もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

カテゴリ:バレエ(座長公演)( 11 )

シルヴィ・ギエム・オン・スーテジ2011 Bプロ
2011年10月30日午後3時~ @東京文化会館

●「春の祭典」
音楽: ストラヴィンスキー
振付: ベジャール
出演
生贄: 長瀬直義、吉岡美佳
2人のリーダー: 柄本弾、森川茉央
2人の若い男: 氷室友、小笠原亮
4人の若い娘: 高村順子、西村真由美、佐伯知香、吉川留衣

ベジャールの作品には比較的性的な要素が入ることが多いですが、これくらい「性」をど真ん中で躊躇無く描いている作品も珍しいですよね。
作品の構想自体がプリミティブなものであるために、振付自体にすごく底力があって吸引力があるので、(私の苦手な)ストラヴィンスキーの音楽が鳴り響かず、非常によいバランスで見ることができます。

●「リアレイ」
音楽: デヴィッド・モロー
振付: ウィリアム・フォーサイス
出演: シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル

照明がことのほか暗くなることがあって、最近、疲れ目の激しい私の目では見づらい。正直いうと、暗くなると途端に眠くなり。はい、何度か一瞬寝ました。

さて、こういう飛びぬけて高い身体能力を要求する現代作品を見るとよく分かるのですが、ギエムさんは完全体ですね。
こう動きたいという脳の思考が完璧な神経経路を伝わって、これまた完璧な身体によって、完璧に造形される感じです。うっすらとした小さな障壁すらそこには感じられません。つまり、柔軟性、筋力、それらをつかさどる全てのものが、理想の状態で安定して強さを堅持している感じです。もしかすると、その完全性にある種の無機質を感じる人もいるかもしれないとも思うほどです。それに比べると、ムッルさんは若干人間っぽい(笑)。

ギエムさんとムッルさんは、身体のルックスと造形の相性がとても良いです。両者とも自らの性別ど真ん中というより、中性的に傾いたタイプである点でも共通するから、雰囲気がごく自然になじむのも良いのかもしれません。彼女が折にふれてムッルさんをパートナーに選ぶ気持ちが分かる気がします。

●「パーフェクト・コンセプション」
音楽: ヨハン・セバスチャン・バッハ(ゴールドベルグ変奏曲)、ジョン・ケージ、レスリー・スタック
振付: イリ・キリアン
出演: 田中結子、川島麻実子、松下裕次、宮本祐宜

舞台の上手前に大きな枯れ木が逆さに吊り下げられ、舞台奥には太い梯子を横にしたような装置(下手側の先に大きな照明がぶら下がっていて回転するようになっている)が設置され、いきなりカラスの鳴き声で始まる舞台。不気味です。そして、落ち着かない心情にさせる、どっくん、どっくんと、妙な雑音とともに低く鳴り響く音(後でパンフレットで確認したところ、胎内音だそうです)。不気味過ぎます。この世界観は、いろんな意味ですごいなあ。

そんな中、ちょっとオトボケなのが、「座布団」の真ん中に穴を開けたような四角くふっくらしたチュチュ(と言い切るのには躊躇があるなあ。笑。こちら参照)。
キリアンが東京バレエ団のために振付けた作品であることに照らし、料亭かどこかで見た座布団に興味を引かれ、そこから派生させたものじゃないだろうか、と妙に確信をもって考えてしまうワタクシであります。だって、小さい頃、子供同士で座布団で遊んだことが結構あるんだけど、その時やってたような動作が随所に出てくるんだもの~。

そういう意味で、ダンサーがこなしている振付には妙に笑える部分もあったりするのですが、世界観に不気味な不可思議さがあるためか、普段は目に見えていない世界の深淵を見た気分に陥ります。

●「アジュー」 (さようなら)
音楽: ベートーベン ピアノソナタ第32番ハ短調作品111アリエッタ(第2楽章)
振付: マッツ・エック
出演: シルヴィ・ギエム

とても心に残る作品でした。
ベートーベンのアリエッタの真髄と、見事にシンクロ。というか、逆か(=曲が先か)。
語弊を恐れずに言うと、アリエッタのコアの部分が象徴する「何か」を、マッツ・エックは鋭くピンポイントで把握している。そして、ピンポイントで把握した「何か」を、これ以上ない的確さをもって作品に具現化している。そんでもって、ギエムは、この作品をこれ以上ない正確さ(動作と情感の両方)でもって、パーフェクトに表現しきっている。

マッツ・エックのピンポイントで把握した「何か」を、ギエム自身も正しく把握していることは明らかで、これは振付家とダンサーが一対一で作り上げたものだからこそ成し得る快挙であり、本当にこの時に生きてて良かったと思いました。

序盤の段階で、こんな感じでノックアウトされていたのですが、終盤では思いもかけない方向からパンチが。
1人の女性が自分の殻の中から抜け出て、生きていくために現実の世界に戻っていく。そこは決して温かい場所ではないのだけれど。ああ、こう来たか、と思いつつも、落涙。

久しぶりですわ、この感じ。もう15年ほど前なんだけど、「幻の小さい犬」(フィリパ・ピアス著)っていう児童書を読んだとき、ラストのシーンで思いがけずボロボロ涙が出てきた時の感情に、すごく似てる。

「幻の小さい犬」は、父が最初に読んで、「お父さん涙出てきちゃってね、はっはっは、小説みたいなので泣いたのって何十年ぶりだから、『久しぶりやな~この感じ』って思った~」って感慨深そうにのたまうもんだから、つい手を伸ばしちゃったのよね。
父は孫への読み聞かせの予習のために読んだみたいだけど、結局、読み聞かせはしなかったみたいです。読み聞かせには全く向いていないというか、むしろ大人向けの本という印象ですわね。

まぼろしの小さい犬

フィリパ ピアス / 岩波書店


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by koharu-annex | 2011-11-04 23:11 | バレエ(座長公演)
シルヴィ・ギエム・オン・スーテジ2011 Aプロ
2011年10月26日(水)午後6時30分~ @東京文化会館

指揮: アレクサンダー・イングラム
演奏: 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

<第一部>
●「白の組曲」
音楽: ラロ
振付: セルジュ・リファール
出演
シエスト: 乾友子、高木綾、渡辺理恵
テーム・ヴァリエ(パ・ド・トロワ):  奈良春夏、木村和夫、柄本弾
セレナード: 小出領子
プレスト(パ・ド・サンク): 岸本夏未、高橋竜太、小笠原亮、長瀬直義、宮本祐宜
シガレット: 田中結子
マズルカ: 後藤晴雄
アダージュ(パ・ド・ドゥ): 上野水香、柄本弾
フルート: 西村真由美

オケがもう少し上手だったらなあ。。。幕が上がる前の前奏曲でオケの「あらら」さ加減が分かって、テンション下がりました・・・。曲が進むにつれて徐々に良くなったものの。

白の組曲はパリオペラ座のシーズンオープニングとして有名なので、東京バレエ団の皆さんの踊りを見ながら、「いつかオペラ座のオープニングに行きたいなあ。何着て行こうかなあ。寒いかなあ。天気によるよなあ。」などと余計なことばかり考えてしまいました。スミマセン。

●「マノン」より寝室のPDD
音楽: マスネ
振付: マクミラン
出演: シルヴィ・ギエム、マッシモ・ムッル

信念の人であり今や孤高な印象もあるギエム女史。沼地のPDDではなく、寝室のPDDというのは、もうさすがに苦しいか、と思わせるものがありました。マノン全幕だったらまた違っていたのでしょうけど、PDDだけだと、もろその場になじんでいないと違和感が出てくることがあるので。

寝室のPDDでは、女を武器にした女性特有の「媚び」に現実味のあるダンサーじゃないと、あのPDD特有の色気と隠微さが出ないような気がします。ギエムさんは、既にいち抜けた感じですね。

●「スプリング・アンド・フォール」よりPDD
音楽: ドボルザーク
振付: ノイマイヤー
出演: 高岸直樹、吉岡美佳

<第二部>
●「田園の出来事」
音楽: ショパン
振付: アシュトン
出演 
ナターリア(夫人): シルヴィ・ギエム
ベリヤエフ(息子の家庭教師): マッシモ・ムッル
クイルギン(夫): アンソニー・ダウエル
ラキティン(夫の友人): 後藤晴雄
ヴェラ(養女): 小出領子
コーリャ(息子): 松下裕次
カーチャ(メイド): 奈良春夏
マドヴェイ(従僕): 永田雄大

ピアノ: ケイト・シップウェイ
舞台セット・衣裳: ナショナル・バレエ・オブ・カナダ(← 東京バレエ団のブログのこちらの記事より)

この日のオケは少し不安定だったので、シップウェイさんのピアノは救いでした。

まず目に飛び込んでくるのは、舞台美術の見事さ。
舞台中央は広々とした居間(一幕である関係から書斎や子供部屋も一部兼ねてる)で、中央奥には大きく入口が取ってあり、その向こうに庭と入口までのアプローチがある設定で、奥行きを感じさせます。下手には寝室に続くドアがあり、上手には別室が一部見えています。

これらのセットが建具も含めて全体的に、白、渋い金色、青系の三色でまとめられ、美しく装飾されています。とても上品で、帝政ロシア貴族の夏の別荘という設定にまさにぴったり。非常に美しかったです。

白・金・青の三色は、全員の衣装でも繰り返されています(金は黄色で)。全ての衣装が、デザイン性に優れ単調さのない凝ったもので、しかも役柄とのマッチングもよく考えられています。素材も安っぽくなく、上品さも兼ね備わっていて、全てが美しく整っていました(こちらこちらなど参照)。

ダウエルさんのクイルギンは、妻の気持ちの揺れにも何もかもに気付いていながら、あえてボケボケを演じている感があります。役者やのう~。踊れなくなってもこうして舞台に立ってるダウエルさんを見られるのは、本当に幸せです。

家庭教師役は、いかにも「若さ」を感じるダンサー、はっきり言っちゃうともっと若いダンサーが演じた方が、役柄とはピッタリだと思います。が、年齢差のある禁断の恋が生じた瞬間、互いの気持ちを確認できた瞬間、短い心の交流を経て別れに向かう瞬間、状況が刻々と変わり物語が進んでいく各場面での主人公2人を、ムッルさんとギエムさんのペアで見ることができたのは嬉しいことでした。

ギエムさんのナターリア夫人、とても良かったです。芯の強さと情熱を持ちながらも、年齢を重ね、かつ品行方正なイメージを出せる今のギエムさんには、とても似合っています。1幕ものとはいえ、ギエムさんのトゥーシューズでの演劇的な作品を、久しぶりに堪能することができて満足な夜でした。
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by koharu-annex | 2011-11-03 12:36 | バレエ(座長公演)

HOPE JAPAN

東日本大震災復興支援チャリティ・ガラ<HOPE JAPAN>
シルヴィ・ギエム・オン・ステージ2011
10月19日(水)午後6時30分~ @東京文化会館

この公演の入場料収入・グッズ販売での収入は、経費を差し引いた全額を東日本大震災・津波の「遺児たち」への支援金としてあしなが育英会に寄付されるのだそうです。経費に何が含まれるか、というところですが、出演者・スタッフの皆様は全員が無報酬だそうです。世界に名だたるダンサーや歌手の皆様が・・・本当にありがたいことです。

最後のスタンディング・オベーションで、私の前列の男性がブラボーの代わりに「ありがとう!」と叫ばれていたのですが、その気持ちはよく分かります(続く方がいらっしゃらなかったのが残念でした。このような声掛けは女性よりも男性の方が声が通るしサマにもなるので、是非男性の観客の皆さまには続けて頂きたかったなあ)。

第一部
●「現代のためのミサ」より“シャーク”(バレエ「ダンス・イン・ザ・ミラー」より)
音楽:ピエール・アンリ
振付:モーリス・ベジャール
出演:東京バレエ団

音楽は1960年代に流行したダンス音楽シャークを取り入れた電子音楽(by配布された演目解説)。群舞で、ダンサーは全員、Tシャツとジーパンをはいています。腹筋と太ももの筋力を使う振付が続けざまに繰り返しでてきて、きついだろうなあ~と思いながら見ていました。

●ニネット・ド・ヴァロワによる詩「満ち足りた幽霊」「子供の言うには・・・」
朗読:アンソニー・ダウエル

あのダウエルさんが、詩を朗読して下さいました。
私の英語力では全てを聞きとることができず情けなさマックスでしたが、ダウエルさんの心を感じるために字幕は見ないでダウエルさんを見ながら聞くことに集中しました。配布された冊子に長野由紀さんの全訳が掲載されていたのでありがたかったです。

●「ルナ」
音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ
振付:モーリス・ベジャール
出演:シルヴィ・ギエム

この日、私は前から片手以内の席だったので、シルヴィさんの肉体を間近で見たのですが、彼女の肉体は年齢を超越してますね。筋肉も、腱も、神経も、何もかも、理想的な完全さとコンディションで、在るべき場所に在るように見えました(実は右足に何かしらの違和感があるのでは?と思った瞬間もあったのですが、それすら凌駕する身体の質の高さというか存在の確かさでした)。

こんな完璧な肉体でのパフォーマンスってある意味現実感がないんですけど、完璧に表現されて「ルナ」も(それを創った故ベジャール氏も)本望だろうて、という感じでした。

●「アルルの女」より
音楽:ジョルジュ・ビゼー
振付:ローラン・プティ
出演:マッシモ・ムッル

ムッルさんを生で見るのは久しぶりだったのですが、かなり疲れているように見えました。もともと細身の体ですが、このアルルの女では上半身が裸なので、肌に張りとつやが欠けているのがダイレクトに見て取れて・・・もちろんあの繊細ながらも均整のとれた美しい筋肉は健在でしたが(でもやっぱり思い出すと筋肉の良い意味での張りがなかったような気がする・・・)

また、もともとジャンプ等に迫力がある人ではなかったのですが、今日のは中途半端で勢いがないというか、このアルルの女のひりひりとした狂気に至る土台が作れなかった感じです。

割と直前になるまで演目も決まらなかったですし、この舞台に出演するためにいろいろと無理したのでは・・・と少々心配になりました。

●「火の道」
横笛:藤舎名生
太鼓:林英哲
舞踊:花柳壽輔

いつも思うのですけど、日本の笛って、あらゆる楽器の中でマイク向きじゃない楽器の最右翼ですよね。笛から発せられる音波のごく一部しかマイクに拾えてない気がする。その上、拾えた部分だけマイクによって変に増幅されて会場に響かされるから、客席で聞いてると、平ら過ぎる安っぽい響きになるというか・・・。能楽堂ならな~と残念感でいっぱいになる。

今回も藤舎さんの笛は、マイクがなければもっと美しかったと思います。でも、そうすると東京文化会館の広さで、観客全員に聴かせるのは無理ですよね。歯がゆいことでありました。

第二部
●「ダンス組曲」より
音楽:ヨハン・セバスチャン・バッハ
振付:ジェローム・ロビンズ
演奏(チェロ):遠藤真理
出演:マニュエル・ルグリ

チェロ奏者1人とダンサー1人が舞台上に。互いに軽い会話をし、気楽に遊んでいるかのように、チェロの伴奏でダンサーが踊ります。こういう楽器奏者とダンサーが1対1の関係で舞台に上がる場合、悲劇が起こることがあります。それは、奏者とダンサーのレベルに一定以上の差があると、下手な方が単体で鑑賞するよりもとんでもなく下手くそに感じられることがあることです。下手さや欠点が増幅されて強調されるというか。何でもバランスですなあ。

さて、今回のチェロの遠藤さん、ルグリさんを相手に善戦していたと思います。ただ、もう少しこなれてたら良かったかな~。まあ、ルグリさんが舞台慣れし過ぎてますからね。普段立たないバレエの舞台に上げられた上、あのレベルの方を相手にすると、常より緊張するのも無理はない話です。

●日本歌曲「十五夜お月さん」「五木の子守唄」「赤とんぼ」「さくらさくら」
歌:藤村実穂子

私はオペラ聴きとはとても言えませんが(オペラを観始めて20分くらいで「歌はもういいから踊れや」と思ってしまう)、私レベルでも藤村さんの名前は聞いたことがあるので、この方があの有名な藤村さんかあ~と見惚れてしまいました。いい意味で男らしいというか、武士道のようなストイックで研ぎ澄まされた香りのする方です。

素晴らしい声量と声の響きでしたが、特にさ行とざ行の発音が明らかに通常の日本語のものとは違っていました。オペラ歌手の方が童謡を歌うと、通常こうなるのでしょうか。それとも藤村さんが外国暮らしが長いからでしょうか。

●「ボレロ」
音楽:モーリス・ラヴェル
振付:モーリス・ベジャール
指揮:アレクサンダー・イングラム
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
出演:シルヴィ・ギエム、東京バレエ団

ことバレエに関しては、日本の観客の方々が、パフォーマンスの「直後」にスタンディング・オベーションをすることはありません。後ろの席の方が舞台上で挨拶をするダンサー達を見ることができるよう、遠慮するからです。スタンディング・オベーションがなされる場合、そのタイミングとしては、カーテンコールを何度か繰り返され帰る人がちらほら出てくるようになってから、というのが一番多いと思います。

例外は、ギエムのボレロです。

ギエムさんは、2005年にボレロを日本で踊ることを封印されたんですが、その封印公演よりも前から「ギエムのボレロ」のときにはパフォーマンスの直後からスタンディング・オベーションが始まっていたように記憶しています。何もかもが別格ですから。今回は、2009年のベジャールさんの追悼公演に続いて特別に封印を解き、復興のために再びボレロを踊って下さるということで、もちろん直後からスタオベが始まりました。毎回ギエムのボレロの時はこう書いていますが、やはり「感想を書くのは野暮」でしょう。

ただ、最後にこれは指摘しておきたい。
ギエムのボレロをあそこまで魅力的にしている大きな要因の一つに、なぜかギエムのボレロの「リズム」になったときだけ強烈に「隠微な色気」を醸し出す、東京バレエ団の男性ダンサー達の存在があります。今回も、その事実を再確認できた舞台でした。
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by koharu-annex | 2011-10-22 02:02 | バレエ(座長公演)
《マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ》 Bプロ
2011年7月18日(月)午後2時~ @ゆうぽうとホール

Aプロと同じプログラムがあるなど予定が随分変更されたけど、それでもルグリさんが頑張ってくれたのだと思うと、やはり嬉しく感じるのでした。

この日は「なでしこ」が優勝した日で、激しく睡眠不足だったため、結構きついものがありました。夏の睡眠不足は身体にこたえますね。

●「ビフォア・ナイトフォール」
振付: ニル・クリスト 
音楽: ボフスラフ・マルティヌー
出演: ニーナ・ポラコワ、ミハイル・ソスノフスキー
    高村順子-宮本祐宜、佐伯知香-松下裕次、吉川留衣-長瀬直義

ここでもソスノフスキーさんの不敵な存在感が感じられましたが、Aプロと違いPDDだったためかパートナリングを気にしていたようで、若干弱まっていた気もする。

●「ドン・キホーテ」
振付: マリウス・プティパ/ルドルフ・ヌレエフ 
音楽: レオン・ミンクス
出演: リュドミラ・コノヴァロワ、デニス・チェリェヴィチコ

デニスさんが、あらゆる意味で「若い」ですね。ちょっと力みすぎてる感じがします。

●「モペイ」
振付: マルコ・ゲッケ 
音楽: C.P.E.バッハ
出演: 木本全優

昨年のルグリの仲間たちのとき、フリーデマンさんが踊って強烈な印象を残した作品です(当時の記事はこちら)。

フリーデマンさんのキレキレの踊りに比べたら・・・という点はもちろんありますが、木本君、善戦してましたよ!!! いや~、「こんなに踊れる人だったんだ!!」、と驚きました。

また、木本さんは、身体が非常にきれいです。日本人男性の中ではトップクラスではないでしょうか。
高い身長、長い手足、まっすぐな脚、適度な太さと長さの首、厚すぎず平ら過ぎない胸板、肩幅とウェストの太さのバランスも良いし、筋肉の質がしなやかで強靭、肩甲骨を含め関節の稼動域が広い・・・これだけの要素を持ってる人って、ダンサーとはいえ、日本人男性の中ではとても珍しい。

モペイは照明がシンプルで、そのせいか腕の動きの残像がすごく美しく残るんです。木本さんの腕の動きは一級品ですよ。手首、肘、肩、肩甲骨、これらの動きの全てが、観てる者に快感を与えます。

上に向いて立っちゃう硬い髪質とちょっと猿顔の傾向があることで、古典の王子役などでは好みが分かれかもしれません。が、少なくともコンテンポラリーの踊り手としては、数年後には突出してくるのでは?頑張れ~
ちなみに、ウィーン国立バレエ団サイト内の木本さんのバイオグラフィーはこちら(動画もあります)。

●「椿姫」より 第2幕のパ・ド・ドゥ
振付: ジョン・ノイマイヤー 
音楽: フレデリック・ショパン
出演: マリア・アイシュヴァルト、フリーデマン・フォーゲル
ピアノ: 三原淳子

フリーデマンさんは、甘い雰囲気を出すのが本当に上手ですよね。加えて、ガラのPDDですら、「この女性ダンサーと実生活でもできてるんじゃあ・・・」と思わせる演技力もアッパレ。カーテンコールでも何度もキスを繰り返す彼に、ぼーっとなっちゃう女性ダンサーもいらっしゃるのでは?

アイシュヴァルトさんも完全に女優さんタイプの演技派。リフトの際、フリーデマンさんの顔に何度もかかってしまうスカートを、さりげなく除けてあげる余裕もあります(この日の衣装の布地はふわふわし過ぎてて男性側からみると非常に扱いが難しそうだった)。素敵な椿姫でした。

●「クリアチュア」
振付: パトリック・ド・バナ 
音楽: デム・トリオ(トルコの伝統音楽)、マジード・ハラジ、ダファー・ヨーゼフ
出演: 上野水香、パトリック・ド・バナ

前回はフルでしたが、今回はPDDのみ。
バナさん、カーテンコールで正座してご挨拶してくださるなど、日本への敬意と愛情を感じました。

●「マノン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ
振付: ケネス・マクミラン 
音楽: ジュール・マスネ
出演: ニーナ・ポラコワ、マニュエル・ルグリ

ルグリさんの演技が「どっこらしょ」という感じで、あー、ルグリさんも年とったか、と思ったのですが。。。これはパートナーにも責任の一端があるかもしれません。ラ・シルフィードのときも思ったのだけど、ポラコワさんは「自立」に少々欠けるのです。自立性の高いダンサーに比べて男性の負担が大きくなりますし、加えてポラコワさんは華奢とはいえない身体で、物理的に重そうでしたし・・・。

●「サイレント・クライ」
振付: パトリック・ド・バナ 
音楽: J.S. バッハ
出演: パトリック・ド・バナ

バナさんの衣装は、真っ赤な袴。
バナさん、ソロで踊ると、体がいかに大きいか良く分かりますね。スケールが大きい、大きい。
ちなみに、バナさん、このときも正座してご挨拶くしてださいました。

●「グラン・パ・クラシック」
振付: ヴィクトール・グゾフスキー 
音楽: フランソワ・オーベール
出演: リュドミラ・コノヴァロワ、ドミトリー・グダノフ

●「カノン」
振付: イリ・ブベニチェク 
音楽: オットー・ブベニチェク、ヨハン・パッヘルベル
振付: デニス・チェリェヴィチコ、ミハイル・ソスノフスキー、木本全優

若手3人で踊ったパッヘルベルのカノン。なじみのある音楽に、若さがさわやかで、素敵でした。
木本さんは、位的には一番下なんですけど、体のタイプがこの振付には最もあっていました。それに、3人の中で、おそらく音楽性が最も高い。逸材ですね。

●「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」
振付: ジョージ・バランシン 
音楽: P.I. チャイコフスキー
出演: バルボラ・コホウトコヴァ、フリーデマン・フォーゲル

この作品では時折見られるこですが、バルボラさんが途中で息切れしましたね。

●「オネーギン」より 第3幕のパ・ド・ドゥ
振付: ジョン・クランコ 
音楽: P.I. チャイコフスキー
出演: マリア・アイシュヴァルト、マニュエル・ルグリ

Aプロに引き続き、ルグリさんはもちろんですが、アイシュヴァルトさんの女優っぷりが素晴らしいですね。

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by koharu-annex | 2011-07-22 16:21 | バレエ(座長公演)
《マニュエル・ルグリの新しき世界Ⅱ》 Aプロ
2011年7月13日(水)午後6時30分~ @ゆうぽうとホール

震災のために来日するか否かをダンサー個人が個々独立に判断した結果、当初予定されていたメンバーとプログラムが、大幅に変更となりました。残念な気持ちが全くないといえば嘘になりますが、なによりルグリさんがこの公演を予定通り行ってくれたことに感謝感激です。
(ちなみに8月に予定されていたニコラ・ル・リッシュの座長公演は、ニコラさんの判断で中止になっています。)

●ホワイト・シャドウ
音楽: アルマン・アマー
照明: 高沢立生
装置: 野村真紀
衣装: 高井秀樹
出演: マニュエル・ルグリ、パトリック・ド・バナ
    吉岡美佳、上野水香、西村真由美、ほか

昨年のルグリの座長公演の際に、世界初演された作品(そのときの感想はこちら)。今回は前から3列目だったため舞台全体を見渡すことが難しく、前ほど全体像が分からなかったし、作品そのものの迫力というものは前ほど感じなかったのですが、至近距離で観るのも一興。

ルグリさんとバナさんの衣装が変わりましたね。以前はちょっと腰周りにデザインを施したズボンだったのですけど、今回は袴でした。もちろん完全な袴ではなくズボン化した簡易バージョンになってますが、腰板があって、バナさんの方には紐もついてて、前で例の蝶ネクタイもどきの結び目まで作ってありました。

バナさん、呼吸するように踊ります。一般的にも、自ら振付けた作品を踊るとき、ダンサーのムーブメントが呼吸や鼓動と一体化することがありますが、これは他のダンサーでは不可能な領域だと思います。その意味で、振付家が生きてて且つ現役ダンサーとしてやっている間に、観に行くことができた鑑賞者のみに許される贅沢ですよね。

上野さん、恵まれた肢体と鍛錬を怠っていない身体から繰り出されるムーブメントとフォルムの造形美は、やはり群を抜いていると思います。音とりの微妙さは相変わらずですが、今回は特にバナと一緒にベアで踊るシーンでは、バナによく引っ張ってもらった印象です。

吉岡さんは、今回は髪で耳を隠していました。前回耳のことに触れたので、ちょっと後ろめたい気持ちになったりして・・・。

●海賊
音楽: リッカルド・ドリゴ
振付: マリウス・プティパ
出演: リュドミラ・コノヴァロワ(ウイーン国立バレエ団プリンシパル)
     デニス・チェリェヴィチコ( 〃 ソリスト)

アリとのPDDだったのですが、やはりコンラッドも入ったパ・ド・トロワが好きだな。なんか今回はメンバーが少な過ぎて実現できなかった雰囲気で残念。

アリを踊ったデニス君は、まだ若いダンサーで少年の面影すらあります。カーテンコールのタイミングを間違えるところも、初々しい。

リュドミラさんは、途中のステップの1歩が大きくて迫力あるなあ、と思ったのもつかの間、あっという間にしぼんだ印象です。ブラックスワンが控えていたので、セーブしたんですかね・・・。

●「マノン」第1幕のPDD
音楽: ジュール・マスネ
振付: ケネス・マクミラン
出演: バルボラ・コホウトコヴァ(ウイーン国立バレエ団ゲストソリスト)
     フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルトバレエ団プリンシパル)

マノンの音楽って切なくなるほどメランコリックで叙情的なのに、生オケじゃなくて録音で聴くと、妙に薄っぺらく聴こえるのね。不思議。チャイコなど他の有名バレエ音楽では、ここまで落差を感じないんですけどね。うーん、考えたことなかったけど、マノンの音楽って、メロドラマ調というか、大衆受けするような安っぽさがあって、そこが録音だと前面に出てきちゃうんだろうか。

バルボラさんとフリーデマンさんの息がぴったりで、すごく素敵でした。
フリーデマンさんのデグリュー、良いですね!元神学生が、愛に溺れている様子がとてもよく出ていて、すごく良かった!

●アレポ
音楽: ユーグ・ル・バル
振付: モーリス・ベジャール
出演: ミハイル・ソスノフスキー(ウイーン国立バレエ団ソリスト)

ベジャールらしい作品と衣装ですが、抜粋のためとっても短かったのがちと残念。

特筆すべきはミハイルさん。存在感が圧倒的!
ソリストで、ここまで存在感があるダンサーがいるなんて、ウイーン、侮りがたし。


●「ラ・シルフィード」第2幕より
音楽: ジャン=マドレーヌ・シュナイツホーファー
振付: ピエール・ラコット(タリオーニ版に基づく)
出演: ニーナ・ポラコワ(ウイーン国立バレエ団プリンシパル)
     木本全優( 〃 準ソリスト)、東京バレエ団

木本さんはウイーンにいる若い日本人ダンサーで、色でたとえるならまさに萌黄色。
もちろん、まだまだ感はあるけれど、頑張っていましたよ!

●「白鳥の湖」より“黒鳥のPDD”
音楽: P.I.チャイコフスキー
振付: マリウス・プティパ、ルドルフ・ヌレエフ
出演: リュドミラ・コノヴァロワ(ウイーン国立バレエ団プリンシパル)
     ドミトリー・グダノフ(ボリショイ・バレエ団プリンシパル)
     ミハイル・ソスノフスキー(ウイーン国立バレエ団ソリスト)

ミハイルさんのロットバルトの存在感がすごい。不敵な笑みとニヒルな態度。
素敵すぎ。もう既にそれしか覚えてない(笑)。

●ファンシー・グッズ
音楽: サラ・ヴォーン
振付: マルコ・ゲッケ
出演: フリーデマン・フォーゲル、東京バレエ団

可愛い!!!
Jazzyで軽妙な音楽と、フレクシア・ピンクの大きな羽飾りのついた巨大扇(ミュージカル「シカゴ」に出てくるようなやつ)が楽しい。
フリーデマンさんは、古典のロマンチックな役柄やドラマチックな役柄も合うけれど、こういう少しエスプリのある現代作品も良く似合いますよね。

パンフレットによると、シュツットガルトの常任振付家のゲッケが、フリーデマンさんのために振付けた作品で、音楽はジャズ・ボーカルの女王サラ・ヴォーンの「ハイ・フライ」と「ウェイヴ」だそうです。・・・ただ、若干、長いと思いました。もう少しコンパクトにまとめて、「もう少し見たい」くらいの方がいんじゃないかな。

●「オネーギン」より第3幕のPDD
音楽: P.I.チャイコフスキー
振付: ジョン・クランコ
出演: マリア・アイシュヴァルト(シュツットガルト・バレエ団プリンシパル)
    マニュエル・ルグリ

圧巻ですな。何もいうことはありません。ルグリはもちろん、アイシュヴァルトさんも素晴らしかったです。
タチアナは、やっぱりシュツットガルトの女優ダンサーが上手だなあ、と思う次第。

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by koharu-annex | 2011-07-16 10:58 | バレエ(座長公演)
*現在も旅行中です。この記事の感想部分も前回(Aプロ)に引き続き旅先で書いてますので、後日、パンフレットを見て加筆するかもしれません。


エトワール・ガラ2010 Bプログラム
2010年7月31日(土)午後2時~ @Bunkamura オーチャードホール

【第1部】

●「コッペリア」第2幕 《日本初演》
振付: J.ギヨーム・バール
音楽: L.ドリーブ
出演: ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト

ジルベールさんが可愛かった。
オファルトさんは、もう少し頑張って下さい、ということで。


●「ロミオとジュリエット」よりバルコニーのシーン
振付: K.マクミラン
音楽: S.プロコフィエフ
出演: エフゲーニヤ・オブラスツォーワ、マチュー・ガニオ

この2人は、いずれも所属カンパニーの関係から、マクミラン版は踊り慣れていないのではないかと思います。

特徴的な腕を絡ませるシーン(ロミオが上に伸ばした腕に、ジュリエットが自分の腕を絡ませる)など、振付から外れてはいないんだけど、その意味するところについては未消化な印象です。
また、いくつも繰り出されるマクミラン特有のリフトの場面では、2人とも振付はこなしているんだけど、動きがぎこちなく危うい。

そのため、世の中のPDDの中で特に人気のあるものの1つである、ロミジュリのバルコニーのPDDなのに、拍手が少なめでした。
マクミラン版は、日本人が最も親しんでいるバージョンなので、上のような特徴的なシーンやリフトで「こなれていない」感じが出てしまうと、どうしても評価が下がってしまうのですよね・・・。

ただ、オブラスツォーワ&ガニオさんのカップルは、初々しい感じが出ていて、私は好きな組み合わせでした。


●「フラジル・ヴェッセル」 《日本初演》
振付: J.ブベニチェク
音楽・ S.ラフマニノフ
出演: シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ、イリ・ブベニチェク

パ・ド・トロワ(3人の踊り)って、振付けるのも踊るのも、案外、立体的で難しいと思うのですよね。
群舞よりもむしろパ・ド・トロワの方が、幾何学的な思考が必要なのではないか?と勝手に想像しております。

この作品の音楽は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第2楽章なのです。
超有名曲だけに、振付がしょぼいと音楽だけが悪目立ちしちゃう結果になったと思いますが、ブベニチェク氏のこの作品は、どこかどうとは言い難いのですが、何だか妙にはまっていて良かったです。

彼の振付って、とんがりきらずに、適当なところで(というと語弊があるけど)観客側と折り合いをつける感じなのですが、それでいて、「平凡な振付」と切って捨てるのはもったいないと感じさせる何かが確実にありますので、現代作品としての満足感もちゃんと得られます。

多くの人にとっては、コンテンポラリー系のダンスは、このくらいのバランスが良いのではないでしょうか。後世どれくらいまで残るかは別にして。


●「プルースト~失われたときを求めて」より囚われの女
振付: R.プティ
音楽: C.サン=サーンス
出演: エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

とある男女のむなしい関係をアバニャート&ペッシュさんが好演。

舞台下手よりに、幅2メートル程度の長く白い薄手のカーテンが垂らされています。このカーテンが、作品の最後で、上からはらりと落ちてくる演出だったのですが、それが、その後の男女の結末を暗示するかのようで、切なくて良かったです。


●「ディーヴァ」
振付: C.カールソン
音楽: U.ジョルダーノ
出演: マリ=アニエス・ジロ

マリア・カラスの「亡くなった母を」をバックに、ジロ女史が職人系の踊りを披露。

衣装はシンプルなストンとしたロングドレスなのですが、このドレスの上半身のデザイン(アメリカンスリーブの変形)が、ただでさえガッチリしているジロさんの肩~上腕二等筋のごつさや大胸筋の発達具合を強調していました。
こだわりがあるのでなければ、次回からは変えた方が良いのではないかしら。
彼女の肩~腕~胸の筋肉とごつさに、無駄に視線を集めちゃうので。


【第2部】
~バレエ・リュスへのオマージュ~
●「薔薇の精」
振付: M.フォーキン
音楽: C.M.フォン・ウェーバー
編曲: H.ベルリオーズ
出演: エフゲーニヤ・オブラスツォーワ、マチアス・エイマン

エイマンさんは、跳躍は極めてひっじょーにいいのですけど(どよめきが立つほど)、回転がちょっと不安定ですね。何でもない回転なのに軸がぶれることがある(何でもなくない回転のときは、たいていぶれる)。

Aプロ・Bプロ通じてそう感じたのですが、3月に拝見したオペラ座の「シンデレラ」(こちら参照)のダンス教師役のときはそのような印象はないので、今回は調子が悪かっただけかもしれませんが。

最後の場面での窓から飛び出す跳躍は、少し遠慮気味なものでした。ぶつからないように神経を使っている雰囲気が漂っていたので、舞台の大きさや舞台装置の配置の関係かもしれませんね。
今となってはどの程度のものだったか検証不可能とはいえ、ニジンスキーの伝説のジャンプの箇所なので、どうしても多くの人が注目しちゃうのは間違いなく、躊躇した感じがうっすらとあったのは、ちと残念でした。

あとね、この衣装。
エイマンさんの脚の美しさが分かる部分は良いのですが(私は彼の脚の形がとても好きです)、あの薔薇のお帽子は、少々お髭と眉の濃いエイマンさんのお顔には似合いませんわね・・・。


●「瀕死の白鳥」 《日本初演》
振付: D.ウォルシュ
音楽: C.サン=サーンス
出演: マリ=アニエス・ジロ

舞台に向かって右前方のドア(私の座席の近くだった)から、突如、ジロ女史が入ってきて、観客席の間をハイヒールの音を響かせながら舞台まで歩き、観客席から直接上る階段で舞台上に登場するという演出。

舞台に上った後、タバコを一服ふかしてから始まります。

ウォルシュの「瀕死の白鳥」は、人間の女性に化けた白鳥が、ざわめくパーティー会場の中、ある瞬間に思わず正体を垣間見せる、という趣向。
ちょいと夕鶴の「つう」のようです。与ひょうは出てこないけど、きっと彼女の与ひょうがいるんだろうなあと想像させるというか・・・。また、ばたつこうとする羽を必死で押さえこもうとする振付があるのですが、そこが、ここではないどこかへ飛翔(あるいは逃避)しようとする心を、必死に今生きてる現実世界に押しとどめようとしている現代人を象徴するようでもありました。

ジロはこういうのやるとうまいなあ。哀しみとけなげさが伝わってくる。

この作品を踊るジロ女史を見て気付いたのですが、彼女ってかなり右肩がアンバランスに上がっているのですね。両腕を同時に回してくる振付では、それが顕著に見えて、「バレエダンサーでも、両肩のバランスがここまで違うことってあるんだ~」と新鮮な驚き。
(彼女の名誉のために申し上げますが、ある年齢以上の殆どの人間は、両肩のバランスが違っています。私もそうですが、右肩でバッグを持つ癖がある人は、右肩が上がっています。ちなみに、着物の着付けの際、肩のバランスが悪い場合には一方の肩にだけ補正をすることがあります。)

なお、私の隣に座っていた方は、ジロの体格があまりにもがっちり型なので、女装した男性ダンサーが踊っているのだと思っていたそうです(笑)。


●「牧神の午後」よりプレリュード 《世界初演》
振付: D.ボンバナ
音楽: C.ドビュッシー
証明: B.チュッリ
出演: エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

ボンバナ版は、女性と男性がチェンジしています(つまり牧神が女性)。
また、時代設定も現代に置き換えられていて、ヴェールがTシャツになってます(なので、もちろん、牧神はモーモーさんの衣装ではありません。笑)。
有名なラストシーンは、女性ダンサーが男性ダンサーから脱がせたTシャツの臭いをかぐ設定に変更されています。これが「のだめちゃん」を彷彿とさせて、私にはツボでした。


●「幻想~“白鳥の湖”のように」第1幕より
振付: J.ノイマイヤー
音楽: P.I.チャイコフスキー
出演: シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

この作品は、狂王ルートヴィヒⅡの人生を描いたもの。
今回のPDDは、ルートヴィヒの友人とその恋人のPDD。
ルートヴィヒⅡの理想のカップルの踊りなのですが、そこだけ取り出して、この複雑な作品全体を感じるのはなかなか難しい。

アッツォーニ&リアブコさんは、愛と美しさだけでなく、そのような理想の2人そのものが幻影のような儚さを持つものであることを体現していて善戦。さすが演技派と思わせるものがありました。


●「プルースト~失われた時を求めて」よりモレルとサンルー
振付: R.プティ
音楽: G.フォーレ
出演: マチュー・ガニオ、ジョシュア・オファルト

今年2回目のモレルとサンルーです(1回目はルグリの新しき世界でのコテとホールバーグ。こちら参照)。

コテ&ホールバーグさんの方が、官能的でしたね。
オファルト&ガニオさんの方が長いバージョンだったのでお勉強になりましたが、このお2人、少年の頃からバレエ学校の同級生だったため、「長年の友人」という関係性が出来上がってしまっていて、それ以外の雰囲気を作り出すことが難しいのではないか?という印象でした。

素の関係性以外の雰囲気を演技によって構築できないのは、もちろん2人の責任だと思いますが、私はガニオさんの方が責任が重いと思いました。
ちょっと彼・・・今、行き詰っている感じがするのです。この作品以外でも、迷いがあるというか、彼の目の前に、薄くて半透明だけど明らかに何かしらの「壁」があって、まだそれを乗り越えられていない感じ。
スキップして特急でエトワールに指名され、もう何年もエトワールを張ってきているけど、彼はまだ26歳。若さと責任ゆえの迷いはあって当然ですので、楽しみに成長を待ちたいと思います。

ところで、ガニオさんは、お顔の美しさだけが取り上げられがちですが、肉体も極めて美しいです。
身体がシンメトリーで、胸~肩~腕・胸~首のストレッチが完璧。
可哀想だけど、隣で踊るオファルトさんは見劣りしました・・・


●「アパルトマン」よりグラン・パ・ド・ドゥ
振付: M.エック
音楽: フレッシュ・カルテット
出演: マリ=アニエス・ジロ、イリ・ブベニチェク

舞台美術はドア1つなんですが、ハンマースホイの絵画を思わず連想しちゃうような雰囲気。
ドアを挟んで、中にいる女と、外にいる男(帰宅か訪問かは不明)との関係性を描くもの。
ジロ&ブベニチェクさんという、職人系演技派ダンサーにはぴったりの演目ですね。

最後にガタイのいいジロ女史が、ブベニチェクをひょいとおんぶして退場していく姿(仲直りして旅行にでも出かける?)が楽しかった。


●「スターズ アンド ストライプス」
振付: G.バランシン
音楽: J.P.スーザ
編曲: H.ケイ
出演: ドロテ・ジルベール、マチアス・エイマン

しっかし、この作品、ロシア人たるバランシンが、アメリカでいかにはしゃいでいたか良く分かる作品ですね。

バランシンは、この他にもアメリカ色の強い作品を数多く作っているし、それらの作品には、彼がアメリカという新天地で、アメリカ文化に純粋に触発されて創作したと感じられるものも多いです。
だけど、この「スターズ アンド ストライプス」に限っては、私はアメリカに媚びてる印象を強く受けてます。
アメリカ人やアメリカという国に対してマイナス感情を持っている人は、おそらくかなり辟易するレベルではないかと想像する次第。

ジルベール&エイマンさんは好演していましたが、この作品には、突き抜けたような明るさと、それに裏打ちされた(根拠レスな)自信を持っているダンサーの方が、圧倒的に合う。
一般的なキャラとしては、南北アメリカのダンサーが良いでしょうね。
オペラ座のダンサーが無理しないでもいいよ~、というのが正直なところ。
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by koharu-annex | 2010-08-14 04:18 | バレエ(座長公演)
*今、旅先で感想部分を書いているので、パンフレットが手元にありません。後日、パンフレットを見て、感想部分に加筆するかもしれません。

エトワール・ガラ2010 Aプログラム
2010年7月28日(水)午後7時~ @Bunkamura オーチャードホール

【第1部】

●「シルヴィア」第1幕より
振付: J.ノイマイヤー
音楽: L.ドリーブ
出演: シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

シルヴィア役のシルヴィア(笑。敢えて選択?)がワイルドでした。
むしろじゃじゃ馬、それが悪けりゃアマゾネスの風情ですね。
弓を尋常でない勢いで、ぐぉーっと引いて矢(これはマイムだけどね)を放つの。わ~、何をしとめるおつもり!?と、身構えしてしまいましたよ(笑)。
私はもう少しニンフの雰囲気を出したシルヴィアが好きですが、これもありかな、と。


●ローラン・プティの「カルメン」よりパ・ド・ドゥ
振付: R.プティ
音楽: G.ビゼー
出演: エレオノラ・アバニャート、マチュー・ガニオ

アバニャートさん、健闘していました。
マチューさんは良くも悪くも貴公子然としていているので、女に堕ちていくホセとしては若干物足りないと思う方が確実にいらっしゃるでしょうね。
まあ、今や貴重な存在であるダンスールノーブルを地で行く26歳の彼に、「女に堕ちていく」感まで求めるのは贅沢すぎる話でしょうけども。


●「天井桟敷の人々」よりスカルラッティ・パ・ド・ドゥ
振付: J.マルティネス
音楽: D.スカルラッティ
出演: ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オフォルト

今回のガラ公演で楽しみにしていたものの1つ、「天井桟敷」。
しかし、ガラ用に再構成されたものだったそうです。
そうすると全幕もののイメージからは離れてしまうわけで、ちょっと残念でした。


●「フェリーツェへの手紙」 《世界初演》
振付: J.ブベニチェク
音楽: H.I.F.フォン・ビーバー
出演: バロック・ヴァイオリン: 寺神戸亮、 ダンサー: イリ・ブベニチェク

ヴァイオリニストの寺神戸亮さんが、舞台上(上手手前)で客席の方を向いて演奏されました。
私の鑑賞経験では、こういうタイプの演目(演出?)の場合、演奏者が上手であればあるほど(そしてダンサーが下手であればあるほど)、踊りよりも演奏に観客の目が行ってしまう可能性があります。
踊りの舞台としては、(余計な)危険要素を抱えるわけですわね。
今回は演奏も素晴らしかったですが、負けず劣らずブベニチェクさんの踊りが素晴らしかったので、この危険は完全に杞憂に終わりました。

この作品は、確かカフカが婚約者(しかし結局結婚できず)と交わした手紙をモチーフにしたものだったと記憶していますが、ひりひりとした感情が伝わってくる、切ない作品に仕上がっていました。

ひりひりが最高潮に達した時のブベニチェクさんの踊りが凄まじくて、「ブベニチェク自身が振付けてるからここまで踊れるけど、他の人は踊れないだろうなあ・・・」と思いながら見てました。


●「人魚姫」第1幕より
振付: J.ノイマイヤー
音楽: L.アウアーバッハ
出演: シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

これもかなりひりひり系の作品。
バレエオタクの間ではとても有名な作品です。
振付師のノイマイヤーは現在68歳ですが(たぶん)、現役のコリオグラファーの中では傑出した1人だと思います。
ちなみに、山岸涼子さんの漫画「テレプシコーラ」第2部に出てくるN氏とは、彼のことです。

この作品、おとぎ話の人魚姫のストーリーをなぞるものではなく、作者のアンデルセンの苦悩を表出する道具として「異形の人魚姫」が登場するんですが、その異形の造形っぷりが、まず人の深層部分を突くんですよ・・・。

また、アッツォーニの「異形の人魚姫」への憑依ぶりが怖いの。
はー、いいもの見たけど怖かった。


●ローラン・プティの「アルルの女」よりパ・ド・ドゥ
振付: R.プティ
音楽: G.ビゼー
出演: エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

こちらは、とある魔性の女(でも彼女は舞台上には一切現れない)に取り込まれて、狂って自殺する男の話。
ペッシュが、壊れ始めから最終的に精神が崩壊していく男の様を分かりやすく好演。

男の婚約者で、自分を視界にいれようともしない男とのむなしい結婚式の様子を演じたアバニャートも良かったデス。


【第2部】

●「三銃士」全1幕 《世界初演》
振付・衣装・舞台装置: P.ラコット
音楽: M.ルグラン
出演:
 ミレディー(謎の女): マリ=アニエス・ジロ
 リシュリュー(枢機卿): バンジャマン・ペッシュ
 コンスタンス(侍女): エフウゲーニャ・オプラスツォーワ
 ダルタニヤン: マチアス・エイマン 
 アンヌ王妃: ドロテ・ジルベール
 ルイ13世(国王): マチュー・ガニオ
 三銃士 アトス: イリ・ブベニチェク
      アラミス: ジョシュア・オファルト
      ポルトス: アレクサンドル・リアブコ
 枢機卿銃士: キャスパー・ヘス、鈴木彰紀、平牧仁、大石治人、三好祐輝、野口俊丞
 街の女: オステアー・紗良


このガラのために創作された作品。
皆さん、楽しそうに踊ってました。ありがたいですね。

三銃士の1人オファルト君は、他の2人に比べるとちょっと踊りが見劣りしちゃいますが、このメンバーだと仕方ないか・・・。

エイマンさんは、キャラ的に「ちょっと小生意気そう」なところが、役柄にプラスに働きましたね。

ガニオさんは、この作品の登場人物の中では国王がいいんでしょうけど、地味なんですよね・・・。
アンヌ王妃が浮気してるのでは?と疑心をもってる設定らしいんだけど、そういうところは出せてなかった印象ですね。
そもそもこの作品(振付)自体がそこまで考えて作りこまれてはいないので、ガニオさんにそこまで求める方が無理かもしれないですが。
ガニオさんは、Bプロでも少々思うところがあり、私の中で少し歯がゆい存在になりつつあります。
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by koharu-annex | 2010-08-08 00:42 | バレエ(座長公演)

「バレエの神髄」

ルジマトフのガラ公演「バレエの神髄」に行って来ました。
2010年7月11日(日)午後3時~ @文京シビックホール

ライモンダに出演(都さんの相手として)を予定していたロバート・テューズリーは、ケガのために出演できなくなり、ライモンダにはキエフ・バレエのソリスト、セルギイ・シドルスキーが出演することになりました。こういうことって、公演にはつきものとはいえ・・・残念至極、でござる。


【第1部】

●「眠りの森の美女」よりローズ・アダージョ
音楽: チャイコフスキー
振付: プティパ
出演: ナタリア・ドラムチョワ
    4人の王子: セルギイ・シドルスキー、イーゴリ・ブリチョフ、オレクシイ・コワレンコ、チムール・アスケーロフ

ガラ公演でローズ・アダージョ見るのは、久しぶりで覚えてないくらい。
正直、「ガラでローズ・アダージョってちょっと古臭いよなあ・・・」と、微妙な心持でいたところへ・・・なんと、なんと、バランスを全く心配しなくて良い簡易バージョンの振付でした。
どう簡易だったのか説明してもいんだけど、説明するのもかったるいほど、脱力。

アチチュードのバランスを四人の王子全てで取れるか、そしてそのバランスがどれくらい綺麗なポジションでどれくらいの時間なのか、それを見せないローズ・アダージョなんぞ、ガラでやる意味あるの?

初っ端でこれやられて、ホント、こつまらなかったわ~


●「侍」
音楽: 鼓童
振付: ラブロフスキー
出演: 岩田守弘

岩田さんって、本当に身体能力高いですよねぇ~。
小柄な日本人らしいキレのある踊りで、気持ちいい。
舞扇を持って、時に扇そのもの、時に刀として扱いながら踊っていたのですが、お上手でしたね。
この点は、振り付けのラブロフスキーも褒めないと、ですね。

さて、この公演、私は旦那と行ったんだけど、私のジム友も取引先の社長さんに誘われて来場(彼女はいわば接待で来ていて、バレエを見るのは10年ぶりくらいだとか)。

彼女とインターミッションで会ったとき、この演目について、「江頭かと思った」との衝撃の感想が!

「ええっ!それはあまりに岩田さんに失礼じゃあ・・・」と言いかけたけど、ざっと思い返してみて、はっ!と気付いたのよね。
床にうつぶせになってエビ反りになり、小刻みに震えるシーンが、確かにあった、と。
そして、それが、江頭さんの例の特徴的な動きと、類型的に同じである、と。
(ちなみに上半身は裸で、衣装はピッタリめの細身の黒のパンツでした・・・ここも若干かぶるのよね・・・)

それで、彼女に、「確かに~」と相槌打ったのでした。

あまり鑑賞しない人の感想って、時々思いがけないものがあって、すごく勉強になるというか、目ウロコなことがあるんですよね。

意外な意見が聞けて、良かった。そして、それを全否定しなくて良かった。

鑑賞歴が長くなると、なぜだかどうしても、知らず知らずのうちに近視眼的になりますから。
(そのくせ、自分としては鑑賞の幅が広がったような錯覚に陥りがちなのが、人間の悲しいところですわね。笑)



●「海賊」よりパ・ド・トロワ
音楽: ドリゴ
振付: プティパ、チャブキアーニ
出演: エレーナ・フィリピエワ、セルギイ・シドルスキー、ヴィクトル・イシュク

海賊っていつ見ても楽しくて、私はとても好きな演目です。元気がもらえる気がする。

この3人はとても良かったです。
特にアリを演じたイシュクさんは、跳躍に回転を織り交ぜるのがお好きなようで、見ごたえありました。
完成度という点では、もっと高められると思いますが、海賊という個々のダンサーの能力を比較的自由に出せる振付で、ああいう独創的なことをしてもらえると、見ている側は本当に楽しい。


●「阿修羅」
音楽: 藤舎名生
振付: 岩田守弘
出演: ファルフ・ルジマトフ

音楽が、お能の大鼓の掛け声から始まります。これがいい!
伸びのあるお声で、あぁ、掛け声はこうでなくちゃ、というお声でした。

岩田さん、かなり振付家としての才能があるんじゃないでしょうかね。
ルジマトフの長くしなやかな腕を巧みに見せる振付が随所にありましたし、また、ルジマトフのエキゾチックさを際立たせながらも、能楽のお囃子を基本にした「ザ・にっぽん!」な音楽にしっくり溶け込ませる手腕は見事です。

阿修羅というモチーフの選択がまたいい。
阿修羅は仏教に出てくる鬼神ですが、もともとペルシャ起源であることが指摘されていて、そもそもちょいと生い立ちがエキゾチック。
さらには、日本では、誰しもが思い浮かべるのが興福寺の阿修羅像だけど(こちら参照)、これはシルクロードの香り高い天平文化における代表的な彫刻で、ここからもエキゾチックな要素を感じることができる(日本限定だけどね)。

という次第で、「阿修羅」には異国の香りをまとっているイメージがあって、そこがルジマトフの持ってるオーラとピッタリ合致するわけですわね。

そうすると、ルジマトフも、自分そのまんまで踊ればいいので、まさに水を得た魚。
間の取り方、にらみの利かせ方、そんなところも含めて見事でありました。
ルジマトフの長い腕が、興福寺の阿修羅像をホウフツとさせて、また良いのですよ。
少なくとも、ルジマトフが現役である限り、彼以外は踊れないんじゃないかな~。



●「ディアナとアクティオン」(“エスメラルダ”より)
音楽: プーニ
振付: ワガノワ
出演: ナタリア・ドラムチョワ、岩田守弘

ドラムチョワは悪くないんだけど・・・ドラムチョワと岩田さんの身長が合ってなくて、岩田さんがものすごく大変そうでした。
サポートも必死な印象。
もちろん、岩田さんは、基本的にはボリショイのキャラクターダンサーですから、王子役のように女性をサポートして踊ることが日常じゃないとはいえ、ちょっと組み合わせが悪すぎましたね。

あと、この演目では、ライトが明るくて、岩田さんの頭頂部の薄さが目立って悲しかったです。。。(私、このとき2階席だったので、余計)
まあ、かなりの年齢ですから、当然なんですけど。


●「ライモンダ」よりグラン・パ・ド・ドゥ
音楽: グラズノフ
振付: プティパ
出演: 吉田都、セルギイ・シドルスキー、キエフ・バレエ

キエフのコールドを従えての都さんのライモンダです。

この日は、チケットを取るのが遅くてS席取ったのに、2階席だったんですよ。
2階席から見るとねえ、都さんの「軸」がびっくりするほど、ビシッと定まっているのが見て取れる。
あれはすごい。

まず、脚が揺ぎ無く地面に向っていてポワントが地面に吸い付くようにきっちり安定している。腰から上は、空に向かってただひたすら真っ直ぐにぐーんと引き上げられている。これらの2つのベクトルが、矢印付きで、都さんの身体に重なって見えましたよ!しかも、そのベクトルが太くて安定しているの。
これがダンサーの基本とはいえ、ここまで出来てる人って本当に少ない。
これが、都さんの身体を貫いて、都さんの踊りを支えているのだわ~と、感動しましたね。

あのベクトルは2階席だから良く分かったんだな~。1階席じゃここまで分からないと思う。
時々こういうことがあるので、たまにチケット購入が遅れて2階席になるのも私はOKだったりします(笑)。

あと、特筆すべきは、都さんの腕のポーズの美しさですね。
ライモンダには特徴的な腕のポーズがあります。
「ライモンダ」で画像検索をかけて見てもらうのが一番早いかもしれませんが、腕を挙げて手の平を反転させて頭に向け、略三角形の空間を作るんですよ。

これ、単純なように見えて、綺麗に作るには難しいんです(ちょいと皆様、やってみて下さいまし。上で作ろうと思うと、結構、キツイはずですよ)。

事実、キエフのコールドの皆様は、体型的には腕が長くて恵まれているにもかかわらず、皆さんそれぞれ形がバラバラ、同じ人でも時に応じてマチマチ、安定して美しい形が作れている人は殆どいなかった。

しかし、都さんは!
腕が長い方じゃないので、あのポーズを美しく取るのはキツイはずなのに、舞台上のダンサーの中で最も美しい略三角形を、安定していつも一瞬で作り上げていました。
感服。


【第2部】

「シェヘラザード」
音楽: リムスキー=コルサコフ
振付: フォーキン
出演: エレーナ・フィリピエワ、ファルフ・ルジマトフ、オレグ・トカリ、ルスラン・ベンツィアノフ、ヴォロディミール・チュプリン、キエフ・バレエ

言ってみれば、「単にエロいだけ」、な演目でしかないんだけど。
魅力のある演目なんですよね。
特にフィリピエワの柔軟性のある体と、ルジマトフ(もちろん金の奴隷役だ)の発散する異常なオーラを見ただけで、元は取れた感じ(笑)。
よく考えたら、特に金の奴隷に関しては、取り立てて高度な踊りはないんですけどね。
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by koharu-annex | 2010-07-29 01:29 | バレエ(座長公演)
2010年5月22日(土)午後3時 @東京文化会館
マラーホフの贈り物 プログラムB

Aプロの記事でも書きましたが、当初出演予定だったニーナ・カプツォーワとイワン・ワシリーエフが、所属カンパニーであるボリショイの急なリハーサルのために来日できなくなったため、出演者と演目が一部変更しています。

詳細にいうと、ボリショイでは6月4日にプティ振付の「若者と死」を初演する予定があり、この「マラーホフの贈り物」の公演期間中に、プティがモスクワに出向き、急遽リハーサルが行われることになったそうで、この作品に出演を予定しているワシリーエフがモスクワに留まらなければならず、カプツォーワとともに来日が不可能となったとのこと。
ちなみに、「若者と死」は、映画「ホワイト・ナイツ」の冒頭でバリシニコフが踊ってるやつです。


【第1部】
●「カラヴァッジオ」よりパ・ド・ドゥ(第1幕より)
振付:マウロ・ビゴンゼッティ
音楽:ブルーノ・モレッティ(クロウディオ・モンテヴェルディより)
出演:ポリーナ・セミオノワ、ウラジーミル・マラーホフ

Aプロでも書いたけど、「どの絵か分からん」です。
この振付と衣装だと露骨に、ポリーナの筋肉が増えてるのがよく分かります(笑)。

●「ディアナとアクティオン」
振付:アグリッピーナ・ワガノワ
音楽:チェーザレ・プーニ
出演:ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル

ヤーナさん、メリハリ、アクセント、タメ、全て修行の必要アリですね。
今のままじゃ、「よく出来たコンクールの出場者」を見ているようです。
頑張ってくらはい。
マタズラカルは技術は高いですが、1人じゃどうしようもないですな。
音楽と2人の踊りの間に距離ができて、単独で響きかけてましたよ。

●「カジミールの色」
振付:エリサ・カリッロ・カブレラ
音楽:ドミトリー・ショスタコーヴィチ
出演:エリサ・カリッロ・カブレラ、ミハイル・カニスキン

ごめん。眠かった。
演目のせいか体調のせいか、それは不明。

●「モノ・リサ」
振付:イツィク・ガリリ
音楽:トーマス・ヘフス
出演:マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメイカー

タイプライターの音を模した、リズムだけでできた楽曲。

アイシュヴァルトは、体も小柄、顔も小さく、手足も長くはない。
ラドメイカーとは、身体的な大きさの違いから来るムーブメントの違いが、この演目では目立ってしまって、少々バランスが悪い。
しかも、アイシュヴァルトとラドメイカーとでは、この楽曲のリズムに対する感覚にちょっと違いがあるようで、2人の動きが微妙にずれることがある。
演劇的な演目では、バッチリなペアなんだけどな。不思議なもんです。

素敵な演目なので、この演目についてパーフェクトなデュオで観てみたい。

●「瀕死の白鳥」(2バージョン)
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:カミーユ・サン=サーンス
出演:ベアトリス・クノップ

振付:マウロ・デ・キャンディア
音楽:カミーユ・サン=サーンス
出演:ウラジーミル・マラーホフ

実は、プログラムには、ベアトリスの「瀕死の白鳥」しか書かれていない。
彼女のフォーキンの踊りは、「こないだのマラーホフのが最高だったからな~。見劣りするよな~」などと考えているうちに終了。
「まー、拍手しとくかー。合格点だったしな~」と思って拍手しようとしたら、サン=サーンスの「白鳥」が再び始まって・・・

カーテンが再び開いたら、スポットライトの中にマラーホフが!
そして、Aプロのキャンディア振付の「瀕死の白鳥」を踊っている!!!

むきゃーーーーー!!!嬉しい~~~~~~!!!!

ちゃんと目に焼き付けなくちゃ!
どうしよ、どうしよ、オペラグラスで細部を見るべき?
それとも普通に全体を見るべき?
あーもー、どうすればいいの!?

と、あたふたしているうちに、終わってしまいました・・・。あぁ・・・。

しかし。
拍手とブラボーは、特に多いとは感じられず。。。
マラーホフのサービス精神で、プログラムになかった演目を踊ってくれたのに。
なんだか申し訳ないような気持ちになったのでした。

わたしゃ、すぐ近くで鑑賞していた東京バレエ団の高岸さんに、思わず「マラーホフに白鳥をありがとうございました、と伝えて下さい。」と言いたい気持ちに駆られたのですが、結局言えずじまい。

【第2部】
「ラ・バヤデール」より“影の王国”
振付:マリウス・プティパ
音楽:レオン・ミンクス
出演:ポリーナ・セミオノワ、ウラジーミル・マラーホフ
   第1ヴァリエーション:ヤーナ・サレンコ
   第2ヴァリエーション:乾友子
   第3ヴァリエーション:エリッサ・カリッロ・カブレラ
  ほか東京バレエ団

群舞はさすがの仕上がり。さすがアンサンブルの東京バレエ団ですな。
ポリーナの古典を全幕でちゃんと見たいと思いました。

【第3部】
●「ロミオとシュリエット」より第1幕“バルコニーのパ・ド・ドゥ”
振付:ジョン・クランコ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
出演:マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメイカー

クランコ版は、マクミラン版・ノイマイヤー版・ヌレエフ版よりもずっと古いのですが、最も初々しいかも、と思いました。
ロミオに抱かれて、階段に腰かけさせてもらうジュリエットが可愛い。
アイシュヴァルトとラドメイカーは、こういうドラマチックな演目ではぴったりのペアです。

●「カラヴァッジオ」よりパ・ド・ドゥ(第2幕より)
振付:マウロ・ビゴンゼッティ
音楽:ブルーノ・モレッティ(クロウディオ・モンテヴェルディより)
出演:ベアトリス・クノップ、レオナルド・ヤコヴィーナ

●「レ・ブルジョワ」
振付:ベン・ファン・コーウェンベルグ
音楽:ジャック・ブレル
出演:ディヌ・マタズラカル

私は、技術が高いダンサーが踊る「酔っ払い」振付が大好き(例えば、「マノン」の中のレスコーの踊りとか)。
マタズラカルは、シャンソンの声に負けていないばかりか、フランス語の響きに良くあった素敵な踊りでした。

●「ファンファーレ LX」
振付:ダグラス・リー
音楽:マイケル・ナイマン
出演:エリサ・カリッロ・カブレラ、ミハイル・カニスキン

現代的でカッコイイ振付です。
男性も赤いレオタードを着ていました。別にどうでもいいですが。

●「ラクリモーサ」
振付:エドワード・スターリー
音楽:ヴォルフガング・A.モーツァルト
出演:ウラジーミル・マラーホフ

音楽が・・・安藤選手の「レクイエム」です。
マラーホフが踊ってくれても、今年、この曲ではどうしても安藤選手のお顔が浮かぶのでした・・・。
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by koharu-annex | 2010-06-09 22:33 | バレエ(座長公演)
2010年5月19日(水)午後6時30分 @東京文化会館
マラーホフの贈り物 プログラムA

当初出演予定だったニーナ・カプツォーワとイワン・ワシリーエフが、所属カンパニーであるボリショイの急なリハーサルのために来日できなくなったため(プティ…相変わらずいろんなところでやってくれるぜ)、出演者と演目が一部変更しています。
また、マラーホフの強い希望により、ソロ演目が「瀕死の白鳥」に変更になっています。

【第1部】
●「ザ・グラン・パ・ド・ドゥ」
振付:クリスティアン・シュブック
音楽:ジョアッキーノ・ロッシーニ
出演:エリサ・カリッロ・カブレラ、ミハイル・カニスキン

眼鏡にハンドバッグをかけた女性ダンサーと、男性ダンサーがPDDを踊るコミカルな作品。
最後に女性がリフトされながら、三方に広がるおもちゃの笛をピーっと吹いて終わるところが楽しい。
ガラ公演の導入にぴったりな演目ですな。

●「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
出演:ポリーナ・セミオノワ、ウラジーミル・マラーホフ

バランシンの振付って、本当に女性ダンサーが綺麗に見える・・・ということは差し置いても、ポリーナが本当に美しかった。
とても若い時期にマラーホフに見初められ(笑)、彼のミューズであり続けるポリーナ。
そのために凄まじい努力を続けていることは、ますます筋肉質になっていく身体を見れば一目瞭然。
しかも、すっかり女王の風格が出てきました。

マラーホフは誰に対してもサポートがとても上手ですが、ポリーナとのときは、特に、彼女をとても大切に扱っているような印象を受けます。

●「ボリショイに捧ぐ」
振付:ジョン・クランコ
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
出演:マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメイカー

短い作品。
ボリショイに敬意を込めた、ボリショイらしいアクロバティックなリフトを多用・・・とパンフレットには書いてありましたが、私は、クランコらしいリフトだと思いました(途中でどんどん姿勢が変わっていく。今回は、途中1回ひやりとした場面がありました)。

ラドメイカーは、肩と腕がとても大きくて異様に長い。Mサイズの体に、Lサイズの腕がつけられている感じ。
実は一昨年のシュツットガルトバレエ団の公演の時から、思っていたのでした。
気付いちゃうと、「なんか、こういう手の長いお猿さんっていたよな~」とちょっと頭がぐるぐるしちゃうんですけど、腕が長いと表現手段の幅がぐっと広がるので、ダンサーにとって非常に有利ですよね。
私は、彼の腕の表現をフルに使ったドラマチックな演技が、とても好きです。

●「アレクサンダー大王」
振付:ロナルド・ザコヴィッチ
音楽:ハンス・ジマー
出演:エリッサ・カリッロ・カブレラ、レオナルド・ヤコヴィーナ

濃厚なラブダンス。
下品にならない限界点をちゃんと意識して踊っているとお見受けいたしました。

今はPDDだけだけど、そのうち全幕を発表するそうです。楽しみ。

●「コッペリア」よりパ・ド・ドゥ
振付:アルチュール・サン=レオン
音楽:レオ・ドリーブ
出演:ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル

ヤーナさんは・・・バランスを取るところは悪くないんですけど、動きに全体的に元気がないですね。
まだキャリアが浅いですから、このメンバーの中だと慎重に踊りすぎるのかしら。


【第2部】
「仮面舞踏会」より“四季”
振付:ウラジーミル・マラーホフ
音楽:ジュゼッペ・ヴェルディ
出演;
 冬: 上野水香、長瀬直義、宮本祐宜、梅澤紘貴、柄本弾
 春: 吉岡美佳、柄本武尊
 夏: ポリーナ・セミオノワ、ウラジーミル・マラーホフ
 秋: 田中結子、松下裕次
ほか東京バレエ団

マラーホフの全幕バレエからの抜粋。全体的に衣装がよかったデス。

水香さんは、やっぱり音楽性が独特ですから、集団で踊るよりもソロがいいですね。
一回足が床にひっかかって、ひやっとしました。

冬の男性4人の踊りは、振付がいかにもマラーホフな振付でした(マラーホフが好きな、彼自身がとても綺麗に見える姿勢が随所に盛り込まれている)。
もう少し揃っていたら、良かったですね。まあ、複数の男性ダンサーの踊りを揃えるって、恐ろしく難しいですが。

吉岡さんの頭につけている花輪が可愛かった。
相手の柄本さんが半獣神の役なのですが、モコモコの毛皮を腰から足にかけてつけていて、笑ってしまいました(このブログの過去記事のコメント欄で、ニジンスキーの「牧神の午後」が半獣神なのに、なんで羊じゃなくて牛なのかという点について、ちょいと盛り上がったことがあったので)。

田中さんは、あまり脚を高く上げない上品な踊りでした。
古臭いという人がいるとは思うけど、私はこれはこれで好き。
逆に、ギエム以降、皆、脚上げ過ぎるようになったという批判も耳にしますが、場合によりけり・ダンサーによりけり、で良いのではなないでしょうか。


【第3部】
●「カラヴァッジオ」よりパ・ド・ドゥ(第2幕より)
振付:マウロ・ビゴンゼッティ
音楽:ブルーノ・モレッティ(クロウディオ・モンテヴェルディより)
出演:ウラジーミル・マラーホフ、レオナルド・ヤコヴィーナ

男性デュオによる踊り。
「カラヴァッジオ」は、既にNHKでテレビ放映されているので、一応、録画を見直していきました。

ただ、この作品、難しいんですよね。
カファヴァッジオの人生を、演劇チックに具体的に振付けているのではなく、彼の描いた絵でつないでいくという趣向なんです。かなり抽象的。

テレビ放映のときはベルリンでのフルだったので、どの絵について踊っているのか、ちゃんとその「絵」がバックに掲げてあったんですよ。
が、今回は、それがない。
予習していったとはいえ、そこまで覚えていなくて、「えーと、この踊りは見た記憶はありますよ~。・・・何の絵だっけ~?」という有様。

踊り自体は、非常に高度なパートナーシップを必要とする振付で、見ごたえはありました。


●「ゼンツァーノの花祭り」
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:エドヴァルド・ヘルステッド
出演:ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル

ヤーナさん、もっと元気出しましょう、ということで。

●「椿姫」より第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
出演:マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメイカー

多くの方にとって、今回の白眉だったのではないでしょうか。
最も大きな拍手とブラボーをもらっていました。
私もincredibleだと思いました。(が、私にとっての白眉はラストの白鳥。)

マルグリット役のアイシュヴァルトが、マントをはおって中央に立つ登場シーンから、既に情感あふれてました。
彼女は小柄だけど、技術も高くて演技派でもある、とても良いダンサーですね。
ラドメイカーの大きく長い腕の動きが、振付にとても合っていて、演技がダイナミックでした。

このPDDは、マルグリットとアルマンが、それまでの確執を乗り越えて激情に身をゆだねて愛を確認するシーンですが(もどかしげに、マルグリットのドレスを脱がせる振付まである)、アイシュヴァルトとラドメイカー2人の演技は胸を熱くするものがありました。

●「トランスパレンテ」
振付:ロナルド・ザコヴィッチ
音楽:アルシャク・ガルミヤン、マリーザ
出演:ベアトリス・クノップ、ミハイル・カニスキン(レオナルド・ヤコヴィーナから変更)

女性ボーカル入りの曲。
振付のザコヴィッチも、音楽のガルミヤンも、ベルリン国立バレエ団のダンサーなのだとか。
ポルトガルの民族音楽、ファドの歌姫マリーザの楽曲にフューチャーしたものだとか。

とても良かった。
が、すごく短い作品だったので、もう少し見たかったな。

●「瀕死の白鳥」
振付:マウロ・デ・キャンディア
音楽:カミーユ・サン=サーンス
出演:ウラジーミル・マラーホフ

私の白眉はこれ。(パブロワが踊って有名なフォーキンのものではありません。)
キャンディアの振付は、とーっても難しい。
パンフレットによると、キャンディアは、イタリアのアルテ&バレットの芸術監督を務めながら、様々なカンパニーに作品を提供している新進気鋭の振付家だそうです。

ご存知の通り、サンサーンスの「動物の謝肉祭」の「白鳥」の音楽なんですが。
この曲は、チェロ1台、ピアノ2台の、合計3台の楽器で演奏されます。
  チェロは、水の上の白鳥の動きを表し(これが主旋律)、
  ピアノ1(細かい音形が連続)は、水の下の白鳥の水かきの動きを表し、
  ピアノ2(ゆったりとした音形の連続)は、水面の動きを表す、
とされています。

有名なフォーキンの振付は、このうちチェロとピアノ1、つまり白鳥の動きにフォーカスした振付です。
しかも、脚のパドブレが水下の水かきの動きを表し、上半身が水上の白鳥の動きを表す、というかなり具象的な振付。
もちろん、これに死に行く白鳥の最後のきらめきみたいな情感をのっけて踊るわけですが。

今回マラーホフが踊ったキャンディアの振付は、ピアノ2の水面の動きをも取り込んで、全体をちょっと抽象化しつつ、時折、見ていて「皆さん、はい、注目。この状況のとき、白鳥はこんな動きしますよね~」と説明したくなるような、具体的な味付け(翼をはためかせるところや、ククーッ、カクンッ…みたいな白鳥の首の動きを、腕などで表す)が施されている。
これが絶妙なバランス。

この振付を真正面から踊って賞賛を受けられるダンサーとして、マラーホフは筆頭に上がると思う。
彼のエンターティナー性、お茶目なところもあるダンス大好きキャラクター、そして、それを単なる「ギャグ」にしない超絶技巧を支える技術の圧倒的高さ。
これらがあるために、この演目における彼の演技は光り輝いてる。
マラーホフ自身が、この演目をやることを強く意向した、というのは頷けます。

本当に、見ていて楽しかった。
また、マラーホフの演じた「瀕死の白鳥が見せる、最後の生の煌き」が、とっても美しかった。

私は、嬉しさの笑いをこらえるのに必死で、声を殺してひーひー言ってましたよ。
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by koharu-annex | 2010-06-06 10:58 | バレエ(座長公演)