もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

2011世界選手権 女子SP

フジテレビで視聴したのですが、うーん。
日本開催ということを意識して作った冒頭映像だったのでしょうけど、和物のモチーフを駆使してもなぜか安っぽさが漂うのはなぜ?

あとね。致命的に安っぽさが出てたのが、気の毒ながらヨナちゃんのとこね。
ヨナちゃんが久しぶりに復活ってことに触れる際、最初に能面が出てくるんだけど、そこで「最強の姫がめんをとる」ってナレーションが入ったのよね。

能面の「面」を、「めん」と呼ぶのは完全な間違いとは言わないけど、正しくは「おもて」だから!
しかも、仮面劇である能において「面を取る」ってのは、パフォーマンスが終わって揚幕の後ろに引き上げた後、その奥の鏡の間で行われる事です。競技開始とは正反対に位置する事柄であって、間抜け極まりない。
中高生の文化祭での映像ならいざ知らず、これ、テレビで放送するのアホすぎるでしょ。
ついでに言っちゃうと、映し出された能面はおそらく「増女」だけど、ヨナちゃんなら「万媚」の方が似合うと思う。

ということで、フジテレビの教養のなさがかな~りトホホ、ってことは指摘しておきたいと思う。

まったく関係ないけど、消臭力のCMの少年の歌声は好きだな。

では、雑感。

●イーラ・ファヌトさん (ベルギー)16才
SP:ウーマン・イン・ベルリン
次これやって、その次あれやって・・・と振付を考えていることが、見てる側にも分かるってとこも含めて、若いなあ。。。という感じでしょうか。

●ヘッケンさん (ドイツ)17才
SP:タンゴ・デ・ロス・エクシラドス
衣装も素敵で美しい方ですね。
やりたいことは分かりますしメリハリや緩急も付けているのですが、その付け方のポイントが微妙にずれることがあって、惜しいと思いました。
ポージングのキレや強さ、といったものは、若干足りないかな、という感じです。

●ヘルゲソン姉妹(フィンランド←スウェーデン。コメント欄でご指摘受けました。何故だか間違えててすんません) 22才・17才
お姉さんの方は、ミスも多かったですが、音楽はよく捉えていたと思います。
妹さんの方は、お姉さんよりも体型がかなり大柄で、動きの印象が「まったり」なところがあります。後半、楽曲のテンポがかなり速くなると、細かく音取りしていくのが苦しくなりましたね。

●レオノワさん
衣装の基調色を、濁ったピンクからビビッドな黄緑に変更。髪型もカーリーに変更。
いずれも変更後の方が彼女に似合っていたと思います。
今シーズンの中では、一番よく動けていましたし、なんといっても身体のコントロールがちゃんとできていて、とても良かったのではないでしょうか。

●コストナーさん
すごく調子が良かったのではないでしょうか。
コストナーさんもヘルゲソン(妹)さんと同じく、大柄で、特に調子が悪いと「まったり」感が前面に出ちゃうんですけど、今回は、軽やかさすら感じる部分もあったほどです。
身体がよく動いていて、鑑賞者も乗りが出てきたところで、ジャンプで転倒したのは本当に惜しかったと思います。

●マカロワさん
レオノワさんと同様、彼女もよく動いていました。お若い2人ですから、ホームの強さもあるのかもしれないですね。

が、テンポがあまりにも速い楽曲なので、完璧にムーブメントを合わせていくのは、難しいのではないでしょうか。観客が乗ってくれることを期待したのでしょうけども、本人が息切れしてることは明らかで、なんでここまで速い曲を使ったのか、ちょっと疑問に感じるところです。

●コルピさん
最後の虹をかけるような動きが、ちょっとファンタジックで素敵ですよね。
ドロシーじゃなくて、やはり白い魔女なんだろうな、彼女のイメージは。

●日本勢
男子の時にも書きましたが(こちら)、やはり日本勢は抱えてるものが他国の選手と明らかに違いますよ。

出場選手3人の世界選手権での演技は、今シーズンの彼女らの演技(&その推移)と比較すると、シーズン当初の手探り状態の時よりもいずれも出来が悪いと思います。
世界選手権だけ見たという方がおそらくいらっしゃると思うので、念のため書いておきますが、安藤さんの今季のパフォーマンスは、あんなもんじゃなかったんですよ。まさに凄みを感じるほどの抜きんでたものだったんです。

これは、震災の影響以外考えられません。実際、震災後心身の不調を訴えている国民がいかに多いことか。
しかも、身体表現者というのは、その多くが感受性豊かです。加えて、彼女たちはまだ10代あるいは20歳前後の若さです。影響を受けるな、あるいは落ち込んだ気持ちを押さえこめ、とにかく浮上しろ、などというのが無理な話です。

プロスポーツ選手、しかもチームスポーツの選手である野球やサッカーの選手ですら、数週間レベルで落ち込んでいたんですよ。それを考えると、よくぞこの世界選手権の氷上に立ってくれたと、それだけで落涙ものです。

◎かなこちゃん
衣装をモノトーンに変えましたね。おそらく震災前から用意していたのでしょうけど、色があった方が気持ちが少し明るくなれたかもしれません・・・。

表情に暗さがあり、動きもはじけ切れてない印象でした。
表情にある暗さと動きの重さが、緊張だけじゃない気持ちの落ち込み(本人が自覚しているかどうかはさておき)を表しているようでした。

点数がなぜだか随分抑えられた印象で、気の毒でした。

◎安藤さん
何度も書いてるけど、私は今季の安藤さんの演目はとても好きです。
そして、なんといっても今季の安藤さんの人間的成長と充足感に裏打ちされた安定感のある演技は、どういう言葉を使って賞賛しても賞賛し過ぎることはないと思います。いつだったか私は、演技する安藤さんの向こう側に澄み切った湖が見えるようだと、「明鏡止水」という言葉も使って褒め称えたと思いますが、今回は、さらに、彼女のその湖のような安定した心持から湧き上がる、悲哀さえも包み込む愛を感じます。

上で書いたように、演技の出来自体としては今シーズンの中で良いものとは言えず、本人もおっしゃっていたとおり本来のスピード感にも欠けていたと思います。
しかし、彼女から溢れ出る情感は、それを補って余りあるものがありました。ネッラ・ファンタジアの楽曲が鳴り始め、安藤さんが動き始めたところから、私はうるうるきちゃったほどです。音楽との親和性は、ばっちり過ぎるほどばっちりでした。

本来、安藤さんは、演技の中で自己の感情をコントロールして表出することが得意なタイプではなかったと思います。(出したい情感は出ず、むしろ出したくないマイナス感情やむらっ気などがそのままもろに出ちゃうような、要するにあまり表現の地力が強くないタイプ)
コツコツと技術を磨き、人格を磨き、感情をコントロールすることを覚え、ここまで成長するのは並大抵ではないと思いますよ。もちろん、コーチとの相性や現状の「人」としての生活に充足感があってこそ、なんでしょうけど。

なお、今回あらためて感じたのですが、ぶんぶん丸などと呼ばれていた、欠点の多い腕の動き(故障している肩の影響もありますよね)をフォローするために、上半身や身体全体を連動させて反転させるなど大きく動かすムーブメントが振付に多く組み込まれているのですね。これは、身体のコントロール力がないと到底できない動きで、安藤さんの身体能力の高さがうかがえます。

◎まおちゃん
皆様が感じたことだと思うけど、真央ちゃんの細さに・・・愕然。
いやもう、本当に身体が心配ですよ。わたくし、焼き肉持ってどこでもドアで駆け付けたかったよ!!
震災の報道に接して食が細くなっちゃった人は、私の周りにも沢山いたけど・・・真央ちゃんのようにぴったりとした衣装を着るとあまりにもあからさまに分かり過ぎて、本当に痛々しいほどでした。

安藤さんとは違う意味で、涙が出てきちゃいましたよ。
この細さでは、演技に必要な基礎的な体力がもたないと思います。にもかかわらず、よく頑張りましたよ。
今回の私の感想としては、このような状態であるにもかかわらず、出場してくれた真央ちゃんの心意気を賞賛することにとどめたいと思います。演技について、云々言うことはできません。とにかく、よく食べよく寝て、まずは身体をいたわって下さい。

あと、衣装担当者に文句垂れておかねば。
旦那が絶句してようやく絞りだした言葉が「キッコウ・・・」でした(分かってると思うけど、着物のめでたい柄の方じゃないですから)。誰がどう決めたのか知らないけど、もう本当に・・・いい加減にして。赤の使い方も最悪。真央ちゃんだけじゃなく、誰にも似合わんだろうが。(真央ちゃんじゃなかったら、超下品に転んでいたと思う)

●ヨナちゃん
衣装やジゼルの解釈については既に書いたので(こちら)、今回は、身体表現そのものについて。

昨年も書いたんだけど、ヨナちゃんって「動く」こと自体がちょっと苦手だし、柔軟性等の点で身体能力的にも限界があるので、狂乱をダイレクトに「動き」で表すような多彩なムーブメントをこなすことはまず不可能です。実際、ヨナちゃんの演技には、そのようなムーブメントはほぼ皆無と言ってよいと思います。

加えて、彼女は、高いレベルの表現者が持ってる「自分以外の何者か」になれる能力というのは、残念ながら持ち合わせていない。したがって、ヨナちゃんが行うことができるごく限られた動きから、「狂乱するジゼル」に関する情感を表出するということは、彼女にはできません(年取ったバレエダンサーとか高度な表現者にはこれができる人がいる)。

結局のところ、狂乱の場面の音楽という色彩に富んだ劇的で派手な楽曲の雰囲気に合致するように、ヨナちゃんでもやることが可能な動きと、スタイルの良さと手足の長さを生かした得意のポージング、そしてちゃんと観客席までお届けできるよう濃いめのメイクを施したお顔の表情で、演技にメリハリを利かせてみました、という感じでした。

ただ、フィギュアスケート、特に短いSPについて、時間、本人の資質、音楽の効果、これらのバランスを取ると割り切れば、この方針は十分「あり」なのだと思います。だから、仮に、彼女の順位が5位前後くらいだったら、誰も何の文句も付けないんだと思う。私がここで、「狂乱を表現できてなくて、つまらん」と文句垂れてるだけで(笑)。
なぜだか、1位を取ってしまうのが、納得できないところなんでしょうね。確かに安藤さんよりもスピードはありましたが、それだけで失敗も動きの緩慢さもフォローされるって普通に考えて普通に変ですから。

最後にやっぱり書いちゃう。
お腹を押さえることは苦悶を表したいとのだと思うのだけど、バレエ見としてはジゼルに一切ない「お腹を押さえる」ということをやらかされると、「下痢!?」としか思えなかったよ。音楽もちょうど音が急降下するところだったし。。。(昔、「お腹の急降下、下痢をストップ」ってCMがあったなあ)
[PR]
by koharu-annex | 2011-05-02 13:18 | 2010-2011 フィギュアスケート