もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

羽生くんの軌跡 in トホホ その2

2012年世界選手権の男子FSに至るまでの、羽生君のパフォーマンスの感想です。

その1(2010-2011シーズン)に引き続き、2011-2012シーズンを。

(2)2011-2012シーズン

ドリーム・オン・アイス(2011年6月)

●羽生結弦さん(16歳) ロミオとジュリエット
あらー!ロミオ!
こりゃまたぴったりな演目を選んできましたね、FPですか。

音楽は、ディカプリオが主演した映画「ロミオとジュリエット」の音楽ですよね。この選択がまたすごく良いのではないかと思います。

例えばバレエ音楽であるプロコフィエフのものは、ジュリエットのライトモチーフは沢山出てくるのですが(3種あってどれも有名)、ロミオのライトモチーフはそれに比べると地味。バレエの場合は、基本的にジュリエットが刺身でロミオはツマなので、そういうことになっちゃうんだけど・・・。しかも、プロコフィエフのこの楽曲は、その先の不幸を「多めに」(←ここポイントね)予感させるような、どこか死をイメージさせる闇色が全般に漂ってる。これは、羽生君の今のイメージには若干ヘビー過ぎる。

チャイコフスキーのものやニーノロータのものは、プロコのものに比べると闇色は少ないと思うけど、なんというか、羽生君のいつも鈴の音が聴こえてくるような類まれな「光る君」(by紫式部)タイプには、有名過ぎて手垢がついてるという点も含めて何だか少し物足りない。(羽生君が女たらしになるとは言ってません。念のため。笑)

私の中ではもはや半分ギャグと捉えてしまうディカプリオ君ですが、彼のナルが前面に出たこの映画くらいロミオが突出している方が、羽生君にはぴったりだと思う。

実際、羽生君の今回の演技には(FP後半のみとはいえ)ジュリエットの存在は殆ど感じられないけど、そこは全く問題ないと思います。そもそもロミオとジュリエットの2人って、若さ暴走させて自爆しちゃったけど、本当に愛を深めているかは疑問なんだし(要するに恋に恋した状態で終わったとも言える)。自分の思いだけで完結しちゃってる1人の世界、というのは、この2人の場合はある意味正しい。

彼の陣営は、彼のことを真によく分かっていらっしゃる。これは彼にとって強力な武器ではないでしょうか。

今回のご披露はFPの後半のみ、ということでしたが、ちょっとまだ体力がきつそうですね。この夏は体力強化の夏になるのでしょうか。頑張れ~

THE ICE(2011年8月)
●羽生君 ロミオとジュリエット
この人の身体のしなり具合は本当に魅力ですよねえ。そして、たくさんの小さな鈴が鳴っているようなシャランとした音、まだ健在ですね。あと何年あるかなあ・・・。

DOIのときも書いたけど、彼のロミオは、音楽の選択が良いと思います。羽生君は、音楽性もあるし、かつロック魂もあるので、こういうタイプの楽曲も非常に良く似合いますよね~

心配なのは、彼の表現したいものが、今の彼の身体能力の範囲に納まらない、ということです。内から湧き出るものが大き過ぎて、身体が壊れそうです。とにかくケガをされないよう祈ります。「表現したいもの」がこれだけ明確に大きい、ということ、それだけで既に彼は宝ですから。

ジャパン・オープン&カーニバル・オン・アイス(2011年10月)
●羽生君/ロミジュリ
怪我しそうでひやひやするなあ。もちろんいろんな心情あってこそなんだろうけど、少し「強い気持ち」で押し過ぎだな。

まあ、彼のこの感情のほとばしりは、分かりやすく人に訴えかける10代のキラメキなので、そういう意味では捨てがたいのだけど、でも、これじゃ身体がもたんて。
身体のことを考えると、「シャリンと音をたてる小さなたくさんの鈴」(←去年の感想参照)は、今年はもう封印してもいいよ(笑)。もったいないけど(←言っちゃうんだな。これが)。

10代特有の一過性の美ではなく、表現の完成度という一般論的な見地からは、パフォーマンス全体のバランスを考えると、ふっと息を抜く部分があることも大事だし、情感の表出という意味でも、感情を一旦内に取り込むことも大事です。ええ。

中国杯(2011年11月)
●羽生ゆづる(16歳)日本/スクリャービン「12の練習曲作品8 悲愴」
この衣装が似合ってるだけで、日本男児としては表彰ものでしょ。
この人は指先まで覆っている衣装が多いですが、それが良いですよね。腕の動きも手先の動きもとても綺麗なので、それを強調できるgoodな選択。

うねるように、しなるように身体が動きます。これまでの選手とスピード感も全く違う。素晴らしいです。
また、この人はね、高いバイオリンの音とか、ピアノの音とか、抒情的な響きが良く似合いますね。日本男児としては極めて貴重な存在です。

テン君ほどじゃないですが、この人も若いですからね、これまでは、音楽的に「静」な部分であっても、内なる思いから勢いを出し過ぎちゃうことがありました(そしてそれは後半の体力不足につながる)。しかし、今回は緩急をちゃんと意識して「静」なところは落ち着いて、「動」なときは思い切って動いていました。私の好み的にはもっとついてた方が良いけど(笑)。最後の渾身の3つの動きは、気持ちも入ってて、強い印象を残しました。

●羽生ゆづる(16歳)日本/映画「ロミオとジュリエット」より
うわ~、顔色が悪い・・・
と登場の時から思ったんだけど、冒頭から身体はよく動いてました。序盤のジャンプは非常にクリアでしたしね。後半も、何度かのジャンプの失敗にもめげず、一生懸命全身で表現していく姿が健気で胸を打つものがありました。この健気さというのは、ロミオに通じるものですからね・・・。

あの顔色の悪さは体調が万全でなかったことを物語っていますが、そうであるにもかかわらず、体力の問題を感じさせませんでした。パワー配分など、随分考えて臨機応変に対応できるようになっているのかもしれませんね。パワー配分や体調に応じた力の入れ具合の調整は、体力が有り余っているとは言い難い羽生君にとっては身につけるべきスキルでしょうから、そういう意味では大きな収穫とも言えるのではないでしょうか。

今回は残念でしたが、これも経験すべきことだったと捉えて、次回に気持ちを切り替えて欲しいですね。

ロシア杯(2011年11月)
●フライング記事
羽生君っ


おめでとう~~~!!!



まだ映像見てないけど、減点2点をくらってもFS2位、そして金メダルゲットは素晴らし過ぎる。

あなたの真っ直ぐな強い気持ちが、GPF出場を引き寄せましたね。

玉の汗をかいても、汗臭さなんか絶対ない!と思わせる、あなたの汗が好きです。


カナダでも頑張れ。

●羽生ゆづる(16歳)日本/エチュード・イン・D・シャープマイナー(スクリャービン「12の練習曲作品8 悲愴」)
中国杯のときの感想は、

(省略)

というものでしたが、この後半に書いた静と動の切り替え、今回は、より美しく演目の完成度を高くする方向でレベルアップしていました。

ずっと書き続けていることだけど、彼は憑依系の表現者のタイプだと思います。このタイプは、自分の身体が壊れても全力で表現したいことを出し切っちゃう傾向がある。ただでさえフィギュアスケートは怪我の多い過酷なスポーツなので、パフォーマンスの際には、この表現欲求と現実の自分の身体とのバランスを見極めて欲しいと願っています。今回、羽生君がそういう見極めができてきているように見えたので、嬉しかったなあ。

それにしても、技術点(45.20、スピンとステップは全てレベル4!)だけ見れば、ダントツでトップですか(しかも4回転失敗しているのに)。
私はこれが素晴らしいと思う。

羽生くんのように、生来のオーラとか雰囲気とか舞台上の華がある人って、時折、その資質を全面かつ前面に出す表現をしたいという欲求に駆られるときがあって、そういう場合に技術は後回しになっちゃうことがある。
羽生君が、自分のオーラ・雰囲気・華という天性の素質に見向きもせずに(この見向きもしないところが、また別の魅力を引き出しているんだけど、そこはとりあえず置いておく)、真っ直ぐに技術に目を向けていて、真摯に技術面での加点を狙えるよう努力しているのは、本当に素晴らしいことです。
多くのバレエダンサーも言っていることですが、表現の土台は技術ですから。

私には理由が分からないけど、若手は同じことやってもPCSが低く抑えられる傾向があるそうですね(タクタミちゃんの、「今年はジャッジの評価を上げるための年」との発言の趣旨もそういうことでしょうか)。
羽生君のPCSの評価は、今は高いとはいえないところに抑えられていますが、彼の表現の地力からすれば、技術点と同様に高いPCSを取れる潜在能力は明らかですから、今後が楽しみですね。

そのために、振付やつなぎの部分の更なる洗練を望みたい。特に前半部分のつなぎは、比較すると、ちょっとおざなりで荒い感じがしますので。ただ、ジャンプが多いので気もそぞろになるのだとは思うし、あと全体を通す体力とかスタミナの問題もありますので、やみくもに詰込むだけってのはもちろん駄目でしょうが。
あと、コメント頂いているのですが、PCSを抜本的に上げるためには、SSの指導を別のコーチに仰ぐとか、振付を別の方に頼んでみるとか、そういうことも必要なのかもしれません。後者については、私は今の振付も好きだけれども、表現の幅を広げるためには、別の振付師による振付は今後必須だと思いますね。

とかなんとか色んなこと書いちゃいましたが。
正直、16歳にこれ以上望むのは、要求し過ぎですよね。
ポテンシャル高い人への感想は、ついつい「あれもこれも」になっちゃって、申し訳ないわ~

(なお、震災の影響については敢えて触れないことにしております。悪しからずご了承ください。)

●羽生ゆづる(16歳)日本/映画「ロミオとジュリエット」より
今回のFS合戦において、ガチンスキーさんの耽美に対抗できるのは、われらが羽生くんの悲愴美しかないでしょう、ずばり。転倒した方が美しさがいや増すという、悲愴美の典型的な一類型であります。

2回の転倒(4回転ジャンプとサーキュラーステップの冒頭)で2点減点があったにもかかわらず、技術点はSPに引き続いてトップ。SPのときに書いたからここでは理由は省略するけど、ビバ!であります。

ところで、テレビ放送で、演技途中に無意味に羽生くんのアップの顔が映された瞬間があったけど、ロシアでも彼はハンサムボーイということになっているんでしょうか?

グランプリ・ファイナル(2011年12月)
●羽生君(17歳)/エチュード・イン・D・シャープマイナー
17歳になったのね。おめでとうございます。
演技のときもインタビューの時も少し顔色が悪かったような気がしました。大丈夫だったでしょうか。

つなぎとステップのところで、少し慌ててるような印象がありました。このあたりはご本人がおっしゃっていた雰囲気にのまれた」ようなところがあったのでしょうね。音楽をじっくり聴けずに少々上滑りしちゃった感がある。

4回転ちょっと失敗しましたが、技術点だけなら2位。ご本人は悔しそうでしたが、初めてのシニアのGPFとしては上出来ではないでしょうか。

●羽生君(17歳)/ロミオとジュリエット
羽生君って可愛いなあ。演技が終わってからの、あの感極まったような様子や動作が、なんとも初々しく可愛らしいじゃあないですか。ほんと、可愛い。あれに何も感じなくなったら、私の心が砂漠化したってことだな。これから指標にしよう。

パフォーマンス、もちろんスタンディング・オベーションしたくなる演技でした。テンション上げて思いきり激しく動く様子を観て、何試合かぶりに体力不足を心配したけど、深刻にならなくて良かったです。ただ、今回やっぱり顔色悪いよね。お身体どうぞお大事に。

昨シーズンのいかにも少年期という感じの、ガラス細工のような儚さのある透明感は、確実に減りつつあります(以前申し上げた小さな沢山の鈴の音シャランが、こんなに早く無くなり始めるなんて寂しいという趣旨のコメントを頂きましたが、そうですよね・・・でも期間限定だからこそあそこまで美しかったのですよね…)。
が、それでも、彼の雰囲気は得難いものがあります。

また、長い手足、細い身体、長い首、小さな頭と顔などなど、少女漫画から抜け出してきたような見事なルックス。これも得難い。
私はバレエ見のせいか、表現者の外見の美しさ、ということも手放しで褒めるべきものの1つという感覚があります。ただ、ここは多くの方とずれるところかもしれません。一般に、中身でなく単に外見だけを褒めることは、浅はかな行為と思われているから。でも、正直、表現において「美は力」。これは真実だと思う。

羽生君、ここまで見栄えのする身体をもっていると、昨シーズン・今シーズンのような劇的な音楽&振付でなくても、かなり見栄えのするムーブメントになると思います。しかも、彼は表現の地力が大きいですから、ドラマチックでない抑揚を抑え気味の曲調でも、表現しきれると思います。

とはいえ。
劇的な音楽に乗せて、この華奢な体躯をもった青年とは言えない年代の美少年が、通常この年齢ではあり得ないほどの劇的な振付を、自分の持てるエナジーを最後の一滴まで振り絞るように表出させながら、細部は既に壊れているんじゃないかと思わせるほどのパワーでやり遂げる。
こちら側の人間は、ガラス細工の細部がきしむ音を感じながら、全体が今にも砕け散るんじゃないかとハラハラしながら固唾を飲んで観つつも、そのギリギリのところに圧倒的な美を感じる。
そこに、今の羽生君の真骨頂があることは、否めませんわね。

そして、その美は、羽生君が青年期になると消えていく蓋然性が極めて高い。そうすると、観れるうちに観ておきたいって思うのはこちら側の(勝手ながら)当然の心理で、そうなると、今の路線でしばらくやって~と思っちゃう。

でも、表現者として幅を広げるためには、この路線に安住するのは明らかに×印でしょ。
ああ、悩ましいわぁ(笑)。

全日本(2011年12月)
●羽生ゆづる(17才)/12のエチュードより悲愴byA.スクリャーピン/SP4位 74.32(37.12、37.20)
あらま、最終滑走ですか。そりゃ大変。

うーん、大きく伸びのある動きはあるのだけど、いつもとちょっと違うねえ。
やっぱり4回転失敗して、ジャンプの構成をいろいろ考えなくちゃいけないことがあったりして、気もそぞろになりましたかね。

●羽生結弦(17才)/ロミオとジュリエット/SF167.59(88.59、79.00) 総合3位
まーさーにー、「羽生劇場」、ですな。
一幕ものの作品を観ているようでしたよ。

GPFに続いて最後のジャンプを失敗したが故の、悔しそうな表情そして「この脚のバカ!」と殴る姿が、羽生「選手」の真骨頂ですわね。なんかこれ見るのも楽しみになってるワタクシめでございます。
そして、キスクラから引き上げる時に発した、ラストに滑る中村さんに向けた「健人さんガンバ!」との掛け声が爽やかでした。

またもや顔色が少し悪いようにお見受けしたので、どうぞお体ご自愛ください。
もはや言いたいことはそれだけです。

世界選手権(2012年3月)
●羽生結弦(17歳)日本/「12のエチュード」より「悲愴」byスクリャーピン/7位 77.07(38.68、38.39)
あのね、皆様。言ってもいいかなあ。

私、彼を愛しているかもしれない。

あ、もっと正確に言わないといけませんわね。

私、彼の「美しさ」を愛していると思う。うん。多分、これは愛だと思う。

3回転が1回転になっちゃったけれども、終始一貫して、手足の長さを生かした大きな動きや、振り返ると彼の人生の中で「この年代特有の柔軟性」となるであろう身体の「しなり」は、とても魅力的です。ただ、スローなムーブメントの際に、もう一伸びスケートが伸びると、彼の繊細な雄大さがもっと出るんだろうなあ、と思ったりします。

うふふ。「7位で77.07」なんですよね。ラッキー数字の7つながり。ちょっとゲンが良いなと思ったり。
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by koharu-annex | 2012-04-02 15:29 | フィギュアスケート男子