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by koharu-annex

マクミランの「ロミオとジュリエット」

マクミランの「ロミオとジュリエット」(全3幕)
2011年6月26日(日曜)午後2時~ @新国立劇場

振付: ケネス・マクミラン
作曲: セルゲイ・プロコフィエフ

指揮: 大井剛史
管弦楽: 東京フィルハーモニー管弦楽団

【出演】
ジュリエット: リアン・ベンジャミン(英国ロイヤルバレエ)
ロミオ: セザール・モラレス(英国バーミンガムロイヤルバレエ)
マキューシオ: 福田圭吾
ティボルト: 輪島拓也
ベンヴォーリオ: 菅野英男
パリス: 厚地康雄
キャピレット卿: 森田健太郎
キャピレット夫人: 湯川麻美子
乳母: 遠藤睦子
ロザライン: 川村真樹
大公: 内藤博
ロレンス神父: 石井四郎
モンタギュー卿: 小笠原一真
モンタギュー夫人: 千歳美香子
マンドリン・ソリスト: グレゴリー・バリノフ

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どうでもいいことですが、私達夫婦の席の近くにビントレー氏(新国立劇場のバレエの芸術監督)発見。そういえば、ビントレー氏のトークショー(?)みたいなのがあったよなあ、今日だったのかなあ、とか思いつつたまに拍手の様子を盗み見。

指揮者が、若く活躍が期待されている日本人の大井さんだったからか、いつもより指揮者に対する拍手が大きかったような気がする。踊りに合った良い指揮だったと思うので、今後も頑張って欲しいです。

劇場側に文句垂れたいのは、配布物。配役表は日本語・英語で併記してあるんだけど、幕と場面の説明(それぞれ簡単に荒筋が書いてある)は英文しかない。なんなの、この意味不明のアンバランスさ。用意するならどっちもちゃんと用意すればいいのに。

さて、この舞台、舞台美術と衣装について疑問符がつくところが何点か。
まず、第1幕第1場の市場のシーン。なんであんなに空中にも地面にも鳥かごが大量に置かれているの?市場だったらもっといろんな物売りとかお店があってもよいのに。なに、鳥かごって!?
第2幕での市場のシーンでは、鳥かごは全部消えてたけど、物売りやお店は全くないの。これはつまらないわね。既存の知識がないと、「ここは市場」とは思えないと思うわよ。は~
ちなみに、第1幕第1場の冒頭、あまりに暗くて「節電!?」と思っちゃいました。

次に衣装。この舞台、バーミンガム・ロイヤルから衣装を借りてるんだけど、本当にちゃんと一式そろえて貸して頂けたのかしらん?
モンタギュー卿のマントは足首まである長さなのに、キャピレット卿だけでなくヴェローナ大公のマントが膝丈というのは、明らかにアンバランス。マント3枚のうち2枚が膝丈、残り1枚が足首までの丈なら、足首までの長さのものが大公用じゃない???威厳に欠ける大公の衣装でした。

第2幕のマンドリンダンスの方々の衣装は一体なに?! 色の入ったビーズ(?)でできた無数の紐のようなものがぶら下がった着ぐるみなんだけど、「猿の惑星」かと思ったよ! 回転するとビーズ紐が地面と平行に浮き上がるので、そろうと一瞬キレイなんだけど、終わると「虹色の毛をもつ猿の集団」にしか見えない・・・。

ジュリエットを踊ったリアン・ベンジャミンさんは、小柄で華奢ながら、細く長い手足と均整のとれたスタイルをもったダンサーです。旦那は好みじゃなかったようですが、細部はがさつなところがありつつも、おてんばで好奇心旺盛なジュリエットを好演していたと思います。特に可愛いなあ、と思ったのは、第1幕で大人達がダンスしているボールルームに入ってきたときのジュリエット。大人の仲間入りをするときの、おもはゆいような高揚感がすごく出ていました。
ただ、このとき残念だったのは、マンドリンの音に遅れてしまったことです。ジュリエットが弾いてるはずのマンドリンの音が、オケで鳴り始めてから椅子に向かってしまい、明らかにタイミングが遅れてしまいました(もちろん、そんなことおくびにも出さずに優雅に移動していましたが。さすがベテラン!)。

ロミオ役のモラレスさんは、この役が良く似合っていました。技術も高いです。キャピレット家の前で、ロミオ、マキューシオ、ベンヴォリオの3人がそろって連続したステップを踏んで踊る場面は、とっても難しくて、多くの場合、中央のロミオが姿勢も含めて一番上手で(当然ですが、ここでは残酷なほど浮き彫りになります)、マキューシオとベンヴォリオのどちらかが遅れちゃう、というのが世の常ですが、今回もそうでした。見ながら、本当にモラレスさんは上手だなあ~と思いましたことよ。超絶技巧のある舞台も見たいですねえ。

ティボルトの輪島さんは、意地悪でねちっこい嫌な野郎を好演。キャピレット卿の森田さんは相変わらずちょっとギャグっちく、キャピレット夫人の湯川さんは「極妻」な雰囲気でようございました。彼女にどなたか「極妻」系の踊りを振付けて下さらないかしらね。とても似合うと思います。

娼婦の踊りは、猥雑さがちょっと足りないかなと思いました。日本人はこういうところが実はちょっと苦手ですよね。お行儀悪い感じがあまり出ないというか(いんだか悪いんだか)。

舞台によっては存在感の薄いパリスですが、今回の舞台では、キャピレット家のパーティーで玄関前でお出迎えをする場面にも、お開きでお客様をお送りする場面にも出てきて、ちょこちょこと存在をアピールしていました。こういう細かい演出があるとちょっと嬉しいです。

ジュリエットのショールの色は水色に灰色が加わったような色で、3回忌の法事に来ていく色無地にちょうどよいような色味。この少女の悲劇にあうのは、薄い中にもこのような少し「陰」のイメージがある色だと思います。

ジュリエットが寝室を抜け出しロレンスのところに急いでいくとき、舞台の奥に設置したカーテンの向こう側を下手から上手に走らせていました。ショールをなびかせて走っていくジュリエットのシルエットが、カーテンにくっきりと浮かび上がり、不幸に向かって歯車が動き出したにもかかわらず、それに気付かず、まっしぐらに「救い」と思うところに走っていく悲劇が示されているようで、印象的でした。

第3幕第4場のキャピレット家のfamily crypt(一族の墓地というか地下の埋葬のためのお堂みたいなところ)には、3つの遺体が並んでいて、ジュリエットは中央に寝かされています。ロミオは葬儀の列にまぎれて入ってきて、下手側の安置台の影に隠れています。
通常はジュリエットだけが安置されていて、しかもロミオはどうやったんだか葬儀の後にスムーズに走り込んでくる、という流れが多いと思います。それに比べると、ジュリエット以外の遺体があることも、安置台の影に隠れることも、リアリティがあるとは思います。けど、微妙に怖かったのでした・・・。
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by koharu-annex | 2011-07-15 22:42 | バレエ(新国立劇場)