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もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

アメリカ大会 男子FS雑感

<追記>10月22日に青字部分を追記しました。

FSについても、BSの録画を見た後、追記する予定です。
それにしても、地上波放送ってなんでこんなに引っ張りまくるのか、理解を超えるよなあ・・・。
こんなんだからテレビ離れって起こるんじゃないの?テレビ制作の現場でもこういう見解は当然出ているはずなのに(出てないんだったら本当の意味で終わってる)、どうして改善されないのかなあ。

●総合1位 町田君/日本/火の鳥(振付:フィリップ・ミルズ)
SPは史上6位の高得点だったそうで、嬉しい限りです。アンソニー・リュウコーチ(温かいけど、ちょっと淡々とした冷静な感じで結構好き)も、さすがに嬉しさで破顔されていて妙に胸が熱くなりました。

FSは昨季からの持ち越しで、衣装も持ち越し。だからでしょうか、昨シーズンよりも肩の力みがなくなっています(と言いつつ、昨シーズンの妙に力の入った火の鳥も結構好きだったんですけど。笑)。

音楽が身体の中に入っていることが動きから分かるので、かなり安心して見ていました。ただ、去年よりも少し振付が簡単になっている気がする・・・見比べてないので正確なところは分かりませんが。いずれにしろ、余裕があってムーブメントもこなれてきてますので、複数あったジャンプ等の技術的なミスをケアしていけば、表現的にも、1ステップ上にあがりそうな気がしますね。楽しみです。

昨年には見られなかった、強気な発言も頼もしい限り。(実際は強気というより、自分を鼓舞して突き進むために敢えて頑張って言い聞かせるように言ってるんだと思う。一種の自己啓発っていうか。)

町田君が優勝を決めた後、いろんなニュースをネットで見ていたのですが、その中にこんな記事が。記者さん「不思議キャラ」ってちょっと・・・と思ったけど、そこはまあ捨ておきましょう。4回転について「高校2年のとき、メキシコのピラミッドの頂上でアルミみたいなものに触れたら完成した」とのこと。そして、このピラミッドはテオティワカンの太陽のピラミッドで、パワースポットとして有名なのだとか。

そうだったの?パワースポット?!ええっ!?
私、以前、テオティワカンに行ったことがあるのですけど(こちら参照)、何のご利益もなかったけど・・・。物売りにふっかけられないようにって、スペイン出身の旦那の友人に注意されまくってて、俗世感どっぷりだったからパワーもらえなかったのかなあ・・・。あ、もしかして、「アルミみたいなもの」(なんなの、それ?私は見てないと思う)がポイントなの?

ところで、町田君ですが・・・。優勝おめでとう!って気持ちの高ぶりが一段落したので、敢えてここで書いておこう。
町田君は、頭でっかち過ぎるところがあります。もちろん、彼の熱い気持ちが、温度をともなってテレビのこっち側の人間にまで伝わるパワーはある。でも、表現においても、積み木のように理屈と解釈を積み上げて行っているところがある。優勝後に彼がヘーゲルの美学講義を愛読しているとの報道に接しましたが、なるほどヘーゲルっぽい(同時に私は、ヘーゲルかぁ・・・あちゃ~と思った)。

でも、もっと普遍的に多くの人に感銘を与える表現というのは、単純に言えば、もっと不完全な形あるいは捉えどころのない形をした、抒情的なものだと私は思う。結局、理屈と解釈という頭で作り上げたものを、その限度で(例えばロボットのように)体現してみても、そこは鑑賞者サイドにはなかなか伝わらない。実際、彼の演技から「熱さ」や「強い思い」しか伝わらなかったって人もいるかもしれない。そしてそういう人の中には、おそらく「暑苦しい」と感じる人もいると思う。もしかすると、そこに技巧的な匂いすら感じる人もいるかもしれない。

なので、ここまで律儀に理屈と解釈を積み上げてきたなら、どこかの時点で、それを忘れて音楽に裸で向き合うと良いのではないでしょうか。つまりは、理屈による解釈の先に行って欲しい、と申し上げたい。たぶん、そういう次元に立った時、町田さんはヘーゲルを本棚にしまっていると、そう思います。


●総合2位 リッポン君/米国/牧神の午後への前奏曲(振付:シンディ・スチュアート)
今大会のように調子の良いリッポン君を見たのは、本当に久しぶり。リッポンルッツがこんなに綺麗に決まるのを見るのは、いつぶりか分からないくらい。嬉しいことです。

SPでの成功が心の余裕を生みましたかね、FSではSPよりもずっと音楽に向き合っていると思いました。彼は本来的にはこういうタイプですよね。牧神といえばコストナーさんのものがまだ印象に残ってますが、リッポン君のものは、もっと中に出てくる牧神にフィーチャーした感じですかね。

最初のかなり痛そうな転倒の後、牧神の典型的なポーズ(@バレエ)が出てくるのですが、これは表現者を横向きに捉えないと良く分からないもの。その時ちょうどカメラは彼を後方から捉えていて、「あ、あれやってるけど見にくい!」と思った途端、慌てて横向きの彼を捉えているカメラにチェンジされました。編集、ナイスー!!

●総合3位 アーロン君/米国/カルメン(モダンアレンジ)(振付:パスカーレ・カメレンゴ)
(地上波放映なし)
おお、何だかズタボロ・ホセ君(こちら参照)を思わせるカルメンで、ちょっと期待しながら見ていました。

私はカルメンの音楽については聴くだけで「あの場面」と思い出すほど記憶に刻んでないので、今ここで特定して書くことはできませんが、メジャー楽曲だけでなく、様々な場面から音楽が選択され、色彩豊かな楽曲群となっています。

高難度のジャンプが沢山盛り込まれているためか、後半はかなり疲れて身体が重く、素でズタボロ・ホセ君に近づいていましたが、これはできれば避けたい事態なんでしょね。

●総合4位 高橋さん/日本/ビートルズメドレー(振付:ローリー・ニコル)
演技点はまあちゃんと出ていたので、まずは一安心。
しっかし、ジャンプって本当に難しいんだな。しかも全体に散りばめられているので、複数のミスがあると何度も途中で途切れる印象になってしまう。ただ、メドレーであることと、1つの楽曲の中でも空白地帯が存在するアレンジであることから、通しで1曲だった場合よりも、途切れまくった感じにならない気がする。そこはもしかしてラッキー?

彼がこの演目で表現したいものって、温かいですね。ふわりと温かい。冒頭、ただ、佇んでいるだけの姿からも、それが伝わってくる。失敗ジャンプや流れてしまったスピンなどがこんなにありながら、表現の方向性はもちろん表現そのものも見失わない彼は、やっぱり立派だと思う。

ただ、それだけにこの技術の不安定さは、大きな不安要素ですね。
まあ、これまで何度も技術的な危機がありながら何度も克服してきたので(以前にも「表現は全く問題ないのだから、技術を何とかした方がいいと思うぞ」と書いたら、「(これこれこういう理由でこうなっているだけだから)たぶん大丈夫」とコメントが入り、実際大丈夫だったことがあった)、今シーズンも、少なくとも全日本までには調整してくるとは思っていますが。

録画を見直してて思ったのですが、高橋さんって、動作にしてもムーブメントにしても、現役選手の中では随一の洗練さを誇りますね。どの動きも、ここまで美しい人っていない。意識しているところはもちろん、たゆまぬ努力と何よりこの人のセンスと表現の地力により、無意識下においてすら、とても美しいです。どこで「一時停止」ボタンを押しても、破綻がなく美しいのは、この人しかいないと思う(他の選手で「破綻してるけど美しい」ってのはある)。

●総合5位 ジェイソン・ブラウン/米国/リバーダンスより『Reel Around the Sun』(振付:ローヒーン・ワード)
おお、リバーダンスだから緑の衣装だったのね(リバーダンスはアイリッシュダンス)。ガッテン、ガッテン、ガッテン。

ジャンプにミスが散見されましたが、柔軟性のある美しいスピンはとても見応えありました。
上半身は良く動いていますが・・・全体的に見ると上半身にウェイトがあり過ぎるかな。特に今回の演目はアイリッシュダンスなので、足をもっと生かす動き(願わくば最高速度で動かす振付)が入って欲しいと思いました。まあ、体力的な点から見て難しいでしょうから、シニア1年生の彼に注文すべき所ではないと思いますが。

●総合6位 小塚君/日本/奏とロンド・カプリチオーソ(振付:マリーナ・ズエワ)
おおう、この演目の中で彼が着てきた衣装の中でデザインは最も好きだけど・・・この色は脇汗があまりに目立つ。絶対的にあっかーん!と思う。彼の爽やかさが帳消しにされてる。誰か何とかしてあげて。

小塚君は、視線がちょっと下過ぎて損してると思う。
顔の向きよりも、視線がたいていちょっと下がってる。これはいろんな面で損です。簡単に行っちゃえば、上向き視線よりも、表現やアピール力を一回り小さく感じさせてしまう。こじんまりと小さなことやってる印象になっちゃうっていうか。顔の向きよりも、少し上向きに視線を向けるよう、変更できないかしら。

もちろん、視線って技術的な動きをする上でとても大切だから、特に難しい技術ではどういう所を見るかほぼ決めていると思う。そうである以上、慣れてない視線の向きに変更することは、特にジャンプなどの高度の技術的要素には支障があり過ぎると思う。でも、そういう技術的要素に関係ない部分だけでも改善できないかなあ。。。と思ってしまいました。

●総合7位 マヨロフ君/スウェーデン/アーキエンジェル
(地上波放映なし)
後ろ姿を見てパーカーかと思ったら、マントをデザイン化したものなの?と思ってたら、最後はフードにして被ってた。なんだー!?

冒頭、アイソレーションのアラビアンみたいな動きが楽しいなって思ってたら、音楽にもアラビア風なものが入っているなあ。私、この楽曲全く知らないので元ネタを知りたくてたまらないわ。・・・と思い調べてみたら、予告編音楽の制作集団によるいわばイメージ音楽なのね(こちら参照)。こちらでは、アーキエンジェルの音も聴けたし、衣装の由来も分かりました。アニメやゲームっぽい衣装なのね(笑)。

さて、マヨロフ君ですが、ジャンプの調子が今一つだったのが残念でした。が、不可思議で印象的な音楽(そりゃそうだ映画予告編って耳目を引くように作られているから)が連なる中、ちょっと茶目っ気のある仕草も入れつつ楽しい感じで仕上げていました。


●総合8位 ガチ君/ロシア/FS=映画『アンナ・カレーニナ』より
(地上波放映なし)
冒頭の4回転を成功させたので、FSでかなり巻き返すか?と思ったのですが・・・まだ本調子にはほど遠い感じですね。不機嫌な表情はいつもの通りですが、心なしか顔色悪い気がする・・・もしかして体調がかなり悪いのかしら。練習で激しく腰を打って途中で引き揚げたみたいですから、身体がつらいのかもしれないですね。

アンナ・カレーニナで印象的な機関車(旦那と私は「恐怖のシュシュポポ」と呼んでいる)の音がちょっと長めに入った切ない旋律を用いた演目ですし、個性的でガチ君に似合う振り付けが多用されているだけに、完成すれば印象的な演目になること間違いなし。頑張ってほしい。

by Koharu-annex | 2013-10-22 18:34 | 2013-2014 フィギュアスケート