もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

GPF 男子雑感

<一旦アップしていた今回の記事、推敲のため一度下げさせて頂いのたですが、思いがけず深く発展してしまいました。そのため、羽生君に関する考察の多くは、別途、考察記事(仮題「勝負師、表現者、そして地獄の釜」)として改めてアップすることにしました。なので、今回は短く修正しました。>

ようやくファイナルの雑感までたどり着けました・・・。
男子シングルの出場者は日本3人、中国1人、ロシア1人、カナダ1人ですが、中味を見ればアジア系が5人ですね。わお。


●総合1位 羽生君(18歳)/日本/SP=パリの散歩道(振付:ジェフリー・バトル)、FS=ニーノ・ロータ 映画『ロミオとジュリエット』より(振付:デビッド・ウィルソン)

19歳直前の羽生君、やったわね。
彼はインタビューでもいろいろお話されますけれど、彼が語ろうとしない(敢えて、ではなくご自分で気付いてないか、気付いてても表現できないのかもしれない)、彼の中にある、一部の勝負師のみが持っている「鋭い刺」が、今回ほど顕著になった演技は無かったと思います。(羽生君がシニアデビューした年に、羽生君のことを評して「日本人には珍しく牙を持ってる選手」とコメント下さった方がいらっしゃったのだけど、ホント言い得て妙だと思うわ!)

もう鬼籍に入られた有名な棋士さん(お名前失念)が概要、「何十年もこの世界で勝負をしてきた相手に対し、わずか数年の経歴であっても、自分は絶対に勝てると思えなくては駄目だ。」と発言されていました。こういうことが出来る人って、ぬるい一般社会に生きてる人間からすれば不敵で生意気な奴と思われがちですが、一種、不思議な「偉さ」も持ってる。例えばサッカー日本代表の本田選手なんかそういう類の人だと思う。

羽生君は、GPS2戦では王者チャンさんを前にして、若気と血気に逸った頃の宮本武蔵っていうか、「ちょっと落ち着きなさい」って言いたくなる感じだった。そういう感覚もあって、中国杯の時に彼に「男になれや!」と書いたのですが(こちら)、彼は短期間かつドラスティックに「勝負の世界」の狭い階段を駆け上がっていきました。

羽生君は、今、これまでよりも圧倒的に研ぎ澄まされた「勝負の世界」にいる。これは、彼の資質(鋭い刺を持つ勝負師)を考えると、成長過程で必ず通るものだと思いますし、特にこの五輪シーズンにおいては、まさしく正しいことであり応援すべきことだと思います。


●総合2位 チャンさん(22歳)/カナダ/SP=エレジー(振付:ジェフリー・バトル)、FS=ビバルディ 「四季」より(振付:デヴィッド・ウィルソン)

あれ、チャンさんって町田さんよりも年下なんだ?と、今更ながら思ってしまいました。存在感でかいな、チャンさん。存在感を感じると自動的に「年上」に分類しようとする私の脳みそもどうかと思うが。

SP、冒頭なんだか顔色が悪いわ~と思ったら、今季初めての精彩を欠いた演技。羽生君の世界最高得点にも影響されたのかもしれませんが、そんな中、高得点を望める4-3はちゃんと降りてくるあたり、立派だと思う(ちょっとつまり気味にも感じたけどGOEは2.29だった…で結局16.69)。

FSでも身体が重そうでしたが、全てのジャンプをまとめてきました。最終的には点数を争うので、こういう勝負強さを持ってるとホント強い。ただ、チャンさんの存在感って、ここのところ一種圧倒的な大きさになっていたので、まだほんの幽けきものではあるけど、そこはかとない諸行無常の響きを感じました。

チャンさんって、演技の時に社交ダンスのホールドをしているような姿勢を取るでしょう?しかも今季、ちょっと身体が逞しくなって、筋肉がついている気がするんです。そんなこんなで反射的にアイスダンスを思い浮かべてしまうのでしょうか。私の脳みそはパートナーの踊りや動きを求めてしまうようで、チャンさんだけが演技しているのが(いや、それが当然なんですけど)、例年よりも更に物足りなく思えてしまうんですよ。ああ、私の脳みそ・・・。


●総合3位 信ちゃん(26歳)/日本/SP=コットンクラブ(振付:デビッド・ウィルソン)、FS=ウィリアム・テル序曲(振付:ローリー・ニコル)、EX=映画『ラストサムライ』より

今回出場した男子シングルの中では最年長。それでもSPの演技前には緊張で脚が震えたとか。大きな国際大会の大変さを物語ってます。

SP、緊張のせいだと思いますが、動きが小さくまとまり過ぎた印象です。冒頭の4-3予定で転倒したことも影響したかも。NHK杯で(完璧で加点もかなりもらえると本田さんが太鼓判を押したにも拘わらず)、回転不足を取られたことに照らしても、ここが決まるとその後の演技も随分ノビノビ出来たんじゃないかと、ちょっと残念。NHK杯の時より、少し視線が下がっていることも多いように感じられて、尚更そう思う。

FS、終盤少し「脚にきてるかな」と思ったんですが、キスクラまで脚を軽く引きずっていたような・・・。大丈夫でしょうかね?

SPでもFSでも4回転で転倒してしまったけれども、ジャンプ着氷時の膝と足首の顕著な柔らかさは、いつ見ても気持ちが良い。これが錆び付いてないのに引退とは・・・少しもったいない気もしますね。


●総合4位 町田君(23歳)/日本/SP=エデンの東(振付:フィリップ・ミルズ)、FS=火の鳥(振付:フィリップ・ミルズ)、EX=ドラマ『白夜行』より(振付:町田樹)

SP、まさかまさかの最下位スタート。
彼、GPSだけでなく西日本大会(?)にも出場していたそうで、実はとても過密スケジュールなのですってね。直前のロシア大会にも出ていますし、そりゃ疲労もたまるわ。加えて、直前に羽生君が99.84という世界最高点を出したことも影響しましたか。

それにしても点数が低い(TES20点台!)・・・と思ったら(点数が出た時の会場のざわめきも大きかった)、後半の3‐2の後ろのジャンプが2Tと認定されて(ご本人は1回転だと思ったそう)、冒頭の2T(4回転の予定だったもの)とダブったということで、3‐2そのものが無効要素(Invalid element)にされてしまったのですね。恐ろしや。

昨季もGPFから失速が始まったので、ちょっとこの流れは心配。あの「ティムシェル」って言葉が、町田君の心の中で揺らいでなければいいのだけどね。

町田君は、ちょっと昔の信ちゃんと似てて、「全ての人間は幸せになることができる。『全て』には自分も含まれる」っていう真理を信じることができていない部分が確実にある、って外から分かるもの。いや、もちろん難しいのよ、この真理を自分のこととして信じるのは・・・私も無理だもの(でも理論的に考えると、これって文字通り真理なんだよね。苦笑)。だから、ここでの問題は、「外から分かる」くらいに、信じることができてないってことよ。「僕はダメだと思う」が漂っちゃうのは、何が理由であろうが、まずい。

全日本では、「僕は…」が漂わないレベルまで気持ちを引き上げて、町田君特有の、未だ荒削りとも言える動作の中に確実に感じられる詩人の神経と、陰にずっと籠めていたものを解き放つような卓抜した爆発力(?)を両立した演技を見せられることを祈っています。

FSは、体と心の疲労を乗り越え、涙、涙の見事な飛翔。酔っぱらい解説の佐野さんも泣かせた演技は、胸を打つものがありました。今季のSPとFSの組み合わせは、ご本人の言う通り最高の組み合わせかもしれません。


●総合5位 コフトン君(18歳)/ロシア/SP=フラメンコ、FS=チャイコフスキー ピアノ協奏曲第1番

今季大躍進の彼ですが、こういう大会ではやはり若さが出てしまったということでしょうか。SPでもFSでも、気合いは感じるんだけど空回り。特にSPは、直前のロシア大会で高得点を出したばかりだったので、変に気負っちゃった部分もあるのかな。

歯車が狂ったせいか、SPでもFSでも、ステップやつなぎなどでオフバランスがあまり見られなかったように感じました(あっても小さく時間が短い)。トップ選手のステップやつなぎではオフバランスが多用されるので、コフトンさんのように棒立ちのようになってしまうと、短所として目立ってしまった印象。

GPSではスピンやジャンプの細い軸を基礎にした速い回転が印象的だったのに、それも影を潜めていました。こういうときって長所を長所として出すのも難しくなりますね。でも、今回の空回りが彼の血肉になるはず。


●総合6位 ハンヤン君(17歳)/中国/SP=マイナーワルツ/ヴァイパーズ・ドラッグ(振付:ローリー・ニコル)、FS=グルメ・ワルツ・タルタール/美しき青きドナウ(振付:ローリー・ニコル)

今回の6人の中で最も若い彼。さすがに雰囲気にのまれてしまったよう。動きが小さく、ちょっとオドオドしているとすら感じるほど。

SP,この演目の大きな魅力は、冒頭から時折ポイント的に入る小芝居的な仕草・動作。まるで刑事ドラマの殺人現場の白いチョークで書かれた人型のような、ちょっと硬い不器用な形状で行われるのよね。でも、俊敏かつ軽快に動くの(笑)。もちろん、イメージ的には拳銃かくし持ってます(笑)。これがノリノリで見られると楽しいのですけどね。

FSは、どこかで書いたけど、やはりワルツの向こう側に血溜りが見えると言うか、不気味でブラックなイメージがある。あの衣装の赤は絶対に血の色だね!と、一人、確信しながら見ていました。(外れててもご愛嬌ってことで夜露死苦!←ヨロシク。念のため。)

丸く背中をかがめる動作に哀愁が漂うハードボイルドなイメージの彼ですが、実は繊細な詩人の魂も持っているように見えます。最下位でご本人はショックかもしれませんが、今後のご活躍を本当に楽しみにしています。
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by Koharu-annex | 2013-12-21 02:02 | 2013-2014 フィギュアスケート