もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

アメリカ杯 雑感 その4

アメリカ杯 11月12日~14日
男子 ショート&フリー その3

●高橋大輔(24才) 日本
SPはある恋の物語、エル・マンボほか。
今回は、NHK杯のときのような音楽の早取りをせず、ねちっこさを見せつつジャストで音取りしていたので、見栄えの良い出来だと思いながら見ていました。
が、ステップのところで若干遅れが出てましたし、後半は身体が重そうだなという印象がやっぱりありました。
原因は、動きのハードさでしょうか。

FPは、ブエノスアイレスの冬。
ジャンプの調子はかなり悪かったようですが、舞踊的な面からみると、かなり身体はキレてる印象でした。
いや、もうキレキレ。

緩急、タメ、そして絶妙のタイミングで決めるポージングも、NHKより良いどころか、「抜群」と言って良いのではないでしょうか。
滑り込んで踊り込んだ賜物なんでしょうけども、1つ1つのムーブメントも、決めのポーズも、全てがほぼ理想的なフォルムでコントロールされてるように見えました。
そのため、そこからかもし出される、舞踊としての美しさ、カッコ良さは、他の追随を許さないレベルでした。
また、スローパートの情感の乗り具合は、まさに別次元で、「圧巻」と言っても良いと思います。

ただ、ジャンプの失敗の影響か、それとも純粋にスタミナが足りなかっただけかは分かりませんが、後半にスピードが落ちてしまったことは、やはり検討課題でしょうか。

ところで。
このFPでは、高橋さんのジャンプの調子って、ぶっちゃけたところ、相当悪かったじゃないですか。
それを見て心配するアナウンサーに対して、解説の佐野さんが、「彼には演技構成点がありますから。」という趣旨のことをおっしゃったでしょう?
これは要するにジャンプやスピンなどの技術的な面で遅れをとっても、演技構成点でフォローできるし逆転も可能、ということでしょう?

もちろん佐野さんは独善的な解釈でそう言ったのではなく、今の採点基準ではそういうことが可能で、かつ高橋選手にはこれまでもそういうことがあったから、そのように言ったわけですよね。
実際、このFPの高橋さんの演技構成点、すごく高かった。

この点、高橋さんの今回のFPの演技構成点が、「他のスケーターに比べて圧倒的に高い」、ということには全く問題はないと思います。
スケーティング技術についてはコメントを控えますが、その他の項目(要素のつなぎ、演技力/遂行力、振り付け、曲の解釈)については、上述したとおり高橋さんは抜きん出ていましたから。

問題は、技術点と演技構成点の比率が、これでいいのか?ってことです。

私はご存知のとおりフィギュアスケートの採点基準については詳しくないですけれども、例えばバレエでも、技術で失敗しちゃったら、評価としては「ダメ」なんですよ。

例えば、ジゼルの2幕のアルブレヒト。
いくら、ジゼルへの愛と自分の行動への後悔といった情感をたっぷり乗せて演技ができて観客の涙を誘ったとしても、ウィリ達に踊り殺されそうになる「舞踊面での名場面」で、ジャンプと回転(ここは専門用語を敢えて出しません)に失敗したら、それはアルブレヒトのパフォーマンスとしては、圧倒的にマイナスなんです。

もう1つ例えば、ドン・キホーテのバジル。
いくら明るくお調子者でちょっと女好きのバジルを、お芝居の要素が強い小さなダンスやマイムの連続部分で表せたとしても、「舞踊面での見せ所」である、キトリをリフトするところやソロでの回転・ジャンプで失敗したら、それは、バジルのパフォーマンスとしてはダメです。

こういう場合、評価としては、「ダメだったけど、情感は感じられた。」「ダメだったけど、バジルの雰囲気は良く出てた。」、というレベルのものが与えられるだけです。
つまり、技術がダメなら、あとがどんなによくてもパフォーマンスとしてはダメなんですよ。

少なくとも私は基本的にこういう価値観でバレエを見ていますから、上記の佐野さんの言葉が端的に表している、今のフィギュアスケートの採点基準が、ちょっと引っかかる次第。
もう少し技術点が重視されるべきじゃないかな、というのが私の率直な感想。

この点、もし技術点と演技構成点の比率が変更され、より技術重視になった場合、高橋選手への点数が今よりも下がっちゃうという懸念はあるかもしれません。
が、その解決方法は単純明快。
「高橋選手が、技術をもっと安定して出せるようになればいいじゃん。」ってな話じゃないですか。
余計なことかもしれないけど、今の採点基準であっても、高橋選手は技術面をもっと安定させた方が良いと思うぞ。

余計ついでに言うと。
以前、技術は身体表現の大前提だ、だからフィギュアが芸術かスポーツかというのはトンチンカンな問題設定であり、芸術カテゴリであっても技術は絶対的である、という趣旨の記事を書きました(こちら)。
これを別の視点からいうと、レベルの高い身体表現者の最も土台となる基礎っていうのは、「技術をある一定の高いレベルで安定して常に出せること」にある、ということになります。
動きに情感を込めたり何らかの色付けをしたりすることは、その安定した技術の上に乗っかるものなので、順番としては技術の次、です。

高橋選手の今季は、その「技術の次にくる部分」を集中して頑張ってる印象です。
それはそれで魅力的なパフォーマンスを見せる結果に繋がってると思うし、実際、私自身も「これが高橋!」みたいな圧巻の踊り心と表現の地力を見せつけられて感服&感激しております。
しかし、今回のFPを見て、技術面がおろそかになったら元も子もないぞ、という一抹の不安を抱いたのでありました。

さて・・・GPFはどうなるでしょうね。

●織田信成(23才) 日本
信ちゃんについては、カナダ杯のときに書いたように、別記事でまとめたいと思います。
が、一点だけ。

高橋さんのFPを見て、上述したような感想を抱いたワタクシ。
信ちゃんが逆転されたことを見て、技術点と演技構成点の比率の問題がここで顕在化したのか?、と思ったのです、当初は。
そう、当初は。

後になって、ニュース報道で、信ちゃんがジャンプ構成を演技中に変えてしまって、「余計に飛び過ぎ」という以前にもやってしまった失敗を繰り返してしまった結果、ジャンプがゼロ点になってしまったことを知り、立腹しましたわ~~~
1点でも入ってたら、信ちゃんが金だったんでしょう?

信ちゃんは、ここで2つのものを失ったんですよ。
1つは、言わずもがなの金メダル。
もう1つは、「技術が高けりゃ高橋に勝てる」と世に知らしめる絶好の機会の完全な逸失。

前者も痛いが、後者も痛い。
本当に痛いよ。。。
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by koharu-annex | 2010-11-22 23:20 | 2010-2011 フィギュアスケート