人気ブログランキング | 話題のタグを見る

もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

闇に落ちたジゼル

男子FPの雑感を途中まで書いたんですけど、おそらく私に求められているのはこちらだろうと思いますので(笑)、とりあえず先に、キムヨナちゃんのジゼルについて、私の感想をあげておきます。

テレビ放送では、出番よりも前に練習やアップ風景が出るじゃないですか。そこで、ヨナちゃんの衣装を見たとき、私、ドン引きしちゃったんですよね。

上半身は紺でワンショルダー(肌色部分は無視ね)でキラキラさせてて、スカートは黒(あるいは限りなく黒に近い濃い~紺)。

これでジゼルですと!?、とちょっと混乱して動揺しちゃいましたよ。おそらく、バレエ「ジゼル」の衣装を把握している多くの方も同様だったのではないでしょうか。

無理矢理ジゼルと結び付けられるものがあるとしたら、ジゼル第1幕の衣装の胴着部分が水色~青を使うことが多く、「紺」がその延長線上にある色である、ということくらいです。

でも、あの衣装はストレートに「夜」のイメージで、バレエでいうならむしろ「こうもり」ですよ。オペラなら、夜の女王とか・・・
どうするつもりなんじゃ~?と思いながら、ヨナちゃんの演技が始まったのでありました。

音楽が鳴り出した途端・・・その音楽は、以前書いたとおり、狂乱の部分の音楽で、わたくし、あっ!と声をあげてしまったのでありますよ。


この衣装は、ジゼルの心の闇を表している!


と感じたわけです。

ワンショルダーは引き裂かれたジゼルの心の形状を暗に示しているようで、キラキラさせて夜の衣装のように見えた部分は、砕け散っていく心や涙を表しているようでもあり・・・。そこが濃紺であることは、その心がジゼルのものであったことの名残を示しているようです。そして、黒いスカートは、闇にズドーンと落ちていくジゼルの砕けた心の色をそのまま引き写したようです。

あの衣装は、バレエ「ジゼル」の具体的な衣装を模したものではなく、恋人の裏切りを知り、闇に落ちていくジゼルの心のうちを抽象的に表したものであると思いました。
あぁ、なるほどな~。良く考えてるなあ~。とワタクシ、感心した次第。

ヨナちゃんの「ジゼル」は、バレエ「ジゼル」の中から「闇に落ちていくジゼル」だけを取り出したものだと把握することが可能です。これは、陰陽で分けると完全に「陰」ですから、これまた完全に「陰」に分類されるヨナちゃんの本来的な性質と一致します。

実際、音楽は、9割以上をバレエ「ジゼル」第1幕ラストの狂乱の場面から取っています。唯一の例外は、第2幕ラストの「夜明け」のシーンの音楽(鐘の音が入っている部分です)がごく一部のみ採用されていること。
この夜明けの音楽は少しだけ周囲を明るくするイメージなので、その際、ヨナちゃんも「もしかして好転する?」というような顔をします。が、直後にまた狂乱の音楽に戻るので、ヨナちゃんもまた「やっぱりダメか~」的な顔をします(笑)。そして、あとはひたすら、狂乱の場面の音楽が続きます。

バレエでは、狂乱の場面でジゼルは発狂していますから、硬直した動きとか、不器用な動きとか、ぎこちない動きが多く見られます。柔らかくなめらかな動きは殆どないといっていいでしょう。

この狂乱の場面のムーブメントの特徴は、ヨナちゃんの身体のタイプに良く合う。
彼女は、ちゃきちゃき動くというタイプではありませんし、いわゆる「柔らかい動き」も身体能力的に難しいです(昨年から書いているとおり柔軟性、特に肩や肩甲骨の稼動域の狭さなどが主な理由)。なので、彼女は、強弱をつけたメリハリで勝負するしかないわけですが、それは、この狂乱の場面を演技するには、良い方向に働くと思います。

しかも、狂乱の場面の音楽は、極めて色彩に富んだドラマチックな音楽なので、演技の後押しをしてくれていました。

もちろん、ヨナちゃんの今回の演技が「メリハリあったね。」という評価を超えて、狂気の演技といえるかという点は、また別問題。以前も書いたけど、なんでお腹を押さえるの?という疑問が沸く動きもあるし(笑)。
さらに狂気さの推移で言えば、夜明けの音楽の後、花占いを思い出すシーンの音楽、剣を引きずり回すシーンの音楽、と進むにしたがって「狂気さ」が増して欲しい、とも思います。
その意味では、まだまだ食い足りない部分が多いです

しかし、彼女のジゼルの「方向性」については、私的には「あり」です。
(私は、バレエについてかなり許容できる範囲が広く、古典バレエの翻案ものも楽しめるタチなので。)

もちろん、彼女のジゼルが「許せん」と思うバレエファンがいらっしゃることは、確実だと思います。その意味で評価が分かれる演目だと思いますし、批判されても甘受すべきであろうとも思います。

なお、バレエ「ジゼル」については、つい最近アップした3つの記事(こちらこちらこちら)をご参照下さい。
by koharu-annex | 2011-04-30 01:07 | 2010-2011 フィギュアスケート