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もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

新国立劇場 「ラ・バヤデール」

新国立劇場バレエ公演 「ラ・バヤデール」(牧阿佐美版)
2011年1月15日(土)午後4時~ @新国立劇場

指揮: アレクセイ・バクラン
管弦楽: 東京交響楽団

【出演】
ニキヤ: 小林ひかる
ソロル: デニス・マトヴィエンコ
ガムザッティ: 厚木三杏
ハイ・ブラーミン: 森田健太郎
マグダヴェヤ: 吉本泰久
黄金の神像(ブロンズ・アイドル): 福岡雄大
トロラグヴァ: 貝川鐵夫
ラジャー(王侯): 逸見智彦
ジャンペの踊り: 井倉真未、大和雅美
つぼの踊り: 湯川麻美子
パ・ダクション ブルーチュチュ: 西川貴子、寺島まゆみ、丸尾孝子、本島美和
パ・ダクション ピンクチュチュ: さいとう美帆、高橋有里、西山裕子、米沢唯
アダジオ: マイレン・トレウバエフ、菅野英男
第1ヴァリエーション: 寺島まゆみ
第2ヴァリエーション: 西川貴子
第3ヴァリエーション: 丸尾孝子

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2008年にザハロワさんが主役だった舞台の印象が強く残っています。
ただ、今回調べてみたら2008年の公演レビューを書くのを失念していることが判明したのですが。まあ、よくやるんですけどね、ははは。

今回もシーズンチケットを購入する時点(昨年2月頭)で、ザハロワさんが踊る日を指定していたのですが、なんと昨年9月、ザハロワさんの降板が発表になりました。
もう騒然ですよ。通常、4ヶ月前に降板が発表されるなんてあり得ませんから。昨年1月の白鳥も直前に降板されていたので、慢性的なご病気なのか、それともご懐妊されたのか・・・等々噂が飛び交いました。

が、最終的には後者で、12月にはご結婚相手がヴァイオリニストのレーピンさんだということが明らかになりました。本当に良かったです。彼女の幸せと安産を心からお祈りしています。
出産後復帰なさるご予定らしく、来季の新国のシーズンチケットの案内で、2012年5月「白鳥の湖」キャスト中にザハロワさんが入っていました。楽しみに待っています。

さて、バヤデールは、振付家や演出によっていろんなバージョンがあります。個々のモチーフはほぼ決まっているんですが、順番とか構成が入れ替わったり削除されたりしますし、ラストも違いますね。誰でも分かり易い違いは、ブロンズアイドルの踊りをどこにもってくるか、ということでしょうか。
(ちなみに、ブロンズアイドルは、ロイヤル時代の熊川さんの十八番のひとつでした。映像でしか見たことないけど、これはすごかった!今でも世界一だと思う。)

私は、牧さんバージョンのバヤデールは、割と好きですね。
無理がない運びで、ビントレーが上演してくれるのも分かる気がする。

以下、ダンサーについて

●小林ひかるさん
ザハロワさんに代わったのは、英国ロイヤルの小林ひかるさんです。
私は初見のダンサーなのですが、登場して踊り始めた瞬間、私が思ったことは、「あぁ、この人のドンキを観たかったな」、ということでした。同時に、「今回、この舞台でのニキヤはつらいなあ」、とも。
もちろん、こういうときに、代役のダンサーと以前のダンサーを比べちゃいかんことは、十分に承知しているのだけど、小林さんのニキヤは、なんというか、やっぱり物足りない。

ザハロワさんは、「でか!」と毎回思っちゃうほど大柄なダンサーですが(私は彼女の広い肩幅が若干苦手)、小林さんはとても小柄で、「ちっちゃ!」と思っちゃいました。(ちなみに、新国はコールドの身長を163センチ以上と定めています。)

ただ、もちろん身長だけじゃないですね。
ザハロワさんのニキヤの登場場面は、非常に印象的なんですよね。人間離れした手足の長さと美貌から、「そりゃ、ハイ・ブラーミンも妄執するわ」、という点を鑑賞者に有無も言わせず納得させてしまう、圧倒的なオーラがある。
これに対して、小林さんは、一瞬で「キトリがぴったり!」と思わせるタイプ。村娘オンリーの庶民派とまでは言わないけれど、元気でお茶目で可愛い!って感じの役柄が合う印象です。

もちろん、ニキヤは踊り子さんだから、お姫様グループではなく庶民グループに入るといえばそうなんですが。
そうはいっても、ニキヤには、僧侶たるハイ・ブラーミンを虜にするある種の色気の要素と、ガムザッティ側に仕込まれた毒蛇に噛まれた際、ハイ・ブラーミンから「私のものになるのであれば解毒剤を飲ませて助けてやる」と言われても、それを断固として拒絶して死んでいく、気高く高潔な要素は欲しいわけで。
それらについては、少なくともこの舞台の小林さんには、ちょっと足りない。

あと、書いておきたいのは、体型のタイプ。
小林さんは、鳩胸で且つ背中のS字がきつく感じられるほどぐーんと胸を開くので、肩と腕をかなり後ろに引くタイプ。そのため、見かけ上、胴体上部に厚みが感じられると同時に、肩と腕がかなり後ろについているように見える。正統派の姿勢だとは思いませんが、小林さんの「首が短い」という欠点が、これで随分フォローされていると感じました。

これが、ガムザッティを演じた厚木さんと好対照。厚木さんは、ちょっとアンバランスなほど首が長い反面、背中のS字が比較的まっすぐ~若干猫背気味で、且つ肩が前に巻いてますから。そのせいで、首のラインはきれいでも、ふとした瞬間に姿勢が一瞬悪くなり「なんか変?」と思わせることが時折ある。

今回、小林さんと厚木さんという、極端に異なる体型のダンサー2人が、舞台上で「もみ合う」場面があったせいで、「私は小林さんのタイプの方がむしろ好きなんだな~」と発見したのでした。

●厚木さん
ガムザッティの高慢ちきなところが、とてもよく出てました。

彼女は、このあいだのシンデレラで「冬の精」を踊っていたのですが、彼女には、妙な気高さと怜悧さがある。
これは上で述べた体型のタイプも手伝っているのだと思いますが(特に首の長さと体の薄さ)、この妙に周りを「しん」とさせる雰囲気が、彼女を実物の何倍も美しく見せるの。不思議。まさに「冬」がぴったり。

この雰囲気は、捨て難いと思いますね。決して技術が高い踊り手じゃないのだけど、時折、主役に抜擢されるのは、この雰囲気なんだろうなあ~と思ったりもします。

●マトヴィエンコ
観客席がイマイチ温まってないのを、敏感に感じ取ってたんでしょうねえ~。えらい張り切りようでした。まさに「ハッスル」という言葉がぴったりなほど。ソロルなのに(笑)。
本当に、笑っちゃうほど嬉しかったな。いい人なんだろうなあ、マトヴィエンコ。

●森田さん
この人って、そんな気全くなくても本来的に「ギャグっちい」というか、真面目にやってても滑稽な雰囲気が出るんですよね。童顔の上に、肉質がちょっとぷにぷにしてるから? なのに、それを生かしきれてなくて、いつも惜しいなあと思う。

平き直って「ギャグ」な自分を自覚して、面白系の演技を勉強すればいいのに。ハイブラーミン、ギャグると超面白いキャラなんだぞ。
by koharu-annex | 2011-02-10 22:42 | バレエ(新国立劇場)