もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

スケートアメリカ 女子雑感

時系列的には男子から書くのが筋なんですけど、とりあえず女子から。SPとFSをまとめて書くので、最終順位の順番に従います。

●1位/アシュリー・ワグナー/US
SPはレッド・バイオリン。
難しい楽曲を、文字通り「力」(だけ)でねじ伏せた感じですね。技術的な要素の出来も良く、時折見られるアクセントの振付が音とぴったり合ってるし、そういう意味ではシーズン初めなのに完成度が高かったのだと思います。

しかし、この楽曲を「力」の一本調子で終わってしまうのは、あまりにもったいないのではないだろうかと少々疑問を持ってしまいました。。。あと、ラストが、FSと同様に般若のようなお顔になるのは、どうしてなんだろう・・・?

FSはサムソンとデリラ。
もともとはソチ五輪用にと思っていた曲だそうですね。調子が良かったら来季に持ち越しをするのかしら。
妖婦デリラが復讐のためにサムソンに近づき、彼の怪力の源が髪の毛にあるという秘密を聞き出し、髪の毛を刈り上げて禿げにすることによって彼からパワーを奪い、復讐を果たすという旧約聖書にある物語。髪の毛って・・・ほか突っ込みどころ満載とはいえ、サン=サーンスの作曲したこの楽曲(オペラ)はとてもメジャー。学校の音楽会なんかでもよく演奏されますねえ。全体的に派手だし、あの「じゃかじゃかじゃんじゃん♪」ってのがキャッチーでいいのかな。

さて、ワグナーさん。
ジャパンオープンで拝見した演目だけど、今回も迫力満点。この楽曲の場合、SPと異なり、彼女の持つ「力み」がむしろ長所として引き出されていると思います。

ただね、それをいっちゃあおしめえよ、なんだけども。
アシュリーさんって良くも悪くも、典型的な明るくコンフィデントなアメリカ娘、という印象があるでしょう?(しかも演技の際に、自分以外の他者になりきれるほどの地力は残念ながら持ち合わせていない。)
このアメリカ娘タイプってのは、バレエその他のダンスの世界でもそうなんだけど、実は表現者という意味においては深みに欠けるきらいがあります。いろいろな苦労や秘めたる思いがあるでしょうに、いつも明るく前向きであることを感じさせるお人柄は、文句なく素晴らしいだけに、これを指摘するのはつらいところですが。

●2位/クリスティーナ・ガオ/US
SPはClose Without Touching、FSは昨年からの持ち越しのリベルタンゴ。
ガオさん、昨季はシニアに移行したシーズンだったからか、自分に自信を失っているように見られる時もありました。今年は見違えるような成長ぶりです。オフの間も練習を頑張ってきたのでしょうね。練習の成果を実感していることに裏付けられているのであろう、余裕と自信が感じられます。

もったいないのは、髪型。
スタイルがとても良い方なので、せっかくだから髪型をもっと素敵に結いあげて頂きたいなと。

表現面から言えば、まだお若いからでしょうか、練習を真面目にしてきたことは大いに感じ取れるものの、振付を順番に「確実にこなしていく」という意識しかまだ無いように感じられます。音楽を理解し、曲調に心を添わせる、そこに別の何かを表現していく、そういう「表現」のステップにはまだ踏み出していない感じです。

あと、FSで残念なのは、振付がこの音楽と親和性が良くないこと。技術的な要素はほぼ完ぺきだっただけに、振付と音楽の調和があまり(私から言わせると『殆ど』)見受けられないのはかなり残念。ただ、中盤のスローパートのところは、振付の問題のほかガオさん自身のムーブメントに伸びがないことも調和が見られない一因かも。

●3位/アデリナ・ソトニコワ/ロシア
SPはスペイン奇想曲。
シニアデビューした昨季は期待が大きかったのに、ジュニア時代よりも成長したお身体にご本人がついていけなかったようで、少々つらそうに見えました。今年はいくぶん笑顔も増えたので、少しずつ復調していくのではないかと期待しています。

タラソワさんらしい、個性的かつ独創的なフォルムのスピンやステップ、非常に印象的です。ただ、ステップ(リズミカルでヴォーカル入りの音楽部分)について、アクセントやメリハリをつけようとしているのは分かるのですが、まだ少し弱い。次回に期待。

FSは映画「バーレスク」より。
昨年あっこ姉さんのEXで印象深い楽曲。若い方には御しがたい楽曲だと思います。
技術的な要素はいま一つの出来だし、表現面からも完成にはまだまだ感満載です。が、「表現する」意識があるかどうかという観点からは、評価して差し上げたい。

●4位/ヴァレンティーナ・マルケイ/イタリア
SPはEsperanza。
フラメンコの衣装を模した衣装の中では、トップクラスの素敵さではないでしょうか。袖と裾のフリル部分が非常に凝ってます。袖の長さも、この年齢の女性らしさを引き立てていますね。背中の空きのシェイプは、同じスクエアでもあとほんの少し洗練された方が良い気がしますが。メイクもヘアスタイルも、昨季よりずっと洗練されました。

本来、、動きが少々粗雑で、ポジショニングやムーブメントも「『素敵』というところにたどり着くまでは、あと数歩足りない。」という印象だったのですが、「数歩」が「一歩」になってました。これも進化だと思います。

FSは映画「アーティスト」より。
・・・衣装はもっとこの映画にふさわしいものがあるような・・・。SPが良かっただけにちょっとショック。
大げさな身振り手振りにこの映画らしさが出ていました。が、割合的にいうとそのうち半分くらい(特に前半に多いと思う)が、滑りやムーブメントと一体化したものではなく、どうしても小手先感が漂うというか取ってつけたよう印象になってしまうのは、ちと残念。

●5位/今井遥/日本
SPは映画「シャレード」より。
ヘプバーンのジバンシィの衣装が印象的な映画。今井さんの衣装もヘアスタイルもとても素敵です。裾丈を長くすれば、そのままパーティーに行けそうです。

日本人スケーターの中でも、群を抜いてたおやかな所作と印象を持ち、日本人的な奥ゆかしいほのかな色気のある人です。毎年書いてる気がしないでもないけど、特に腕から指先の所作やムーブメントが非常に美しい人なので、肩から指先までオープンになってる衣装は、この長所を存分に見せることができると思います。

解説の方によると映画の内容そのものよりも明るめに仕上げたとのことですが、確かに演技自体にサスペンスな感じはしませんでした。ただ、うっすら影とウェットな感じもある方なので、映画の内容通り息をひそめ続けているような不安な心理を表すサスペンス調の楽曲も良く似合うと思いました。

FSはディベルティメント変ロ長調K137(モーツァルト)。
ピンク等の暖色系が思い浮かぶ曲調ですが、青い衣装。これ系の青ってアメリカは好きですよねえ。シルバーのキラキラといい、いかにも米国調の衣装という印象です。彼女はゆかさんご夫妻のもと米国でトレーニングをされているということで、やはり衣装もアメリカなのでしょうか。

後半は疲れていっぱいいっぱいになったのか、いつもの優美な腕~手首の動きが少々おざなりになっていました(SPの時は終始一貫して、腕を動かす度に優美さがこぼれ落ちています)。逆にいえば、あの優美な動きは(天然の部分ももちろんあるでしょうが、それに加えて)本人が気を使ってかなり努力していることが分かります。

●6位/マエ=ベレニス・メイテ/フランス
SPはフィーリンググッド。
50~60年代のミュージカル楽曲の1つですが、この時代のミュージカル楽曲ってジャズなどにアレンジ&カバーされた楽曲が多いですね。フィーリンググッドも、私はジャズのイメージが非常に強いかな。
レイテさんもグルーヴ感を出すよう努力していたと思うのですが、単純に滑り込みの問題もあるかもしれませんが、少し足りないような。

FSは映画「ルーヴルの怪人」より。
おおぅ、ソフィー・マルソーの映画じゃないですか。エジプトのミイラが出てくる話。
メイテさんの衣装からすると、ソフィーじゃなくてエジプトに焦点を当てているのですね。
エキゾチックで面白い振付がたくさん入っていて、とっても楽しい。まだまだおざなりにこなしている部分が散見されましたが、これ、ちゃんと完成させたらすごく個性的でユニークな演目になるのではないでしょうか。

●7位/アリーナ・レオノワ/ロシア
SPは映画「スラムドッグ$ミリオネア」より、FSはポエタ。
いま一つ乗り切れないまま。身体のキレやコントロール力も足りない印象です。

それにしても、フィギュアスケートでは毎年一定割合がスペイン(風)の音楽を使うけれども、今年はいつにも増して多い気が。やはりプレ五輪シーズンということで、乗りがよく印象的な音楽を使いたいと思うと、勢いスペイン系をチョイスしてしまうのでしょうか。


●8位/ヴィクトリア・ヘルゲソン/スウェーデン
SPはポインシアナ、FSは映画「白い恐怖」より。
FSは、バーグマンが主演したヒッチコックのサスペンス映画の音楽ですが、確かヘルゲソンさんは昨季も映画「サンセット大通り」の難しい主演女優を演じていましたね。往年の名女優系が気分なのかもしれません。
ただ、今回は、SPもFSも少々技術的要素が不安定で、役柄を表すところまで余裕がありませんでしたね。

●9位/レイチェル・フラット/US
SPはコントラバヒシモ(ピアソラ)、FSは昨季から持ち越しの火の鳥。
SPの衣装とヘアスタイルはタンゴを意識したものでしたか。素敵です。FSの衣装も新調されていますが、こちらも素敵。

アクセントの付け方や強弱の取り方には相変わらずセンスを感じますが、いかんせん全体的に動きが重い。
キスクラで常にスタンフォードのキャップをかぶることからも強く感じるのですが、進学後にスケートとの付き合い方を変えたのでしょうね。少し寂しい気もしますが、少なくとも今は、これが彼女が選択した人生。いつか完全にあちら側を選択し、スケートから離れることになったとしても、遠くからひっそり応援したいと思います。

●10位/サラ・ヘッケン/ドイツ
SPはアストゥリアス。
スペインの楽曲ですが振付にオリエンタル調のものがあって、ちょっと意図が掴めませんでした。

FSはAwakening、Breath and Life。
SPと同様、非常にシンプルな衣装で、遠目に見ると少々地味に転び過ぎてる気がしないでもありません。
起伏のない曲調なので、いろんな意味でごまかしが効かないキツイ音楽かもしれません。
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by koharu-annex | 2012-10-26 23:07 | 2012-2013 フィギュアスケート