もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

エトワール・ガラ2010 Bプログラム

*現在も旅行中です。この記事の感想部分も前回(Aプロ)に引き続き旅先で書いてますので、後日、パンフレットを見て加筆するかもしれません。


エトワール・ガラ2010 Bプログラム
2010年7月31日(土)午後2時~ @Bunkamura オーチャードホール

【第1部】

●「コッペリア」第2幕 《日本初演》
振付: J.ギヨーム・バール
音楽: L.ドリーブ
出演: ドロテ・ジルベール、ジョシュア・オファルト

ジルベールさんが可愛かった。
オファルトさんは、もう少し頑張って下さい、ということで。


●「ロミオとジュリエット」よりバルコニーのシーン
振付: K.マクミラン
音楽: S.プロコフィエフ
出演: エフゲーニヤ・オブラスツォーワ、マチュー・ガニオ

この2人は、いずれも所属カンパニーの関係から、マクミラン版は踊り慣れていないのではないかと思います。

特徴的な腕を絡ませるシーン(ロミオが上に伸ばした腕に、ジュリエットが自分の腕を絡ませる)など、振付から外れてはいないんだけど、その意味するところについては未消化な印象です。
また、いくつも繰り出されるマクミラン特有のリフトの場面では、2人とも振付はこなしているんだけど、動きがぎこちなく危うい。

そのため、世の中のPDDの中で特に人気のあるものの1つである、ロミジュリのバルコニーのPDDなのに、拍手が少なめでした。
マクミラン版は、日本人が最も親しんでいるバージョンなので、上のような特徴的なシーンやリフトで「こなれていない」感じが出てしまうと、どうしても評価が下がってしまうのですよね・・・。

ただ、オブラスツォーワ&ガニオさんのカップルは、初々しい感じが出ていて、私は好きな組み合わせでした。


●「フラジル・ヴェッセル」 《日本初演》
振付: J.ブベニチェク
音楽・ S.ラフマニノフ
出演: シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ、イリ・ブベニチェク

パ・ド・トロワ(3人の踊り)って、振付けるのも踊るのも、案外、立体的で難しいと思うのですよね。
群舞よりもむしろパ・ド・トロワの方が、幾何学的な思考が必要なのではないか?と勝手に想像しております。

この作品の音楽は、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番の第2楽章なのです。
超有名曲だけに、振付がしょぼいと音楽だけが悪目立ちしちゃう結果になったと思いますが、ブベニチェク氏のこの作品は、どこかどうとは言い難いのですが、何だか妙にはまっていて良かったです。

彼の振付って、とんがりきらずに、適当なところで(というと語弊があるけど)観客側と折り合いをつける感じなのですが、それでいて、「平凡な振付」と切って捨てるのはもったいないと感じさせる何かが確実にありますので、現代作品としての満足感もちゃんと得られます。

多くの人にとっては、コンテンポラリー系のダンスは、このくらいのバランスが良いのではないでしょうか。後世どれくらいまで残るかは別にして。


●「プルースト~失われたときを求めて」より囚われの女
振付: R.プティ
音楽: C.サン=サーンス
出演: エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

とある男女のむなしい関係をアバニャート&ペッシュさんが好演。

舞台下手よりに、幅2メートル程度の長く白い薄手のカーテンが垂らされています。このカーテンが、作品の最後で、上からはらりと落ちてくる演出だったのですが、それが、その後の男女の結末を暗示するかのようで、切なくて良かったです。


●「ディーヴァ」
振付: C.カールソン
音楽: U.ジョルダーノ
出演: マリ=アニエス・ジロ

マリア・カラスの「亡くなった母を」をバックに、ジロ女史が職人系の踊りを披露。

衣装はシンプルなストンとしたロングドレスなのですが、このドレスの上半身のデザイン(アメリカンスリーブの変形)が、ただでさえガッチリしているジロさんの肩~上腕二等筋のごつさや大胸筋の発達具合を強調していました。
こだわりがあるのでなければ、次回からは変えた方が良いのではないかしら。
彼女の肩~腕~胸の筋肉とごつさに、無駄に視線を集めちゃうので。


【第2部】
~バレエ・リュスへのオマージュ~
●「薔薇の精」
振付: M.フォーキン
音楽: C.M.フォン・ウェーバー
編曲: H.ベルリオーズ
出演: エフゲーニヤ・オブラスツォーワ、マチアス・エイマン

エイマンさんは、跳躍は極めてひっじょーにいいのですけど(どよめきが立つほど)、回転がちょっと不安定ですね。何でもない回転なのに軸がぶれることがある(何でもなくない回転のときは、たいていぶれる)。

Aプロ・Bプロ通じてそう感じたのですが、3月に拝見したオペラ座の「シンデレラ」(こちら参照)のダンス教師役のときはそのような印象はないので、今回は調子が悪かっただけかもしれませんが。

最後の場面での窓から飛び出す跳躍は、少し遠慮気味なものでした。ぶつからないように神経を使っている雰囲気が漂っていたので、舞台の大きさや舞台装置の配置の関係かもしれませんね。
今となってはどの程度のものだったか検証不可能とはいえ、ニジンスキーの伝説のジャンプの箇所なので、どうしても多くの人が注目しちゃうのは間違いなく、躊躇した感じがうっすらとあったのは、ちと残念でした。

あとね、この衣装。
エイマンさんの脚の美しさが分かる部分は良いのですが(私は彼の脚の形がとても好きです)、あの薔薇のお帽子は、少々お髭と眉の濃いエイマンさんのお顔には似合いませんわね・・・。


●「瀕死の白鳥」 《日本初演》
振付: D.ウォルシュ
音楽: C.サン=サーンス
出演: マリ=アニエス・ジロ

舞台に向かって右前方のドア(私の座席の近くだった)から、突如、ジロ女史が入ってきて、観客席の間をハイヒールの音を響かせながら舞台まで歩き、観客席から直接上る階段で舞台上に登場するという演出。

舞台に上った後、タバコを一服ふかしてから始まります。

ウォルシュの「瀕死の白鳥」は、人間の女性に化けた白鳥が、ざわめくパーティー会場の中、ある瞬間に思わず正体を垣間見せる、という趣向。
ちょいと夕鶴の「つう」のようです。与ひょうは出てこないけど、きっと彼女の与ひょうがいるんだろうなあと想像させるというか・・・。また、ばたつこうとする羽を必死で押さえこもうとする振付があるのですが、そこが、ここではないどこかへ飛翔(あるいは逃避)しようとする心を、必死に今生きてる現実世界に押しとどめようとしている現代人を象徴するようでもありました。

ジロはこういうのやるとうまいなあ。哀しみとけなげさが伝わってくる。

この作品を踊るジロ女史を見て気付いたのですが、彼女ってかなり右肩がアンバランスに上がっているのですね。両腕を同時に回してくる振付では、それが顕著に見えて、「バレエダンサーでも、両肩のバランスがここまで違うことってあるんだ~」と新鮮な驚き。
(彼女の名誉のために申し上げますが、ある年齢以上の殆どの人間は、両肩のバランスが違っています。私もそうですが、右肩でバッグを持つ癖がある人は、右肩が上がっています。ちなみに、着物の着付けの際、肩のバランスが悪い場合には一方の肩にだけ補正をすることがあります。)

なお、私の隣に座っていた方は、ジロの体格があまりにもがっちり型なので、女装した男性ダンサーが踊っているのだと思っていたそうです(笑)。


●「牧神の午後」よりプレリュード 《世界初演》
振付: D.ボンバナ
音楽: C.ドビュッシー
証明: B.チュッリ
出演: エレオノラ・アバニャート、バンジャマン・ペッシュ

ボンバナ版は、女性と男性がチェンジしています(つまり牧神が女性)。
また、時代設定も現代に置き換えられていて、ヴェールがTシャツになってます(なので、もちろん、牧神はモーモーさんの衣装ではありません。笑)。
有名なラストシーンは、女性ダンサーが男性ダンサーから脱がせたTシャツの臭いをかぐ設定に変更されています。これが「のだめちゃん」を彷彿とさせて、私にはツボでした。


●「幻想~“白鳥の湖”のように」第1幕より
振付: J.ノイマイヤー
音楽: P.I.チャイコフスキー
出演: シルヴィア・アッツォーニ、アレクサンドル・リアブコ

この作品は、狂王ルートヴィヒⅡの人生を描いたもの。
今回のPDDは、ルートヴィヒの友人とその恋人のPDD。
ルートヴィヒⅡの理想のカップルの踊りなのですが、そこだけ取り出して、この複雑な作品全体を感じるのはなかなか難しい。

アッツォーニ&リアブコさんは、愛と美しさだけでなく、そのような理想の2人そのものが幻影のような儚さを持つものであることを体現していて善戦。さすが演技派と思わせるものがありました。


●「プルースト~失われた時を求めて」よりモレルとサンルー
振付: R.プティ
音楽: G.フォーレ
出演: マチュー・ガニオ、ジョシュア・オファルト

今年2回目のモレルとサンルーです(1回目はルグリの新しき世界でのコテとホールバーグ。こちら参照)。

コテ&ホールバーグさんの方が、官能的でしたね。
オファルト&ガニオさんの方が長いバージョンだったのでお勉強になりましたが、このお2人、少年の頃からバレエ学校の同級生だったため、「長年の友人」という関係性が出来上がってしまっていて、それ以外の雰囲気を作り出すことが難しいのではないか?という印象でした。

素の関係性以外の雰囲気を演技によって構築できないのは、もちろん2人の責任だと思いますが、私はガニオさんの方が責任が重いと思いました。
ちょっと彼・・・今、行き詰っている感じがするのです。この作品以外でも、迷いがあるというか、彼の目の前に、薄くて半透明だけど明らかに何かしらの「壁」があって、まだそれを乗り越えられていない感じ。
スキップして特急でエトワールに指名され、もう何年もエトワールを張ってきているけど、彼はまだ26歳。若さと責任ゆえの迷いはあって当然ですので、楽しみに成長を待ちたいと思います。

ところで、ガニオさんは、お顔の美しさだけが取り上げられがちですが、肉体も極めて美しいです。
身体がシンメトリーで、胸~肩~腕・胸~首のストレッチが完璧。
可哀想だけど、隣で踊るオファルトさんは見劣りしました・・・


●「アパルトマン」よりグラン・パ・ド・ドゥ
振付: M.エック
音楽: フレッシュ・カルテット
出演: マリ=アニエス・ジロ、イリ・ブベニチェク

舞台美術はドア1つなんですが、ハンマースホイの絵画を思わず連想しちゃうような雰囲気。
ドアを挟んで、中にいる女と、外にいる男(帰宅か訪問かは不明)との関係性を描くもの。
ジロ&ブベニチェクさんという、職人系演技派ダンサーにはぴったりの演目ですね。

最後にガタイのいいジロ女史が、ブベニチェクをひょいとおんぶして退場していく姿(仲直りして旅行にでも出かける?)が楽しかった。


●「スターズ アンド ストライプス」
振付: G.バランシン
音楽: J.P.スーザ
編曲: H.ケイ
出演: ドロテ・ジルベール、マチアス・エイマン

しっかし、この作品、ロシア人たるバランシンが、アメリカでいかにはしゃいでいたか良く分かる作品ですね。

バランシンは、この他にもアメリカ色の強い作品を数多く作っているし、それらの作品には、彼がアメリカという新天地で、アメリカ文化に純粋に触発されて創作したと感じられるものも多いです。
だけど、この「スターズ アンド ストライプス」に限っては、私はアメリカに媚びてる印象を強く受けてます。
アメリカ人やアメリカという国に対してマイナス感情を持っている人は、おそらくかなり辟易するレベルではないかと想像する次第。

ジルベール&エイマンさんは好演していましたが、この作品には、突き抜けたような明るさと、それに裏打ちされた(根拠レスな)自信を持っているダンサーの方が、圧倒的に合う。
一般的なキャラとしては、南北アメリカのダンサーが良いでしょうね。
オペラ座のダンサーが無理しないでもいいよ~、というのが正直なところ。
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by koharu-annex | 2010-08-14 04:18 | バレエ(座長公演)