストレートに「ロック」って言っちゃっていいのかどうか私には分かりかねますが)
なんかねえ、彼ってほんと、氷上に出ると少女マンガの主人公(=正確には主人公女子の相手方)ですよね。なので、少女マンガで「もてる男子」のジャンルは、ロックミュージシャンだろうが王子様だろうが、ちょい不良だろうが、天才児だろうが、全て似合うと思う(笑)。そういう意味では、非常に得な人とも言えますわね。

少々男くさい振付をよくこなしていました。
私の好み的には、もう少しタメてもいんじゃないか、という個所が数か所ありましたが、それをしちゃうと逆にイヤミになっちゃうかもしれません。

FSは、ノートルダム・ド・パリ。
冒頭から、いつもより動きがぎこちなく小さい。正直、委縮しているように感じました。ただ、多くの皆様がお感じになったとおり、この経験は、結果も含めて、羽生君にとっていろんな意味で有益だったと思います。

ちょっと気になるのは、怪我ですね。。。また、慣れない土地での秋冬を迎えるにあたって、持病のぜんそくも気になります。どうぞお身体だけはお大事に。コーチ陣にも、その点には充分に気を付けて頂きたいです。よろしくお願いします。

●3位/町田樹(22歳)/日本
SPは、F.U.Y.A。
わ、今年も衣装が派手だあ(笑)。でも、これで気持ちが上がっているように見えるので、迷わずこれで行って欲しい。

もともと良く動ける人だったんですが、それが「踊る」ってところまでは、なかなか行きつかない人でした。しかし、今回は踊りまくってましたねえ!

日本調が含まれた不思議な音楽に乗って、とても歯切れの良い動きを見せていました。お囃子のような音楽によく似合う、単純なリズムでの単純な動きを、キレのある力強さで次々と繰り出していくのを見ることは、快感でした。地方土着のお神楽のような、土俗的ながらもある種の神秘さをも併せ持つ、不思議な魅力のある作品に仕上がっていました。

昨季のFSドンキに引き続き、ランビエールさんが振付けを担当されたそうですね。
あのドンキは、ランビエールさんの影がいつも見えていたんですよね。しかし、今回のSPはそれが薄くなってました。というよりも、なんというんでしょう、2季目に入って、ランビエールさんと町田さんのコンビが化学反応を始めたという感じですかね。

この2人によってしか反応しない何かが、外に出てきた感じです。町田さんはよく動けても本来的には踊り心が豊富にあるわけではないと思うのですが、そうだからこそ有するともいえる「泥臭さ」みたいなものを、逆に魅力的に見せる方向で振付に昇華させることに成功したとでも言いましょうか。いずれにしても、このコンビでしか出せない世界を出すことに成功したと思います。

録画を拝見する前に「ラストのどや顔」という趣旨のコメントを頂いて、「?」と思っていたのですが、ほんと「どや顔」でしたね!

FSは、バレエ音楽「火の鳥」。
この「火の鳥」は素敵でしたねえ。私が見た中では、男性の演じた「火の鳥」の中では、間違いなく最高峰です。

ワグナーさんのコーチであるフィリップ・ミルズさんの振付だそうですが、元はバレエダンサーなのですね(こちらの町田さんの記事参照)。
それで納得。
この火の鳥、とってもバレエっぽいもの(昨季のワグナーさんのブラックスワンよりもずっとバレエっぽい)。バレエ「火の鳥」のどの部分の振付を具体的にもってきたという話ではなく、バレエ「火の鳥」の印象や世界観に非常に近い作品に仕上がっているというレベルの話ですが。また、楽曲のチョイスが秀逸。様々な場面の異なる趣の音楽を、破綻のない物語進行となる順番でつなぎ合わせている。

よく動けるという町田さんの特性を大いに生かした、素晴らしい振付け。その振付師の期待(以上)にばっちり応える、素晴らしい町田さんのこなし具合。稼働域めいいっぱい、いえ、時としてそれ以上にダイナミックに動きながら、音楽にぴたりと合わせていく姿に、町田さんの気持ちの入り具合とこの作品の完成に向けた滑り込みの凄さを感じます。

ランビエールさんとの化学反応とはまた違った、素晴らしさと凄みがありました。よくこんなマーヴェラスな演目をSP・FSの両方に揃えましたね。ビバ!であります。
いや~、良いもの見せてもらいました。

●4位/コンスタンティン・メンショフ(29歳)/ロシア
SPは、映画「ピナ・バウシュ踊り続けるいのち」より。
おお、この映画できましたか!3Dの異色の最高傑作とも言われる作品。数年前に亡くなった天才ダンサー&振付家のピナ・バウシュを題材にしたものですが、さすが過去に素敵な「走り屋物語」を披露してくれたメンショフさん(こちら参照)、お目が高い。それだけに、映像が途中で途切れちゃったのは残念。

単調なんだけど、何故だか心の奥底にじわじわと寄せてくる音楽。裸の魂の一側面を、ちらと見せつけるような内省的な演目だと思いますが、途中で失速しちゃいましたかね・・・。

FSは、アレグロほか。
この音楽の作曲家のルネ・オーブリーは、バレエ(コンテンポラリー)音楽も手掛けています(私はそれらのバレエ作品をあまり見たことはないのですが)。メンショフさんは、これ系の志向があるのかもしれません。

もともと踊り心は充分にある人なんですが、ジャンプのミスやなんやかんやで、全体の仕上がりが安定しない印象です。かなり素敵な作品だと思うので、いつか完成形を見てみたいなあ。

●5位/ジェレミー・アボット(27歳)/アメリカ
SPは、スパイ。
セクシーさの出るオールバックになでつけた髪型と、ガンホルスターやシューティング・グローブといった小道具を付属させた衣装。それだけで「お芝居」系ばっちりですが、そここに大技小技を含めた「スパイ」(殺しもするぜ的な)を連想させる振付が施してあり、なぞ解きをするような楽しさのある演目でした。
アボット君は、とにかくスタイルが抜群なので、こういうことやらせると俳優さんのようで、ほんとにカッコイイ。

FSは、「レ・ミゼラブル」より『彼を帰して』
SPと異なるナチュラルな髪型だけど、こっちも色気があるなあ(笑)。
ジャン・バルジャンのソロで、「まだ若いマリウスを天に召さないで下さい。どうせなら年取ってる私をどうぞ」という歌(かなり意訳してしまってスミマセン)。ちなみに私が最初に見た舞台のマリウスは野口五郎で、ジャン・バルジャンは滝田栄。1989年の話。

損得勘定や利己的な感情が全く入らない、他者への愛情に基づく真摯な祈りにあふれた楽曲。アボット君の妙に健気な雰囲気に合わさると、涙が出そうなほど美しいです。もちろん、彼はまだマリウスの年齢だけど(笑)。

●6位/ミハル・ブレジナ(22歳)/チェコ
SPは、山の魔王の宮殿にて。
グリーグの傑作「ペールギュント」からの選曲。全く関係ないけど、この曲、小学生の時に兄が聴いているのを聴いて、しばらくお気に入りだった。私が気に入っているのを知った兄が、アッシャー家の崩壊とか、コルサコフの熊蜂の飛行とか、およそ小学生には似つかわしくない曲をたくさん聴かせてくれましたわ(笑)。

始まった時、あれテンポ遅い?と思ったのですが、この楽曲、終盤にテンポが急速に上がるので、体力不足が課題のブレジナ君のために遅めにしたのかな~?と思いつつ拝見。遅いがゆえに重さがあるのですが、ブレジナ君はこの「重さ」に呼応するような重みのあるムーブメントで、素晴らしい。
が、後半に従い・・・やはり、音楽のテンポが上がった、それもマックスまで!・・・そうすると、やっぱりブレジナ君、ものすごーく疲れちゃいましたね。。。

FSは、映画「アンタッチャブル」より。
とても彼の個性に似合っている演目なので、今季も見ることができて嬉しい。ジャパンオープンの時は体力がもちませんでしたが、今回は大丈夫でした。ジャンプのミスが複数あり、点数は伸びませんでしたが、演目自体はよくまとめていたのではないでしょうか。

●7位/アーミン・マーバヌーザデー(21歳)/アメリカ
SPは、カシミールbyレッド・ツェッペリン。
昨年からの持ち越しですね。身体はそんなに大きく無い人ですが、青年っぽくなってきました。
プログレ特有の気難しそうな楽曲ですが、彼の知的+アーティスティックな雰囲気と、妙に合ってる気がします。ただ、もともとの振付がイマイチなこともあって、曲とパフォーマンスを調和させるのは難しい楽曲のように感じます。

FSは、ドクター・フー。
音楽がかからないアクシデントがあり・・・「ワンサゲン」とか言われてもなあ、気の毒に。
私はこのドラマは見たことがないのですが、BBCの異星人が出てくるSFものだそうで。SFは割と好きなので見てみたい気もしますが、長過ぎてちょっとメンドクサイなあ。

昨年から同じこと書いてますが、アーミン君の場合、振付にそもそも問題があるんじゃなかろうか。非常につまんない振付です。「踊る」ということにほぼ興味がない人が作っているんじゃないかと勘繰りたくなるほどです。アーミン君って、本来もっと踊りのポテンシャルを持った人だと思うのですが、現時点では宝の持ち腐れになってて、非常にもったいないです。

●8位/トマシュ・ベルネル(26歳)/チェコ
SPは、映画「ドラキュラ」より。
雰囲気たっぷりの音楽に乗せて、良い感じで怪しく始まったのですが、ジャンプの調子が悪かったせいか気分が落ちていくのが分かってしまいました・・・。

FSは、スイングがなければ意味がない ほか。
一部昨季の楽曲が含まれていますね(シング・シング・シング、バラ色の人生)。この手のちょっと懐かしいけど洒落っ気のある楽曲を演技するのは非常に上手な方ですが、ジャンプのミスが乗りにも影響してしまいましたね。。。コレオ・シークエンスのところ、本来はもっとノリノリで楽しい仕上がりになるのだろうなあ~と思いながら見ていました。

●9位/ダグラス・ラザノ(23歳)/アメリカ
SPは、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」。
超有名曲で鑑賞者サイドがメロディを先取りできる中、ロマンチックに歌う様に伸びる旋律において、スケートが思ったより伸びないと、ありゃりゃ・・・という印象になっちゃいますねえ。リスクがあるなあ、この楽曲って。

FSは、クイーン・シンフォニー(ロックバンド「クイーン」の曲をモチーフにしたシンフォニー)。
思いのほか壮大さが前面に出る派手な音楽でした。こういう壮大さのある音楽に負けないような演技をするって、かなり大変なことですね。ラストはぴったりと合って気持ちのよい終わり方でしたが、全体的にはラザノさんには少々荷が重い気がしました。

●10位/アレクサンデル・マヨロフ(21歳)/スウェーデン
SPはレイズ・ブルース、FSはライフ・ビギンズ・アゲイン。
親御さんの期待が大き過ぎるような気がします。毎年、難しい楽曲選び過ぎ。そして、振付が本人の実力比で難し過ぎではないでしょうか。

課題を乗り越えさせるために少し難しめの楽曲や振付を課すのは当然だと思いますが、手が届く範囲を遥かに超えるものばかりがチョイスされているような気がします。それって、ご本人を鍛える面もあるにはあるでしょうが、必然的にかなり手前での息切れを招いてしまい、本来であればご本人が到達できる地点にすら到達できない結果を招いているような気がします。
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by koharu-annex | 2012-10-28 00:26 | 2012-2013 フィギュアスケート
時系列的には男子から書くのが筋なんですけど、とりあえず女子から。SPとFSをまとめて書くので、最終順位の順番に従います。

●1位/アシュリー・ワグナー/US
SPはレッド・バイオリン。
難しい楽曲を、文字通り「力」(だけ)でねじ伏せた感じですね。技術的な要素の出来も良く、時折見られるアクセントの振付が音とぴったり合ってるし、そういう意味ではシーズン初めなのに完成度が高かったのだと思います。

しかし、この楽曲を「力」の一本調子で終わってしまうのは、あまりにもったいないのではないだろうかと少々疑問を持ってしまいました。。。あと、ラストが、FSと同様に般若のようなお顔になるのは、どうしてなんだろう・・・?

FSはサムソンとデリラ。
もともとはソチ五輪用にと思っていた曲だそうですね。調子が良かったら来季に持ち越しをするのかしら。
妖婦デリラが復讐のためにサムソンに近づき、彼の怪力の源が髪の毛にあるという秘密を聞き出し、髪の毛を刈り上げて禿げにすることによって彼からパワーを奪い、復讐を果たすという旧約聖書にある物語。髪の毛って・・・ほか突っ込みどころ満載とはいえ、サン=サーンスの作曲したこの楽曲(オペラ)はとてもメジャー。学校の音楽会なんかでもよく演奏されますねえ。全体的に派手だし、あの「じゃかじゃかじゃんじゃん♪」ってのがキャッチーでいいのかな。

さて、ワグナーさん。
ジャパンオープンで拝見した演目だけど、今回も迫力満点。この楽曲の場合、SPと異なり、彼女の持つ「力み」がむしろ長所として引き出されていると思います。

ただね、それをいっちゃあおしめえよ、なんだけども。
アシュリーさんって良くも悪くも、典型的な明るくコンフィデントなアメリカ娘、という印象があるでしょう?(しかも演技の際に、自分以外の他者になりきれるほどの地力は残念ながら持ち合わせていない。)
このアメリカ娘タイプってのは、バレエその他のダンスの世界でもそうなんだけど、実は表現者という意味においては深みに欠けるきらいがあります。いろいろな苦労や秘めたる思いがあるでしょうに、いつも明るく前向きであることを感じさせるお人柄は、文句なく素晴らしいだけに、これを指摘するのはつらいところですが。

●2位/クリスティーナ・ガオ/US
SPはClose Without Touching、FSは昨年からの持ち越しのリベルタンゴ。
ガオさん、昨季はシニアに移行したシーズンだったからか、自分に自信を失っているように見られる時もありました。今年は見違えるような成長ぶりです。オフの間も練習を頑張ってきたのでしょうね。練習の成果を実感していることに裏付けられているのであろう、余裕と自信が感じられます。

もったいないのは、髪型。
スタイルがとても良い方なので、せっかくだから髪型をもっと素敵に結いあげて頂きたいなと。

表現面から言えば、まだお若いからでしょうか、練習を真面目にしてきたことは大いに感じ取れるものの、振付を順番に「確実にこなしていく」という意識しかまだ無いように感じられます。音楽を理解し、曲調に心を添わせる、そこに別の何かを表現していく、そういう「表現」のステップにはまだ踏み出していない感じです。

あと、FSで残念なのは、振付がこの音楽と親和性が良くないこと。技術的な要素はほぼ完ぺきだっただけに、振付と音楽の調和があまり(私から言わせると『殆ど』)見受けられないのはかなり残念。ただ、中盤のスローパートのところは、振付の問題のほかガオさん自身のムーブメントに伸びがないことも調和が見られない一因かも。

●3位/アデリナ・ソトニコワ/ロシア
SPはスペイン奇想曲。
シニアデビューした昨季は期待が大きかったのに、ジュニア時代よりも成長したお身体にご本人がついていけなかったようで、少々つらそうに見えました。今年はいくぶん笑顔も増えたので、少しずつ復調していくのではないかと期待しています。

タラソワさんらしい、個性的かつ独創的なフォルムのスピンやステップ、非常に印象的です。ただ、ステップ(リズミカルでヴォーカル入りの音楽部分)について、アクセントやメリハリをつけようとしているのは分かるのですが、まだ少し弱い。次回に期待。

FSは映画「バーレスク」より。
昨年あっこ姉さんのEXで印象深い楽曲。若い方には御しがたい楽曲だと思います。
技術的な要素はいま一つの出来だし、表現面からも完成にはまだまだ感満載です。が、「表現する」意識があるかどうかという観点からは、評価して差し上げたい。

●4位/ヴァレンティーナ・マルケイ/イタリア
SPはEsperanza。
フラメンコの衣装を模した衣装の中では、トップクラスの素敵さではないでしょうか。袖と裾のフリル部分が非常に凝ってます。袖の長さも、この年齢の女性らしさを引き立てていますね。背中の空きのシェイプは、同じスクエアでもあとほんの少し洗練された方が良い気がしますが。メイクもヘアスタイルも、昨季よりずっと洗練されました。

本来、、動きが少々粗雑で、ポジショニングやムーブメントも「『素敵』というところにたどり着くまでは、あと数歩足りない。」という印象だったのですが、「数歩」が「一歩」になってました。これも進化だと思います。

FSは映画「アーティスト」より。
・・・衣装はもっとこの映画にふさわしいものがあるような・・・。SPが良かっただけにちょっとショック。
大げさな身振り手振りにこの映画らしさが出ていました。が、割合的にいうとそのうち半分くらい(特に前半に多いと思う)が、滑りやムーブメントと一体化したものではなく、どうしても小手先感が漂うというか取ってつけたよう印象になってしまうのは、ちと残念。

●5位/今井遥/日本
SPは映画「シャレード」より。
ヘプバーンのジバンシィの衣装が印象的な映画。今井さんの衣装もヘアスタイルもとても素敵です。裾丈を長くすれば、そのままパーティーに行けそうです。

日本人スケーターの中でも、群を抜いてたおやかな所作と印象を持ち、日本人的な奥ゆかしいほのかな色気のある人です。毎年書いてる気がしないでもないけど、特に腕から指先の所作やムーブメントが非常に美しい人なので、肩から指先までオープンになってる衣装は、この長所を存分に見せることができると思います。

解説の方によると映画の内容そのものよりも明るめに仕上げたとのことですが、確かに演技自体にサスペンスな感じはしませんでした。ただ、うっすら影とウェットな感じもある方なので、映画の内容通り息をひそめ続けているような不安な心理を表すサスペンス調の楽曲も良く似合うと思いました。

FSはディベルティメント変ロ長調K137(モーツァルト)。
ピンク等の暖色系が思い浮かぶ曲調ですが、青い衣装。これ系の青ってアメリカは好きですよねえ。シルバーのキラキラといい、いかにも米国調の衣装という印象です。彼女はゆかさんご夫妻のもと米国でトレーニングをされているということで、やはり衣装もアメリカなのでしょうか。

後半は疲れていっぱいいっぱいになったのか、いつもの優美な腕~手首の動きが少々おざなりになっていました(SPの時は終始一貫して、腕を動かす度に優美さがこぼれ落ちています)。逆にいえば、あの優美な動きは(天然の部分ももちろんあるでしょうが、それに加えて)本人が気を使ってかなり努力していることが分かります。

●6位/マエ=ベレニス・メイテ/フランス
SPはフィーリンググッド。
50~60年代のミュージカル楽曲の1つですが、この時代のミュージカル楽曲ってジャズなどにアレンジ&カバーされた楽曲が多いですね。フィーリンググッドも、私はジャズのイメージが非常に強いかな。
レイテさんもグルーヴ感を出すよう努力していたと思うのですが、単純に滑り込みの問題もあるかもしれませんが、少し足りないような。

FSは映画「ルーヴルの怪人」より。
おおぅ、ソフィー・マルソーの映画じゃないですか。エジプトのミイラが出てくる話。
メイテさんの衣装からすると、ソフィーじゃなくてエジプトに焦点を当てているのですね。
エキゾチックで面白い振付がたくさん入っていて、とっても楽しい。まだまだおざなりにこなしている部分が散見されましたが、これ、ちゃんと完成させたらすごく個性的でユニークな演目になるのではないでしょうか。

●7位/アリーナ・レオノワ/ロシア
SPは映画「スラムドッグ$ミリオネア」より、FSはポエタ。
いま一つ乗り切れないまま。身体のキレやコントロール力も足りない印象です。

それにしても、フィギュアスケートでは毎年一定割合がスペイン(風)の音楽を使うけれども、今年はいつにも増して多い気が。やはりプレ五輪シーズンということで、乗りがよく印象的な音楽を使いたいと思うと、勢いスペイン系をチョイスしてしまうのでしょうか。


●8位/ヴィクトリア・ヘルゲソン/スウェーデン
SPはポインシアナ、FSは映画「白い恐怖」より。
FSは、バーグマンが主演したヒッチコックのサスペンス映画の音楽ですが、確かヘルゲソンさんは昨季も映画「サンセット大通り」の難しい主演女優を演じていましたね。往年の名女優系が気分なのかもしれません。
ただ、今回は、SPもFSも少々技術的要素が不安定で、役柄を表すところまで余裕がありませんでしたね。

●9位/レイチェル・フラット/US
SPはコントラバヒシモ(ピアソラ)、FSは昨季から持ち越しの火の鳥。
SPの衣装とヘアスタイルはタンゴを意識したものでしたか。素敵です。FSの衣装も新調されていますが、こちらも素敵。

アクセントの付け方や強弱の取り方には相変わらずセンスを感じますが、いかんせん全体的に動きが重い。
キスクラで常にスタンフォードのキャップをかぶることからも強く感じるのですが、進学後にスケートとの付き合い方を変えたのでしょうね。少し寂しい気もしますが、少なくとも今は、これが彼女が選択した人生。いつか完全にあちら側を選択し、スケートから離れることになったとしても、遠くからひっそり応援したいと思います。

●10位/サラ・ヘッケン/ドイツ
SPはアストゥリアス。
スペインの楽曲ですが振付にオリエンタル調のものがあって、ちょっと意図が掴めませんでした。

FSはAwakening、Breath and Life。
SPと同様、非常にシンプルな衣装で、遠目に見ると少々地味に転び過ぎてる気がしないでもありません。
起伏のない曲調なので、いろんな意味でごまかしが効かないキツイ音楽かもしれません。
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by koharu-annex | 2012-10-26 23:07 | 2012-2013 フィギュアスケート

成美ちゃん

成美ちゃん・トランさんのペアが、GPSを欠場するとのニュースが(こちら)。

NHK杯の現地観戦を画策しているワタクシめ、拝見するのを楽しみにしていたのですが、こればかりは仕方がありませんね。

手術の成功を心より祈念しております。
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by koharu-annex | 2012-10-26 13:32 | 2012-2013 フィギュアスケート
スケアメの録画が見たくてたまらないけど、やはり順番通りカーニバルオンアイスから。

●あっこ姉さん/キルビル
複数のフィギュアスケーターが滑っている、聴きなじみのある音楽を使用されていますが、この人らしいスパイスが効いた演技でした。特に、時折見せる低い姿勢でのムーブメントがかっこ良いです。

今季のSPだそうですが、冒頭の3-3とか試合を想定した滑りにはしていなかったようなので、GPSで見ることを楽しみにしています。

●リード姉弟/Seven Brides for Seven Brothers
うわ~、序盤に衣装の裾フリルがブレードに引っ掛かって、フリルが破れてぶら下がってしまうアクシデント。危ないし、見栄えも悪くなるし、気の毒なことこの上なし。

こういうアクシデントって、舞台でも2回ほど見たことあるんですが、これスタート直後に起こると後が長くてつらいですね。そういえば、アルゼンチンタンゴの大会のテレビ放送でも、衣装のレース(フリルではない)にあのタンゴ特有の細いヒールが引っ掛かり、いつもの高速足さばきができなくなったのを見たこともあったなあ。

衣装によって気を付けるべきポイントがあるのだとは思いますが、やはり「運」もあると思われます。あまり気にせず次回頑張ってほしいです。

●キャンデロロさん/サタデーナイトフィーバー
お尻にタッチさせられた女性は、今頃お元気でお過ごしでしょうか(笑)。

まるまるしてきたお体も愛嬌がありますね。往年のファンの中には、この体つきやちょっと薄くなってきた頭頂部に、少し寂しさを覚える方もいらっしゃるのかもしれないけど。

若い10代くらいのファンの方々は、「なんでこんなおっさんに盛り上がるの?」って思うんだろうなあ。キャンデロロさんの絶頂期は長野五輪で、私は例の友ほか友人複数で長野に乗り込んでいたわけですが(フィギュアのチケットは取れなかったんだけど)、あの当時の盛り上がりを口で説明しても、過不足なく伝えるのはちょっと無理だな。それくらい凄い人気でした、ロロさん。

●キミー・マイズナーさん
私は彼女のことを殆ど知らなかったのですが、2006年のワールドで優勝した後、怪我などの理由からスケートから離れていて、今季から復活しようと頑張っていらっしゃるのだとか。

どの選手にもご苦労があり、皆さんそれぞれ順風満帆のスケート人生を送っているわけではありませんが。それでも、フィギュアスケーターが氷上に立たない時期を長く過ごすということは、復活に向けて最も努力と忍耐が必要であると思われます。

アメリカ女子は層が厚いと聞きますが、その中で上っているけるよう、頑張ってほしいなあ。

●カート・ブラウニングさん/Nyah
ミッションインポッシブルⅡのサントラからですね。
MIⅡって良くも悪くも「ジョン・ウー」で、香港映画っぽいいきなりのスローモーションとか、メロドラマっぽい音楽の使い方が印象的。このNyahも非常に印象的なシーンでした(必然性があるかどうかはさておき)。

フラメンコというのは、男女を問わず、年齢を重ねたダンサーにしか出せない領域が広く深く存在するダンスの1つだと思います。(能はその領域の方が広い。逆にバレエは「重ねた年齢」にもよるけど、そういう領域は相対的に少ない。)
たとえば著名なフラメンコダンサー小島章司さんは、かなりのご年齢なのだけども(ちなみに小島さんは「スパニッシュダンス」という言葉を使うと、「それは『もどき』を指す言葉。フラメンコとちゃんと言いなさい。」と訂正されます)、小島さんの年齢でしか出せない踊りが確実にある。

さて、カートさん。
怠ることなく鍛錬を続けてきた「踊る」身体も、薄くなって刈り込んだ頭も、一つ一つのムーブメントも、何もかもが「カート味」になってます。
噛めば噛むほど味が出る、ほんにあなたはスルメのような・・・とは漫画か何かのセリフですが、余計な水分とともに煩悩のようなものが長い年月の間にすっかり蒸発し、味が濃くなっていますね。

もちろん、年齢を重ねると「できない動き」というものが出てきます。しかし、できない動きがあるが故に、「できる動き」にそれ以上の何か(味だったり、情感だったり)を込めることができる。
人生って、良くできているなあ、と思います。

関係ないけど、森泉さんに意見を求めて無理にコメント言わせる必要はなかったね。

●成美ちゃん・トラン君/ランナウェイ・ベイビー
今季のEXだそうですが、この2人にぴったりの楽曲を選んでいますね。

五輪シーズンに向けて頑張っていらっしゃるので、どうにか国籍問題をクリアして頂きたいものです。政治が安定していると、こういうところまで配慮する余裕も出てくるのでしょうが、政治があまりにも不安定であるため、官僚の「前例がない」から一向に進まない。考えると少しブルーになります・・・。

●小塚君・バトルさん・カートさん/ギターコンチェルト
この演技に小塚君の課題が凝縮されていると思いました。
もちろん、小塚君は、この演技に際して非常に緊張もしていたし、気分も高揚して「普通じゃない」状態だったと思います。加えて、3人(+ギタリスト)が氷上に乗るというイレギュラーな形態で、位置取りや動きを合わせることに、通常ではありえないくらいの気を使わないといけないでしょう。その分、ムーブメントそのものへの集中度がどうしても落ちてしまう。それも分かってる。
しかも、スケーターの2人はバトルさんとカートさん、そしてギタリストは布袋さんで、尊敬する人ばかりで、「絶対失敗しちゃいけない」というか「成功させたい」という気持ちも大きいでしょうから、妙な冒険はできない。

でも、逆に言うと、そういうところが全部分かっちゃうところが、つらいところ。
なんで分かっちゃうかというと、動きが萎縮してるから。
伸びきらないのさ。溜めきれないのさ。
バトルさんとカートさんという名手2人と一緒に滑ってるから、よけい目立っちゃうのね。この2人は、音楽に乗せて心を解放すること、そしてその心の解放具合にムーブメントを連動させることが実にうまいですから。

もちろん、小塚君は現役選手ですから未だ「生食OK」のイカで、バトルさんが「一夜干し」、カートさんは完全に「スルメ」、という違いは非常に大きい。
実際、こういうショー的な形態への「慣れ」の問題もあると思います。例えば、カートさんもバトルさんも、3人の位置取りや動きを合わせることに一定の気をまわしているはずです。しかし、「目の端であとの2人を確認する」作業を行っているのが、小塚君は鑑賞者サイドからも頻繁に認められるのに対し、あとの2人はあまり目につかない。これは、こういう場面への慣れの程度が影響している部分も大いにある。

ただ、「気にしなくちゃいけないこと」があると、動きがあっという間に委縮してしまう小塚君のこの傾向は、少しずつ克服していった方が良いと思います。今回の演技は、このことを再確認する意味においては非常に意義深かったと思います。

小塚君のような傾向があると、次の振付を追ってばかりいる、あるいは振付を淡々とこなし続けているだけのように感じられ、堂々とした演技に見えないし、なんといっても伸びやかさに欠けます。「次はああ動かないといけないから」と考えて、現在のムーブメントの溜めが少なく、結果、3人の中で若干動きが小さく早めなのに対し、バトルさんとカートさんの滑りは非常に伸びやかで、音と合わせることを目的に動いているように見えます。音が伸びていく最後の瞬間まで振付のムーブメントを伸ばそうとするのね。

小塚君にはバトルさんやカートさんのような伸びやかさと、その表裏一体となる「音楽を感じて、音楽に最後まで合わせる」スキルを手にして頂きたい、また音取りは「遅め」でちょうど良い音楽がこの世には沢山あることを知って頂きたいと切に願います。

それにしても、布袋さん、頭大きいなあ。遠目に見るとコロッケさんかと思っただよ。

●高橋さん/ブエノスアイレスの春
先に滑ったヤグディンさんのタンゴは「男1人」でしたが、高橋さんの方は相手の女性が見えるタンゴですね。

EXナンバーということもありますが、艶のあるパフォーマンスでした。何度も相手の女性を抱き寄せるようなニュアンスの振付や、身もだえするようなムーブメントが仕込まれており、宮本さんも憎いのお。こんなの見せられたら、やっぱり「ズタボロなホセ君」(こちら参照)を高橋さんにやって欲しくなりますわねえ。

こんなに色気のあるスケーターは他には思い浮かびませんわよ。それが日本人ってところに、世の変遷を感じます(あぁ、また年寄りじみたことを言ってしまった)。

●チャンさん/ティルキングダムカム
Coldplayって良い曲が多いけど、何故だか記憶に残りがたいんですよね。この楽曲もすっかり忘れてて、チャンさんの演技を見て、最初聴いた際に「forever and ever なんかよりも、till kingdom come の方がちょっと知的な印象があるのかな?文語的とか?・・・ネイティブの友達に訊いてみないと。」と思ったことを思い出しました。もちろん訊いてません・・・どうなんでしょうか?

楽曲の影響も大きいと思うのですが、チャンさんも何気に悩んでいるんだろうなあ・・・などと思ってしまいました。

●真央ちゃん/メアリー・ポピンズ
原作のメアリー・ポピンズって、結構きちんと厳しいナニーで(笑)、優しい・可愛いばかりじゃないのですが、この真央ポピンズは可愛く楽しい演目に仕上げてますね。ふわりと優しく広がるたっぷりとしたスカートといい、レースやリボン使いといい、佐藤さんのおっしゃる通り、子供達がスケートをやってみたいと思わせる効果抜群。

今季の真央ちゃんにも魔法の言葉を。
スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス!!

●プル様/The Prophet
現役続行なので当たり前だと言われればそうなんですけど、身体をちゃんとメンテナンスして怠らず鍛錬されていますよね。

ザ・プル様の振付といい、それを圧倒的な迫力と動きでこなしていく様子と言い、「王者はチャンさん」という通説がある中でも、「王者」という言葉が似合う人はプル様なのだということを感じさせます。
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by Koharu-annex | 2012-10-22 16:46 | 2012-2013 フィギュアスケート
またまたすごいことになってるなぁ、スケートアメリカ。

もう何から見たら良いか、わからん。
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by Koharu-annex | 2012-10-21 18:52 | 2012-2013 フィギュアスケート

スケートアメリカ

えらいことになってるな、スケートアメリカ。

大丈夫か?
(良いことがあると不安になるタイプ)
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by Koharu-annex | 2012-10-21 00:38 | 2012-2013 フィギュアスケート

ジャパンオープン2012

●ミハル・ブレジナ/アンタッチャブル
昨季から持ち越したのですね。
確かに、とても良い演目にもかかわらず完璧にこなせたことは無かったような。大きな問題は、この演目のハードさに体力がついていかない点だったように記憶していますが、今回のパフォーマンスも、その点は同じですわねえ・・・。

●小塚崇彦/ロンド・カプリチオーソ
・・・あのさ、どうでもいいことだけども、「ロンド・カプリチオーソ」だけだとメンデルスゾーンのピアノ曲かと思っちゃうのよね。サン=サーンスのバイオリン曲なら、「『序奏と』ロンド・カプリチオーソ」って、ちゃんと「序奏と」を付けてくれないとな~。心の準備ってものが。

さて、小塚君。
まず目に入るのは衣装。コメント下さった方が「ティッシュが増強されている」とおっしゃっていたのですが、まさに!また、首~肩にかけての金飾りは、若干多すぎると言うか、端的にいうとヘビー過ぎるかなあと。
でもまあ、衣装なんてのは、小塚君が気持ちよく滑るのに支障がなければいいですよ、ええ。

事前インタビューで、概要、「自分をアピールするのは得意じゃないので、日本人の秘めたる美というか、うまく雰囲気を作って、周りの人を引きずりこむ」という話をされていますが。
私、そんな大上段に構える必要はなく、というかそれ以前の問題として、やるべきことは「心の解放」だと思うぞ。
心の解放具合が足りないことは、カーニバルオンアイスを見ればもっと明らかなので、この点はカーニバルオンアイスの雑感で。

●パトリック・チャン/ラ・ボエム
プッチーニの名曲オペラ「ラ・ボエーム」は信ちゃんに良いなあと思っていたのですが、チャンさんが先にボヘミアンになりましたか。
スケート自体は伸びやかに感じられましたが、転倒があまりに多くてグダグダになってしまいました。

19世紀パリに暮らすボヘミアンの愛と青春、そして死。
そんな雰囲気を出そうと努力しているのはよく分かりました。今季、どんな作品に仕上げてくるのか、楽しみです。

●エフゲニー・プルシェンコ/ロンド・カプリチオーソ
えええ?ロンド・カプリチオーソ?ロミジュリ(by宮本さん)じゃなかったの?!
メンデルスゾーンを期待したけど、やっぱりサン=サーンス。小塚君ともろかぶりかあ。

おお、曲が同じサン=サーンスの瀕死の白鳥に変わったぞ。
それでこの衣装なのね!

ありゃ、また音楽が変わったぞ。これは・・・サン=サーンスの死の舞踏?!
それで、黒部分が多いのね!
瀕死の白鳥つっても、黒部分が多すぎるんじゃあ・・・と思ってたのよ。納得。

白鳥を模した動きが入っていたため、曲順から単純に考えると、「ぶいぶい言わせてた白鳥が落ちぶれて瀕死になり、最期にあがいてみたものの力尽きる。」みたいな悲しい感じになっちゃうけど・・・これは素敵な演目になると思いました。ロミジュリも見たかったけど、この完成版も楽しみです。

●高橋大輔/道化師
おお、イタリアオペラ。そういう意味では、チャンさんとのガチンコ対決ですわね。
あの名作「道」もイタリア映画でしたし、イタリアの道化師ってだけで高橋さんには縁起の良い感じがしますが、どうでしょう。

暗く哀しく重い曲調ですが、高橋さん、負ける要素が何一つありません。
ラストの悲劇的な破滅に至るまで、全体を通して、道化師の内面の苦しさ・哀しさ、そして葛藤に徹する内容。この重さをFSという長さの間継続できるのは、高橋さんしかいないと思います。そんじょそこらの選手じゃ、途中で破綻しちゃうと思いますね。

一部小さなミスがありましたが、ジャンプのなんと軽やかなことでしょう。ジャンプがあまりに軽やかで振付の中になじんでいるため、よくフィギュアスケートで見受けられるような、「演技がジャンプに引っ張られる」ことが全くありませんでした。そこも素晴らしかったです。

それにしても、先日の安藤さんの今季GPS欠場ニュースを拝見したワタクシとしては、モロゾフさんの映像が流れると、ちょっと心穏やかじゃないわ~。

●エレーネ・ゲデバニシビリ/ドン・キホーテ
肩のテーピングが痛々しい。が、上半身の動きは良かったと思いますよ~
転倒もあって最後は体力がもちませんでしたが、ドンキホーテの中から楽しく乗りの良い曲が沢山選択されていますし、万全の身体で臨めばゲデ子ちゃんらしい明るく楽しい仕上がりになるのではないでしょうか。

●鈴木明子/シルク・ド・ソレイユの「О」
これまでご本人もインタビューで難しいと話されていましたが、まさにチャレンジングな楽曲(編集)だと思います。表現の地力が強いあっこ姉さんならではの選択。

水辺の鳥をイメージしているとのことで、元ネタの「О」とは想定している世界観が違うのですね。オリジナルの「ぴちょーん・・・ぴちょーん」とした世界観(通じないだろうな、これじゃ。苦笑)、私は結構好きですが、今回の「水辺の鳥」バージョンも非常に良いですね。

クジャクの羽根のような紋様が入った衣装も、とても素敵でした。若いじゃりんこには決して着こなせない衣装。
この衣装も相まって、冒頭、他の小鳥の声に気付いて顔を上げて辺りを伺う様子が、まるで不思議の世界の早朝の水辺を見ているようでしたよ!
朝陽の薄い煌めきの中に、見たこともないような世にも美しい鳥が羽を広げ、一日が始まって行く様子。辺りの森の様子まで見えるようです。その森の色合いが、淡かったり、キラキラしたり、時に薄グレーな風にみぞれが混じったり・・・そんなところまで見せることができる。
やっぱり、ただもんじゃないです、あっこ姉さん(笑)。

ジャンプでの数度の転倒は残念でしたが、これからが本当に楽しみです。私、既に大好きです、このプログラム。

●アグネス・ザワツキー/ラプソディ・イン・ブルー
昨季からの持ち越しですが・・・何もかもが残念でした・・・。

●アリョーナ・レオノワ/海の詩人
海の詩人はポエタの中の曲ってことで、ポエタといえば、スペイン国立バレエ団。
来年、スペイン国立バレエ団が来日するんですよね(こちら参照)。旦那が大好きなので一緒に行きたいなあと思っているのですが、どうなるかな。

まだ大雑把にしか振付や世界観を理解していない感じですね。
ただ、もしかすると、想定されているそもそもの振付や世界観が今一つあやふやなのかもしれません。
ベタ過ぎるほどの「ザ・スペイン」衣装と髪飾り。にもかかわらず、振付や世界観は、ちょっと「ベタ」とは違う感じがするというか、迷いがあるような気がする。
これはモロゾフさん振付ですかね?うーん、だから中途半端なのか?(もしかしてものすごく失礼?)

●浅田真央/白鳥の湖
既にコメントで何度か触れたところですが、記事しか読まない方も沢山いらっしゃるので一応。
白一色(+金銀)じゃなく、グレーの射し色があるところが見事です!
真っ黒はないけど、グレーあり。これこそ、オデット(こちら参照)。
衣装もタラソワさんだそうですが、本当に「さすが」としか言いようがない。本質をきっちり分かっていらっしゃるなあ~と感動した次第。

ただ、この衣装、立ってるところを拝見した限りにおいては、首周りから胸にかけて少し寂しい印象をあたえるかも、とも思いました。バレエの衣装では、鳥の胸の部分の柔らかい羽毛のような細かな羽を、胸の上部にあしらうことがあるのですが、それがあっても良いかな、とも考えたのですが。

動き出したら、これはこのままの方がデザイン的には統一されているし、動きと合わさるとむしろ胸の羽毛は無い方が良く、これがベストな気がしてきました。
身ごろの中心の装飾が、前後の両方とも、すっきりとしたラインながらも深く切れ込んでいるのが美しいです。氷上の白と同化してしまうことを見事に防いでいますね。

腕が長いので、手首のところに施された装飾が良く映えます。流線形のすっきりした髪飾りも、衣装の装飾と良く合っています。これらの腕の装飾と髪飾りは、バレエの装飾とは一線を画すものですが、それも逆に良いと感じました。

真央ちゃん、少しふっくらしましたかね?健康的でとても美しくなられました。
鳥の羽ばたきのような振付が、そこここに含まれています。まだまだこなれた感じはしませんし、少し音楽に遅れてしまったところがありましたが、これはピタリと合ったら相当に見応えがあると思います。

私の好み的に言うと。
序盤(2幕の情景Ⅰの音楽)では、少し軽やかさを抑え気味に、もっと重くしっとり、指先まで緊張感を湛えて、ためて動いた方がいい。

中盤(2幕の情景Ⅱ、王子とのPDD)は、緊張していた心が少しずつほぐれてくるように、今の軽やかな動きに戻して、と。さらに、欲を言えば「小首を肩の方にかしげる」振付(2回ある)の時に、もう少し照れや躊躇、恥じらいみたいなものを感じさせるとグッドよ~

後半、3幕の王子のバリエーションの音楽から始まる部分は、黒鳥部分のクライマックスにつながるところ。黒鳥が王子を見ているような余裕の表情で堂々としていればよく、基本このままでOKだと思います。

最期のクライマックス(黒鳥のバリエーションとコーダ)は、滑り込んで迫力と強さを出すだけですわね。今はまだ黒鳥よりも白鳥イメージの方が濃厚なので。

●アシュリー・ワグナー/サムソンとデリラ
おおぅ、またサン=サーンス。なんか大はやりだな~、サン=サーンス。

彼女に、良くも悪くも、常に存在する「力み」。これに合致した演目だと思います。
怪力サムソンと、サムソンを陥れて復讐する妖婦デリラ。
いずれも「力み」がプラスに働くキャラクター。楽曲も、じゃかじゃかじゃんじゃん!!みたいな感じで(笑)、単純というか、力で押す表現一辺倒でもさして違和感がない。

終盤、スピードが落ちるかなと思ったのですが、なんとか逃げ切り、ラストは復讐に成功しながら般若のようなお顔になったデリラ。見事でした。
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by Koharu-annex | 2012-10-17 16:26 | 2012-2013 フィギュアスケート
真央ちゃんの今季FSが、バレエ音楽「白鳥の湖」ということで。
白鳥の湖を、ちょっと復習しておきましょう~、という記事です。

白鳥の湖・・・「バレエダンサーにとっては永遠の母胎」という趣旨の話を、以前、熊川哲也さんがTV番組でおっしゃっていましたが、世の中的にも、バレエといえば白鳥、という構図が出来上がっております。バレエを題材にした漫画や少女向け小説は山ほどありますが、その中で白鳥に触れていないものは、おそらく1つもないのでは?と思われるほどです。もちろん世界中のカンパニーで上演されており、そりゃもう、山ほどのバージョンがあります。

音楽は、チャイコフスキー。

彼の初めてのバレエ曲で、完成まで2年ほどかかったといわれています。
「母胎」とまで言われる今の隆盛を見ると信じられないことですが、この音楽、19世紀後半の当時のバレエ界にとっては、複雑すぎて難しいスコアだったようで、既に練習中からダンサー達や指揮者が不満を述べていたとか。

当然、初演は成功とは言い難く、その後、何度も他人によって削除・加筆・入れ替え等、原曲に手が加えられて、現在の形になっています。(削除された部分はかなり存在し、後年、削除された楽曲を使ってバランシンが作品を振りつけています。また、多くの振付家等の努力により、チャイコフスキーの意向を復元しようとする試みもあります。)

「白鳥の湖」の筋をご存知ない方は、ウィキペディア等でざっと確認して下さいましね。
白鳥の湖の場面設定はドイツと言われています。元ネタは、童話「奪われたヴェール」だと言われていますが、世界各地に存在する白鳥伝説(日本の「羽衣伝説」や「鶴の恩返し」の白鳥版だったり、それらを適度にミクスチャしたものと思えばよいかと)や、ワーグナーのオペラ「ローエングリン」の影響も指摘されています。

ただ、筋書き通りのバレエに終わらないのが、白鳥の湖の面白いところ。

たとえば、白鳥ではなく、王子の物語ととらえる解釈も可能です。
病める精神を持つことを強調したり、王子としての成長物語とするバージョンです。代表的なのはマシューボーンの「スワン・レイク」で、これは王子の病的なマザコンを極端に発露させた作品です。
王子のマザコン的要素やメランコリックな気質は、ノーマルな「白鳥の湖」でも明らかです。そもそも、人間100%でないオデットに一目ぼれして(彼はしょっぱなで白鳥⇒人間の変身場面に遭遇しているにもかかわらず恋に落ちる)、あげく短期間(おそらく数時間もない)で永遠の愛まで誓ってしまうあたりに、王子の普通じゃない逃避傾向が見て取れる。なので、この王子の病質にロックオンバージョンは、今後も存在して行くと思います。

このような派生作品を創造できる面白さだけでなく、「白鳥の湖」に通底する面白さは、ズバリ、


重畳的な二面性


です。

白鳥の湖には、様々な「二面性」が、時に密やかに時にあからさまに設定されています。代表的なものを以下に挙げます。

【昼と夜】
煌びやかな宮廷での昼間の祝宴と、夜の月明かりに照らされた湖畔の廃墟。
この2つの場面が順番に現れて物語が進行します。照明による夜の青白い月明かりは、きつい眠気を誘うこともあるけど、そこはそれ(笑)。

【白鳥と人間】
オデット(&お付きの者)は、昼間は白鳥の姿で、夜だけ人間の姿に戻ることができます。したがって、オデットの出番は基本的に夜です。
ところが、夜のオデットらも「100%人間」ではない。そもそも夜になってから変身するってこともあるんだけど、オデットは、夜であっても、白鳥の清浄な空気感や優雅な羽ばたきのような所作を残している。
つまりオデットには、「人間でない部分」を持つ人間という二面性が、「常に」残されている。

【白鳥と梟(フクロウ)】
オデットは、悪魔ロットバルトにより白鳥に変えられてしまったお姫様です。対して、ロットバルトは人間の姿をすることもあるけれども、普段は梟の姿をしています。見た目が既に対象的。美と醜とは言いませんが(笑)。
梟って「知」の象徴のように捉えられることもありますが、ロットバルトの悪知恵とか狡猾さのイメージとも通じるところがありますね。そして、オデットは、ちょいとバカ正直なところがあるので、そこも対象的。

【善と悪】
悪魔ロットバルトとその娘オディールは、双方ともフォローできない悪者です。オデットは理不尽な悪魔の所業の被害者であり、完全なる善として描かれます。
王子がオディールをオデットと勘違いし、オディールに愛を誓ってしまい、オデットを裏切る形になったところで「悪」が勝つかと思いきや、最終的にはラストで、この世あるいはあの世で王子とオデットは結ばれ「善」が勝つ(これにはいろんなバージョンがあるのだけど)。その大きな流れの中で、善悪が様々に展開し、もんどりうつことになります。
白鳥の群の中に悪魔の手先の黒鳥が数羽混じっていたり、祝宴の中の民族舞踊の中に悪魔の手先が入っていたり、ロットバルトがいろんなところで出てくるバージョンもあります。

【覚悟と逃避】
オデットは、基本的に、自分の理不尽な宿命を真正面から受け止めています。白鳥に変えられてしまった自分とお供の者達(←これ重要)を元の完全な人間に戻すため、男性からの変わらない永遠の愛を真摯に求め続けています。自分だけでなく、お供の者達全員を救うためには、元人間白鳥グループの「長」としてのオデットが「永遠の愛」をゲットしなければならない。オデットには、この「長」としての覚悟がある。
これに対して、王子は、自分の「王子」としての宿命から逃げ出したくてたまらないのね。母親である女王から結婚を迫られるのも憂鬱だけど、そもそも成人になることすら憂鬱っていう困ったちゃんなのです。大人になって責任を負うのが億劫で、楽しい子供時代のままでいたくてしょうがない人なの。
2幕でのオデットと王子の愛の誓いは、2人の利害が一致したからとしか思えないんだけど、そこを声を挙げて追及すると物語が成立しないので止めておきます(笑)。

ちなみに、私が見たバージョンの中で最も唸らされたラストに、次のようなものがあります。ロットバルトとオディールに騙されたことに気付いた王子が湖畔に急行。そこへロットバルトが立ちふさがり、争った挙句王子は湖へ落ちてしまいます(死亡と思われます…)。
ロットバルトは、オデット&お供の者達に対し「さあ、我のもとへ戻れ」と合図。オデットは、王子が沈んだ湖に一瞥をくれた後、きりりと引き締まった表情で毅然と群を率いて、とりあえずロットバルトについていく、というもの(王子に見切りをつけ次の求愛者の探索へと切り替え)。
すごいでしょ。完全に亜流のラストなんですが、ある意味で、オデットの本質を突いていると思います。

【白鳥と黒鳥】
最も有名な二面性は、これでしょう。
しかも、偶然の産物とはいえ、1人2役が定着しています。1人が善悪の2役を演じ分けるため、その人の「見てはいけない裏側」を見るような快感があり、白鳥の湖に何度も足を運ぶ原動力は、1人のダンサーのこの2役の演じ分けを見ることにあるというファンも多いと思います。

さて、このオディール。一体、どういう女性なのか。
オディールは「悪」なので、妖艶で、ファムファタールなイメージで、色気も強さも兼ね備えた無駄に自信過剰な感じで演じられることも多いです。逆に、「王子にオデットであると信じさせなければならない」という物語上の制約を重視し、オデットのような清楚な振りをしつつ、ちらちらと悪の顔を覗かせる、という演技をするダンサーもいます。
ただ、いずれにしても、初見のお友達には、「こんな女をオデットと間違えるなんて、この王子もたいがいアホやね」「こんなので騙されるって、話自体に無理がありまくり。」という感想を持たれることが多い(そして王子の白タイツと相まって、バレエに苦手意識を持たれていくのでした・・・ああ)。

しかし、翻って考えるに。
はたして、オデットに、オディールの要素が全く無かったと言えるのか?って話ですわ。
既に述べたように、オデットは「長」として元人間白鳥グループを救うべく、「永遠の愛」を誓ってくれる男性を覚悟をもって漁っている求めている状態です。このオデットが清楚100%「だけ」の人であるわけがない。「長」としての決死の覚悟と度胸、そして男性に愛を誓ってもらえるだけの器量と魅力を備えていなければ成立しないんですよ。

つまり、オディールの妖艶さ・ファムファタールのイメージ・強さ・色気といった要素は、オデットが「密やかに」持つこれらの要素の裏返しとも言えるわけです。だから、王子が間違えたってわけですわよ。
したがって、オデットは、人間でない部分を持つという二面性のほか、オディールの要素をも密かに併せ持つという二面性も有している、ということになります。

そんなわけでオデットとオディールの演技というのは極めて難しく、ダンサーを悩ませ続け、中には極度の恐怖感を感じる方もいらっしゃるとか。世に言う「白鳥コンプレックス」ってやつです。

・・・といったところで、この二面性の魅力をご理解いただけたでしょうか。

さて、真央ちゃん。

この方、二面性があるのですよね。
以前、コメント下さった方が、的確にも、デモーニッシュな面も併せ持つ、あるいは、女神だけでなく鬼神としての顔を持つ方だとご指摘されていましたが、まさに言い得て妙だと思います。

私は彼女に色気や妖艶さを求めはしませんが(笑、たぶん皆様も同意見かと)、女王オーラの萌芽を持つ類まれな姫オーラ(こちら参照)を持つ彼女には、いわゆるオデットとしての人間でない空気感や、清楚で純潔で、美しく優雅なイメージだけでなく、「長」としての凛々しさや覚悟を感じさせるある種の強さを見せて欲しいと期待しています。
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by Koharu-annex | 2012-10-05 16:00 | フィギュアスケート女子