もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

スケートアメリカ 男子雑感

こちらもSPとFSをまとめるので、最終順位の順番に感想を。
関係ないけど、私、アメリカ大会のフラワーガール達の衣装、結構、好きだな。

●1位/小塚崇彦(23歳)/日本
SPは、映画「栄光への脱出」より。
イスラエル建国をテーマにした映画のサントラで、壮大な音楽。

いや~、私が見てきた小塚君の演技の中で、最も良かった!
過去、私が見た小塚君の中で、最も音楽に乗って伸びやかに滑っていたのは「ナウシカ」だったのですが、これは完全にナウシカを超えたと思います。

滑空するようなスピード感あふれる滑りでした。思い切りよく、躊躇なく、飛んでいくように見えました。本当に空を飛んでいるかのようでした。念のため書いとくけど、下半身だけじゃなく、上半身もです。飛んでます。それがまた、この音楽と本当に良く合っていた。小塚君の良いところが、最も良い形で出てるんじゃないでしょうか。

ガッツポーズもむべなるかな。何度も繰り返していたことにも納得です。

FSは、序奏とロンド・カプリチオーソ。
もう~、テレ朝も「序奏と」を入れないんだから!これ入れないと、サン=サーンスじゃなくて、メンデルスゾーンになっちゃうんだってばー。

滑空度が低くなって、堅実度が高くなっていましたが、ともあれFSは第一位。
優勝おめでとう!

●2位/羽生結弦(17歳)/日本
SPは、パリの散歩道。
うわ、なんて綺麗な4回転!(私でも綺麗さが分かる)

羽生君ってドラマチックな音楽も似合いますが、過去のEXからも明らかなように、ロックも非常によく似合いますよね。(ゲイリー・ムーアって、まっすぐストレートに「ロック」って言っちゃっていいのかどうか私には分かりかねますが)
なんかねえ、彼ってほんと、氷上に出ると少女マンガの主人公(=正確には主人公女子の相手方)ですよね。なので、少女マンガで「もてる男子」のジャンルは、ロックミュージシャンだろうが王子様だろうが、ちょい不良だろうが、天才児だろうが、全て似合うと思う(笑)。そういう意味では、非常に得な人とも言えますわね。

少々男くさい振付をよくこなしていました。
私の好み的には、もう少しタメてもいんじゃないか、という個所が数か所ありましたが、それをしちゃうと逆にイヤミになっちゃうかもしれません。

FSは、ノートルダム・ド・パリ。
冒頭から、いつもより動きがぎこちなく小さい。正直、委縮しているように感じました。ただ、多くの皆様がお感じになったとおり、この経験は、結果も含めて、羽生君にとっていろんな意味で有益だったと思います。

ちょっと気になるのは、怪我ですね。。。また、慣れない土地での秋冬を迎えるにあたって、持病のぜんそくも気になります。どうぞお身体だけはお大事に。コーチ陣にも、その点には充分に気を付けて頂きたいです。よろしくお願いします。

●3位/町田樹(22歳)/日本
SPは、F.U.Y.A。
わ、今年も衣装が派手だあ(笑)。でも、これで気持ちが上がっているように見えるので、迷わずこれで行って欲しい。

もともと良く動ける人だったんですが、それが「踊る」ってところまでは、なかなか行きつかない人でした。しかし、今回は踊りまくってましたねえ!

日本調が含まれた不思議な音楽に乗って、とても歯切れの良い動きを見せていました。お囃子のような音楽によく似合う、単純なリズムでの単純な動きを、キレのある力強さで次々と繰り出していくのを見ることは、快感でした。地方土着のお神楽のような、土俗的ながらもある種の神秘さをも併せ持つ、不思議な魅力のある作品に仕上がっていました。

昨季のFSドンキに引き続き、ランビエールさんが振付けを担当されたそうですね。
あのドンキは、ランビエールさんの影がいつも見えていたんですよね。しかし、今回のSPはそれが薄くなってました。というよりも、なんというんでしょう、2季目に入って、ランビエールさんと町田さんのコンビが化学反応を始めたという感じですかね。

この2人によってしか反応しない何かが、外に出てきた感じです。町田さんはよく動けても本来的には踊り心が豊富にあるわけではないと思うのですが、そうだからこそ有するともいえる「泥臭さ」みたいなものを、逆に魅力的に見せる方向で振付に昇華させることに成功したとでも言いましょうか。いずれにしても、このコンビでしか出せない世界を出すことに成功したと思います。

録画を拝見する前に「ラストのどや顔」という趣旨のコメントを頂いて、「?」と思っていたのですが、ほんと「どや顔」でしたね!

FSは、バレエ音楽「火の鳥」。
この「火の鳥」は素敵でしたねえ。私が見た中では、男性の演じた「火の鳥」の中では、間違いなく最高峰です。

ワグナーさんのコーチであるフィリップ・ミルズさんの振付だそうですが、元はバレエダンサーなのですね(こちらの町田さんの記事参照)。
それで納得。
この火の鳥、とってもバレエっぽいもの(昨季のワグナーさんのブラックスワンよりもずっとバレエっぽい)。バレエ「火の鳥」のどの部分の振付を具体的にもってきたという話ではなく、バレエ「火の鳥」の印象や世界観に非常に近い作品に仕上がっているというレベルの話ですが。また、楽曲のチョイスが秀逸。様々な場面の異なる趣の音楽を、破綻のない物語進行となる順番でつなぎ合わせている。

よく動けるという町田さんの特性を大いに生かした、素晴らしい振付け。その振付師の期待(以上)にばっちり応える、素晴らしい町田さんのこなし具合。稼働域めいいっぱい、いえ、時としてそれ以上にダイナミックに動きながら、音楽にぴたりと合わせていく姿に、町田さんの気持ちの入り具合とこの作品の完成に向けた滑り込みの凄さを感じます。

ランビエールさんとの化学反応とはまた違った、素晴らしさと凄みがありました。よくこんなマーヴェラスな演目をSP・FSの両方に揃えましたね。ビバ!であります。
いや~、良いもの見せてもらいました。

●4位/コンスタンティン・メンショフ(29歳)/ロシア
SPは、映画「ピナ・バウシュ踊り続けるいのち」より。
おお、この映画できましたか!3Dの異色の最高傑作とも言われる作品。数年前に亡くなった天才ダンサー&振付家のピナ・バウシュを題材にしたものですが、さすが過去に素敵な「走り屋物語」を披露してくれたメンショフさん(こちら参照)、お目が高い。それだけに、映像が途中で途切れちゃったのは残念。

単調なんだけど、何故だか心の奥底にじわじわと寄せてくる音楽。裸の魂の一側面を、ちらと見せつけるような内省的な演目だと思いますが、途中で失速しちゃいましたかね・・・。

FSは、アレグロほか。
この音楽の作曲家のルネ・オーブリーは、バレエ(コンテンポラリー)音楽も手掛けています(私はそれらのバレエ作品をあまり見たことはないのですが)。メンショフさんは、これ系の志向があるのかもしれません。

もともと踊り心は充分にある人なんですが、ジャンプのミスやなんやかんやで、全体の仕上がりが安定しない印象です。かなり素敵な作品だと思うので、いつか完成形を見てみたいなあ。

●5位/ジェレミー・アボット(27歳)/アメリカ
SPは、スパイ。
セクシーさの出るオールバックになでつけた髪型と、ガンホルスターやシューティング・グローブといった小道具を付属させた衣装。それだけで「お芝居」系ばっちりですが、そここに大技小技を含めた「スパイ」(殺しもするぜ的な)を連想させる振付が施してあり、なぞ解きをするような楽しさのある演目でした。
アボット君は、とにかくスタイルが抜群なので、こういうことやらせると俳優さんのようで、ほんとにカッコイイ。

FSは、「レ・ミゼラブル」より『彼を帰して』
SPと異なるナチュラルな髪型だけど、こっちも色気があるなあ(笑)。
ジャン・バルジャンのソロで、「まだ若いマリウスを天に召さないで下さい。どうせなら年取ってる私をどうぞ」という歌(かなり意訳してしまってスミマセン)。ちなみに私が最初に見た舞台のマリウスは野口五郎で、ジャン・バルジャンは滝田栄。1989年の話。

損得勘定や利己的な感情が全く入らない、他者への愛情に基づく真摯な祈りにあふれた楽曲。アボット君の妙に健気な雰囲気に合わさると、涙が出そうなほど美しいです。もちろん、彼はまだマリウスの年齢だけど(笑)。

●6位/ミハル・ブレジナ(22歳)/チェコ
SPは、山の魔王の宮殿にて。
グリーグの傑作「ペールギュント」からの選曲。全く関係ないけど、この曲、小学生の時に兄が聴いているのを聴いて、しばらくお気に入りだった。私が気に入っているのを知った兄が、アッシャー家の崩壊とか、コルサコフの熊蜂の飛行とか、およそ小学生には似つかわしくない曲をたくさん聴かせてくれましたわ(笑)。

始まった時、あれテンポ遅い?と思ったのですが、この楽曲、終盤にテンポが急速に上がるので、体力不足が課題のブレジナ君のために遅めにしたのかな~?と思いつつ拝見。遅いがゆえに重さがあるのですが、ブレジナ君はこの「重さ」に呼応するような重みのあるムーブメントで、素晴らしい。
が、後半に従い・・・やはり、音楽のテンポが上がった、それもマックスまで!・・・そうすると、やっぱりブレジナ君、ものすごーく疲れちゃいましたね。。。

FSは、映画「アンタッチャブル」より。
とても彼の個性に似合っている演目なので、今季も見ることができて嬉しい。ジャパンオープンの時は体力がもちませんでしたが、今回は大丈夫でした。ジャンプのミスが複数あり、点数は伸びませんでしたが、演目自体はよくまとめていたのではないでしょうか。

●7位/アーミン・マーバヌーザデー(21歳)/アメリカ
SPは、カシミールbyレッド・ツェッペリン。
昨年からの持ち越しですね。身体はそんなに大きく無い人ですが、青年っぽくなってきました。
プログレ特有の気難しそうな楽曲ですが、彼の知的+アーティスティックな雰囲気と、妙に合ってる気がします。ただ、もともとの振付がイマイチなこともあって、曲とパフォーマンスを調和させるのは難しい楽曲のように感じます。

FSは、ドクター・フー。
音楽がかからないアクシデントがあり・・・「ワンサゲン」とか言われてもなあ、気の毒に。
私はこのドラマは見たことがないのですが、BBCの異星人が出てくるSFものだそうで。SFは割と好きなので見てみたい気もしますが、長過ぎてちょっとメンドクサイなあ。

昨年から同じこと書いてますが、アーミン君の場合、振付にそもそも問題があるんじゃなかろうか。非常につまんない振付です。「踊る」ということにほぼ興味がない人が作っているんじゃないかと勘繰りたくなるほどです。アーミン君って、本来もっと踊りのポテンシャルを持った人だと思うのですが、現時点では宝の持ち腐れになってて、非常にもったいないです。

●8位/トマシュ・ベルネル(26歳)/チェコ
SPは、映画「ドラキュラ」より。
雰囲気たっぷりの音楽に乗せて、良い感じで怪しく始まったのですが、ジャンプの調子が悪かったせいか気分が落ちていくのが分かってしまいました・・・。

FSは、スイングがなければ意味がない ほか。
一部昨季の楽曲が含まれていますね(シング・シング・シング、バラ色の人生)。この手のちょっと懐かしいけど洒落っ気のある楽曲を演技するのは非常に上手な方ですが、ジャンプのミスが乗りにも影響してしまいましたね。。。コレオ・シークエンスのところ、本来はもっとノリノリで楽しい仕上がりになるのだろうなあ~と思いながら見ていました。

●9位/ダグラス・ラザノ(23歳)/アメリカ
SPは、ラフマニノフ「ピアノ協奏曲第2番」。
超有名曲で鑑賞者サイドがメロディを先取りできる中、ロマンチックに歌う様に伸びる旋律において、スケートが思ったより伸びないと、ありゃりゃ・・・という印象になっちゃいますねえ。リスクがあるなあ、この楽曲って。

FSは、クイーン・シンフォニー(ロックバンド「クイーン」の曲をモチーフにしたシンフォニー)。
思いのほか壮大さが前面に出る派手な音楽でした。こういう壮大さのある音楽に負けないような演技をするって、かなり大変なことですね。ラストはぴったりと合って気持ちのよい終わり方でしたが、全体的にはラザノさんには少々荷が重い気がしました。

●10位/アレクサンデル・マヨロフ(21歳)/スウェーデン
SPはレイズ・ブルース、FSはライフ・ビギンズ・アゲイン。
親御さんの期待が大き過ぎるような気がします。毎年、難しい楽曲選び過ぎ。そして、振付が本人の実力比で難し過ぎではないでしょうか。

課題を乗り越えさせるために少し難しめの楽曲や振付を課すのは当然だと思いますが、手が届く範囲を遥かに超えるものばかりがチョイスされているような気がします。それって、ご本人を鍛える面もあるにはあるでしょうが、必然的にかなり手前での息切れを招いてしまい、本来であればご本人が到達できる地点にすら到達できない結果を招いているような気がします。
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by koharu-annex | 2012-10-28 00:26 | 2012-2013 フィギュアスケート