福島原発について
2011年 03月 21日
学年ははもちろん違うんだけど、小学校~高校を通じてずっと私の方が成績が良くて(大学は知らん)、奴は音楽やったり友達と馬鹿なラジオ局をやったり、分かり易く遊び好きのあほだったので、今ひとつ奴の言うことは信用できないけれども、とりあえず。
なお、原文には本人と妻である義姉の名前が入っていましたが、そこは伏せました。
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Koharu兄です。
今、福島原発について、騒がしいですね。
ネットでは、無責任なデマが飛び交い、知識のない人が右往左往しているようです。
Koharu義姉も、文系なので、同様です。
テレビやネットの記事で、分かりやすいものがないか探したのですが、意外とないことに気づきました。
テレビでは、最悪の事態を避けるために放水している、と報道していますが、その最悪の事態が何なのか、全くと言ってよいほど説明していないので、不安を煽る結果になっています。
それで、仕方なく、Koharu義姉を安心させるために、僕なりに今福島原発で起きていることを文章にまとめて読ませました。
僕はmixiというSNSに入っていますが、そこにも同じ文章を載せたところ、ものすごい反響があって、ここ数日で何千人もが訪れています。
それが、下の文章です。
もし、皆さんの周りで不安に思っている方がいたら、この文章を転記して読ませてあげてください。
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今、福島の原発は、全部停止している。
地震による揺れを感知して、原子炉を緊急停止する仕組みは、うまく動作したようだ。
では、なぜ、水素爆発が起きたりしているのか?
それは、核分裂は急には止まらないからだ。
ネットには、様々な情報が氾濫しているけれど、正確で分かりやすい情報は、意外と少ない。
僕は、大学院で原子核理論を専攻していた。
原子力は専門ではないけれど、原理は十分知っている。
付け加えると、僕は原子力発電所については、どちらかと言えば、あまり賛成しない立場だ。
ここで、原子炉の仕組みと、今原発で起こっていることについて、僕なりに分かりやすく説明してみたい。
原子力というのは、ウラン235が核分裂する際に生じるエネルギーを利用している。
ウランには、主に、ウラン238とウラン235の2種類があるが、核反応に利用するのは、ウラン235の方だ。
ウラン235に中性子をぶつけると、ウラン236という原子になる。
ウラン236はとても不安定な核なので、中性子を2,3個放出して、2つの原子に分裂する。
これを核分裂という。
核分裂で放出された中性子を、うまく、他のウラン235にぶつけてやれば、連鎖的にこの反応を発生させることができる。
これを連鎖核反応と言う。
原子爆弾にしろ、原子力にしろ、この連鎖核反応を利用している所までは、同じだ。
原子爆弾では、一瞬で連鎖核反応を起こして、爆発的なエネルギーを発生させるが、
原子力発電では、ゆっくりと連鎖核反応を起こすことで、発電に利用しているのだ。
連鎖核反応(臨界とも言う)を起こすには、一定の条件が必要だ。
1.ウラン235の密度と量
まず、ウラン235の密度とその量がある程度ないと、せっかく発生させた中性子が、ウラン235にぶつかってくれない。
地球上のウランは、その99.3%がウラン238で、ウラン235は0.7%しかない。
原子爆弾では、ウラン235の密度を、90%くらいにしてあるようだ。
原子力発電では、ウラン235の密度を、3%くらいに濃縮している。
だから、原発の燃料では、絶対に核爆発は起きないから安心してほしい。
さて、3%であれば、必ず連鎖反応を起こすわけではなく、必ず一定量必要だ。
これを臨界量と言う。
原子力発電所で利用する燃料棒の1本当たり重さは、それ自体では連鎖反応を起こさないように、臨界量以下になるように調整されている。
複数の燃料棒を一定の距離を置いて配置し、その間に中性子を吸収する物質で出来た制御棒を挟んでいる。
その制御棒を入れたり、出したりして、連鎖核反応を調整しているのだ。
ちなみに、この臨界量を知らずに、燃料をバケツで組み続けた結果が、あのJCOの事故である。
連鎖核反応が発生し、大量の中性子が、作業員3人の命を奪った事故、いや、事件。
驚くべきことに、この会社は、社員に臨界量の教育さえ行っていなかったのだ。
青白く発光する燃料を見た作業員は、何を考えたことだろう・・・。
そして、制御棒が挿入できなくなり、原子炉内の核反応が暴走して爆発した事故が、チェルノブイリだ。
広島原爆の400倍の放射性物質が撒き散らされた、最悪の事故だ。
さて、今回の福島の原発では、地震発生時に、緊急停止が正常に作動し、制御棒が挿入されており、連鎖核反応は止まっている。
その意味で、原子炉は停止しているのだ。
ただ、誤算は、津波で電気系統がダメになり、冷却機能がダメになってしまったことだ。
2.ウラン235にぶつかる中性子の速度
核反応で発生する中性子は、高い運動エネルギーを持っているので、そのままでは、ウラン235が吸収できない。
福島原発のような軽水炉では、中性子の減速材として、水が使われている。
水の中の水素の原子核(つまり陽子)は、中性子とほぼ同じ質量なので、減速材としては最適なのである。
この水は、冷却材も兼ねており、さらにボイラーから蒸気エネルギーとして取り出すことにも利用されている。
さて、現在、福島原発の炉の中の水は・・・水位が下がってしまい、減速材の役割を果たしていない!
つまり、現在の福島原発は、2つの条件ともに満たしていないので、原子炉が停止していることは、まず、間違いない。
では、なぜ、熱が発生して、冷却するために、放水する必要があるのか?
それは、核反応は、1回では終わらないからだ。
ウラン235が分裂すると、中性子を2,3個放出して、2つの原子に分裂する、と書いた。
その2つとは、主に、ストロンチウムと、セシウムまたはヨウ素。
その分裂した原子も、放射性物質であり、β線(電子線)やガンマ線(電磁波)を放出して崩壊いく。
この2次放出の際、またまた熱が発生するのである。
この反応は、すぐに起きるのではなく、数時間から数年かかる。
ほっとくと、どんどん熱が上がり、燃料棒自体が、その熱で溶け出してしまう。
これが、メルトダウン(溶融)である。
その熱を冷まそうと、今一生懸命なのである。
仮に、冷却に失敗したとすると、
燃料が溶けて、燃料棒同士がくっついて、臨界量を超える危険がある、と思うかも知れないが、
冷却水がすべて蒸発しちゃったら、減速材がなくなるので、やはり、連鎖核反応は起きない。
→訂正。減速剤がなくなるので、連鎖核反応が発生する可能性は低い。
(臨界に達する可能性もなくはないけど、現状ではあまり心配することはない)
放射能が漏れ出す危険はあっても、チェルノブイリのように、爆発は起きないので、そこは安心してほしい。
ちなみに、今から20億年前、地球上のウラン235の濃度は、3%程度あった。
そう、その頃は、地球上に、天然の原子炉が存在したのである。
20億年前のウラン鉱床に、天然原子炉の痕跡が見つかっている。
そこでは、ウラン鉱床に水が浸入したときに、連鎖核反応が起きた証拠がはっきりと残されている。
水が蒸発すると、核分裂が止まり、また水が浸入すると、核反応が起きる、ということを繰り返していたらしい。
現在、この天然原子炉の痕跡を手がかりに、放射性廃棄物を地層に廃棄した場合の効果について、検証が行われている。
「え?じゃあ、放水したら、逆に核分裂がはじまっちゃう危険があるんじゃあ?」
と心配しているあなた!
そこは、電力会社もよくわかっているはず。
水には、中性子を吸収するホウ酸を混ぜているし、そもそも、そうした危険がある場合には、放水は行わないはずだ。
放水をするということは、そこまで状況は悪化していないという証拠でもあるのだ。
ただ、僕は、燃料棒を被覆しているジルコニアが、高熱で水と反応して、水素を発生させるとは、知らなかった。
水素爆発は、ちょっと盲点だった。
でも、チェルノブイリのように、大量の放射性物質が、高い濃度で、高い高度まで達して、何100キロ遠方まで汚染する、なんてことは、ちょっと考えられない。
連鎖核反応は終わっていて、今は2次放出が終わるのを待っている段階だ。
その冷却期間は、通常、2.3年もかかる。
もちろん、決して楽観できる状況ではない。
放射能モニタリングによって避難エリアが決まる。
国が設定した、半径20kmの避難エリア、半径30kmの屋内退避エリアは、至極妥当なものだ。
その範囲は、科学的に正しいので、エリア外の人は安心してほしい。