もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

世界選手権 男子雑感

フジテレビはなあ、変なプロモーション映像をしつこく流さんと、もっといろんな選手の映像流してくれんかなあ。でも、こんな意見、もう数年前から山ほど届いてるでしょうに、それでも止めないんだから、これがフジテレビの考える「ベスト」なんだろうな。センスの悪さをここまで露呈していいのか、と心配になるけど。

センスの悪さの最たるものは、高橋さんのSPのとき、しかもステップのときに、「データ放送福引きキャンペーン実施中! 詳しくはdボタンで!!」てな帯を、あらんことか高橋さんの足元に張り付けたことですわねえ。
あれ、冗談抜きで「敢えて」でしたよね・・・。私がテレビマンなら、あんな映像が後世に残ること自体が恥ずかしくて、絶対にやれんがな。すごいな、あのプライドのなさ。

ところで、何かの報道で「男子フィギュア選手の絶頂期は22歳」というのを見たんだけど、そういや22歳って多いなあと思い、今回「22歳」と書くときは青字にしてみた。確かに多い。21歳が次に多いので、やっぱりこのあたりの年齢が一般的にイケイケの頃なのかしらね。


●1位/パトリック・チャン(22歳)/カナダ
SP: エレジーbyラフマニノフ
FS: オペラ「ラ・ボエーム」

SP、ジャンプに安定感を欠いた今シーズンでしたが、世界選手権には必ず間に合わせてくるところは、さすがですね。全体の滑りにおけるスピードはもちろんそうですが、最後のスピンの速さには、チャンさんの気合いを感じました。
この滑りのスピードを伴った安定感というものが、この静かに流れる音楽と合致した場合、フィギュアスケートに特有の一つの快感を感じさせます。これは、私が使う「表現力」とは別ですが、PCSに加点されるべきものなんだろうなあ。もしかすると、PCS的には最も重視されるところだったりして・・・とも思ったり。

FS、どこまでもチャンさん特有の端正さが崩れないので、ラ・ボエームらしいと言うよりはチャンさんらしいといったところでしょうか。
後半の3F+1Lo+3S、ああいう出来でも、GOEはマイナス1.3で最終的には9.7も貰えるんだ~などと、いろいろスコアを見て感じましたが、このあたりは私には分かりません。

●2位/デニス・テン(19歳)/カザフスタン
SP: 「アーティスト」より
FS: 同上

テン君がSPとFSの2本揃ってこんなに良かったのを見たのは初めて。彼がこんなに喜んでいるのを見るのも初めて。それだけに、金をあげたかったな。
かつてはぶっちぎりでチャンさんの点数が高く、「どうやって追いつけっちゅーねん」というレベルだったけれど、今回のテン君との点差は、ほんのわずか。そこで、思わず思っちゃう。もしかして、テン君にそれなりの実績があれば、PSCとかGOEとか、もう少し上がっていたんですかね?今のままでも、テン君のPCSの点数はかなり高いんだけど、それでも、あと2点弱・・・と思っちゃいましたよ。

それにしても、本当にすごかった。SP・FSを通してGOEにマイナスがないのは、表彰台の中では彼だけ。採点表を確認して、目がテン(最近オヤジ化がますます…)。

コンパクトな体型ながら、柔軟性とスピード感があって、分かり易い音楽性もある。今回は特に、これらに安定感が加わったので、ちょっとした華やかさも感じられるようになりました。
以前は、勝気だけが前面に出て破綻してしまうこともありましたが、気持ちのコントロールがきちんとできていました。まさにこの点から、ここ数年テン君が心身ともにコツコツと「修行」を積み上げてきた事実が感じられます。

SPとFSはともに映画「アーティスト」からですが、いわばSPはオン仕様で、FSはオフ仕様。
オフ仕様のFSのくだけた衣装は、時々スケーターの皆さんが採用する、蝶ネクタイをほどいて首にかけている状態。幼顔のテン君がやると、ピアノの発表会でママが用意したスーツを脱いだみたいに見えて、ちょっとかわいい。

とにかくおめでとう。
ポテンシャルがあることは知っていたけれど、こんなに早くテン君が頂点に近づく存在になるとは、全く思ってなかったよ。謝るわ!!
 
●3位/ハビエル・フェルナンデス(21歳)/スペイン
SP: 映画「マスク・オブ・ゾロ」より
FS: チャーリー・チャップリン・メドレー

フェルナンデスさん・・・NHK杯で生で見た際、ワタクシ、彼の印象がかなり変わりました。
映像では伝わらないような、繊細な表現力というか波動みたいなものがある方なんですよね。「表現力」と「波動」を並列にしちゃうと意味不明だと怒られちゃいそうだけど、でも、そうなの(笑)。

特に、FSのチャップリンの演技は、映像よりも生の方が、数倍も心を揺さぶられるものでした。音楽とか、音楽の向こうに流れる何かに、すごくフェルナンデスさんが意識を向けていて、気持ちが寄り添っているんですよ。
ああ、彼は若いながらに、孤独や哀感や理不尽さに対する怒りや悲しみ、それを超えて何かを成し遂げようとする、あるいは何かを曲げないでいる芯の強さ、といったものに共感する何かを抱えているんだなと感じます。

以前、私は、「フィギュア界のアンヘル君としてフェルナンデスさんを応援したい。」と書いたことがあるんですが、その本家のバレエダンサー、アンヘル・コレーラ君にもこれは通じるものでして。「サッカー王国スペインで生まれ育った少年にとって、バレエを選ぶということは、それだけで過酷な人生だ。」的な発言をしていたアンヘル君と同じ思いを、フェルナンデスさんは、やはり抱えて生きてきたんだろうなあ~と思う次第。

SPもFSも完璧とはいかなかったけれども、とにかく、世界選手権でのメダル獲得、おめでとう!
母国スペインで更に認められることを祈っているよ!

●4位/羽生ゆづる(18歳)/日本
SP: パリの散歩道
FS: ミュージカル「ノートルダムドパリ」

SPの時から、身体の動きが悪く、いつものキレもタメもないことから、身体のどこかに不具合があることは明らかでした。

シニアに最初に登場した頃から、羽生君について心配なことは、病気と怪我だけです。
一般論として、スポーツ選手の治療には、ドーピング検査との関係上、使用できる薬剤にかなり制約がかかります。持病に喘息があることは周知の事実ですが、その喘息治療においても四大陸後に罹患したインフルエンザの治療においても、「最も効く薬」が使えなかった可能性があるなあと。スポーツというのは、そういう意味でも過酷な世界ですよね。

インフルエンザの治療で遅れた練習を取り戻そうと無理をして怪我をした左ひざ。日本で精密検査を受けるとのことですが、大事ないことを祈っています。そして、今大会の練習中に新たに怪我をした右足首とともに、きちんと治せますように。

FS、冒頭から、健気さオーラ全開。しかも全身から。全ての動きで、「タメ」どころか最後まで動きを全うできないという、振付をなぞるだけの状態でした。しかし、この健気さオーラにやられた観客は多いと思う。スピンの速さが徐々に落ちていくことすら、ドラマチックでした。

こういう、調子の悪さが確実にドラマチックな方向に働く、というのは羽生君の大きな力量。これは表現力の地力の大きさを如実に表すものです。

最後に氷上でがっくりと膝折れるところ、痛みをこらえて観客に挨拶するところ、コーチに泣きながら抱きつくところ、もしかすると羽生君のアンチファンの中には、「あざとい」と一言で切り捨ててしまう方もいらっしゃるかもしれません。が、これは、あざとさから出ているものではないと思います。自分の状況や心の内を、だだ漏れるように表出する(「できる」)表現者っているんですよ。ただ、それだけです。

「謙虚であること」を最も美徳と捉え、自分の状況や心の内を外部に出すことを恥と捉えることは、通常の生活では褒め称えられることだと思います。でも、こと身体表現の観点からみれば、状況や心の内を「言葉ではないく身体やオーラを使って」外に訴えることができることは大きな強みです。羽生君には、天性のこの才能がある。それは、素晴らしいことです。

●5位/ケビン・レイノルズ(22歳)/カナダ
SP: 「Chambermaid Swing」 by P.ステラー
FS: 「ピアノとオーケストラのためのホ短調4」byA.マシュー

SP、緊張したお顔ながら、冒頭から動きにキレがあり、期待をもって見ていました。
四大陸での勢いをそのまま維持した出来栄えに、とても嬉しくなりました。来たよ、チャッキーの時代が!あ、失敬、ケビンだった(笑)。あとは、PCSを伸ばしていくことなんでしょうけど、それってどうすればいんだろ・・・

ジャンプミスは散見されたものの、FSのあの見事な振付を美しく丁寧にこなして行こうとする姿勢は、美しく非常に好感の持てるものでした。このプログラムは来季持ち越しでも良いのではないでしょうかね~。

●6位/高橋大輔(27歳)/日本
SP: 月光byベトベン
FS: オペラ「道化師」

SPは四大陸から衣装替え。私は四大陸の方が好きかな。今回のは袖口がひらひらしてて、この演目での高橋さんの手首から先の繊細な動きを半分くらい見えなくしちゃってるので、ちと不満。

SP、冒頭から少し動きが慎重というか、硬いように感じました。四大陸の方が丁寧に動いていたように感じます。珍しいなあと思っていたのですが、四大陸後にありえないくらい練習をしたということで・・・もしかして過労?FSについても、過労と考えると、あの精彩の欠け具合もむべなるかな、ですわよ。このFSで、あんなに音楽とずれることってなかったもの。

過労の真偽のほどはさておいて、ピークをワールドに合わせるって、本当に難しい。結果論だけど、私はやっぱり、阿部先生のロックメドレーをそのまま使って欲しかったと思いマス・・・。

●7位/マックス・アーロン(21歳)/アメリカ
SP: 映画「トロン:レガシー」より
FS: ウェスト・サイド・ストーリー

SP、よく動いてましたけど、まだ振り付け以上のものを出すという意識が殆どないように見受けられます。

FSは初見。派手な赤い上着だなと思ったら、ウェスト・サイド・ストーリーか!なるほど!!
しかも、初っ端からあの「メンチ切る」シーンの音楽(笑)。いいね!と思っていたんだけど、ジャンプの調子が悪くて乗り切れなかったかな。壁にぶつかったのは気の毒でした。やっぱり、変則的なリンクは、経験が浅い人ほど難しいのでしょうか。

●8位/無良崇人(22歳)/日本
SP: スペイン組曲「アンダルシア」より「マラゲーニャ」byレクオーナ
FS: Shogun

日本選手の中では、大舞台での経験が浅い無良君。四大陸に引き続き、SP・FSでの4回転の失敗は、ジャンパーである彼にとっては痛恨でしょう・・・

さて、舞踊面というか表現面に関することなんですが。
無良君のような力強いパワフルな演技を志向する場合、パフォーマンスに当たっては、ウソでも「俺は世界で一番カッコいい!」と思いこんで欲しい。

そんな大ウソ無理、と謙虚な彼は拒否するでしょう。でも、そう思いこんで欲しい。思いこむと、絶対、何かが違ってくるから。無良君のパフォーマンスを変える、最も簡単で、最も効果的なことは、これだと思う。よくスポーツで言われる「メンタル」というのとは別だと思うんだけど、こういう思考というか想念も、理屈抜きに強いパワーがあるから。

●9位/ブライアン・ジュベール(28歳)/フランス
SP: 「Genesis」ほか
FS: 映画「グラディエーター」より

年齢を「28歳」と書いて、あらためて驚嘆。
若いスケーターが悪いわけじゃないけれども、彼がリンクに立つと、「こういう色気のある男の方が、やっぱ好きだな!」と思わせる、匂い立つオーラ。各国にファンが多いのも当然ですわ。

しかし・・・バレエダンサーだと、このくらいの年齢から熟成が始まるんだけど、スケーターの場合はなあ。
プロになってアイスショーっていう道は確かにある。私は、これまで競技会3回、アイスショーは2回しか行ったことないけど、アイスショーはアイスショーなりの良さがあるのも分かる。でも、競争という緊張感の中で張りつめた演技を見せる競技会だからこそ見られる先鋭さ、というのものはフィギュアスケートの大きな魅力だと思う。そう思うと、なかなか切ないものがあります。

SPでやってくれた、彼独特の「その場駆け足」、何度見てもやっぱり好きだな~。
FS、衣装からこれだろうなあと思っていたら、まさにグラディエーター。よく似合う演目ではないでしょうか。彼の舞踊的には少々不器用な動きは、主人公の武骨な力強さに転化されています。そして、彼から発せられる微かな繊細な芳香が、そこに色を添えています。演技終了後はもちろん、演技途中で思わず出たガッツポーズも含め、素敵なショーでした。

FSで、例の「繰り返し禁止ルール」が適用されちまったのは、ご愛嬌ってことで。

●10位/ミハル・ブレジナ(22歳)/チェコ
SP: 「In the Hall of a Mountain King」 byエピカ
FS: アンタッチャブル

ペトレンコさんが新コーチということで、ほぉと思って見てたら、ペトレンコさんがすっかりおっちゃんになってて、微妙にショックを受けてしまったワタクシ・・・。

ブレジナさんのジャンプについて気になっているんですが、助走が割と長くないですか?
特にSPの前半やFSの中盤のジャンプで感じたんですけど、跳ぶタイミングまで時間がかかると、かなり冗長な感じがするもんですね。仕方ないと言われればそうなのでしょうけど・・・。表現的にはジャンプの助走のところは時間が止まっている感じがするので、そこが長過ぎると損かなあ、という気がします。

2年続いたこのFSも、今回で見納めでしょうか。少し寂しい気もしますね。完璧に近づきそうで、結局、惜しいところで完璧にはできなかった印象で、残念でした。

●12位/フローラン・アモディオ(22歳)/フランス
SP: 「ソブラルの思い出」byダミアーニ
FS: セバスチャン・ダミアーニ・セレクション

SP、少し身体が重いような気が・・・と思っていたら、思いがけないところで転倒。荒川さんが同じことやったことがあると解説でおっしゃってて、「身体も痛いけど、心も痛い」と。・・・想像に難くないです。
冒頭の4回転、リンクの幅の狭さが影響しているようにも見えました。これが4回転になっていれば、最後のスピンの取りこぼしがあっても点数がちょっとは違っていたかと思うと、残念でした。

FS、アモディオ君の魅力を感じさせる上半身の様々な動きは、見ていて楽しい。けれど、上半身だけで完結してしまって、全身を使った全体の動きに魅力が乏しいのは、踊りとしては物足りなさを感じます。
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by Koharu-annex | 2013-03-19 01:30 | 2012-2013 フィギュアスケート