もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

マラーホフの贈り物 Aプロ

2010年5月19日(水)午後6時30分 @東京文化会館
マラーホフの贈り物 プログラムA

当初出演予定だったニーナ・カプツォーワとイワン・ワシリーエフが、所属カンパニーであるボリショイの急なリハーサルのために来日できなくなったため(プティ…相変わらずいろんなところでやってくれるぜ)、出演者と演目が一部変更しています。
また、マラーホフの強い希望により、ソロ演目が「瀕死の白鳥」に変更になっています。

【第1部】
●「ザ・グラン・パ・ド・ドゥ」
振付:クリスティアン・シュブック
音楽:ジョアッキーノ・ロッシーニ
出演:エリサ・カリッロ・カブレラ、ミハイル・カニスキン

眼鏡にハンドバッグをかけた女性ダンサーと、男性ダンサーがPDDを踊るコミカルな作品。
最後に女性がリフトされながら、三方に広がるおもちゃの笛をピーっと吹いて終わるところが楽しい。
ガラ公演の導入にぴったりな演目ですな。

●「ジュエルズ」より“ダイヤモンド”
振付:ジョージ・バランシン
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
出演:ポリーナ・セミオノワ、ウラジーミル・マラーホフ

バランシンの振付って、本当に女性ダンサーが綺麗に見える・・・ということは差し置いても、ポリーナが本当に美しかった。
とても若い時期にマラーホフに見初められ(笑)、彼のミューズであり続けるポリーナ。
そのために凄まじい努力を続けていることは、ますます筋肉質になっていく身体を見れば一目瞭然。
しかも、すっかり女王の風格が出てきました。

マラーホフは誰に対してもサポートがとても上手ですが、ポリーナとのときは、特に、彼女をとても大切に扱っているような印象を受けます。

●「ボリショイに捧ぐ」
振付:ジョン・クランコ
音楽:アレクサンドル・グラズノフ
出演:マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメイカー

短い作品。
ボリショイに敬意を込めた、ボリショイらしいアクロバティックなリフトを多用・・・とパンフレットには書いてありましたが、私は、クランコらしいリフトだと思いました(途中でどんどん姿勢が変わっていく。今回は、途中1回ひやりとした場面がありました)。

ラドメイカーは、肩と腕がとても大きくて異様に長い。Mサイズの体に、Lサイズの腕がつけられている感じ。
実は一昨年のシュツットガルトバレエ団の公演の時から、思っていたのでした。
気付いちゃうと、「なんか、こういう手の長いお猿さんっていたよな~」とちょっと頭がぐるぐるしちゃうんですけど、腕が長いと表現手段の幅がぐっと広がるので、ダンサーにとって非常に有利ですよね。
私は、彼の腕の表現をフルに使ったドラマチックな演技が、とても好きです。

●「アレクサンダー大王」
振付:ロナルド・ザコヴィッチ
音楽:ハンス・ジマー
出演:エリッサ・カリッロ・カブレラ、レオナルド・ヤコヴィーナ

濃厚なラブダンス。
下品にならない限界点をちゃんと意識して踊っているとお見受けいたしました。

今はPDDだけだけど、そのうち全幕を発表するそうです。楽しみ。

●「コッペリア」よりパ・ド・ドゥ
振付:アルチュール・サン=レオン
音楽:レオ・ドリーブ
出演:ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル

ヤーナさんは・・・バランスを取るところは悪くないんですけど、動きに全体的に元気がないですね。
まだキャリアが浅いですから、このメンバーの中だと慎重に踊りすぎるのかしら。


【第2部】
「仮面舞踏会」より“四季”
振付:ウラジーミル・マラーホフ
音楽:ジュゼッペ・ヴェルディ
出演;
 冬: 上野水香、長瀬直義、宮本祐宜、梅澤紘貴、柄本弾
 春: 吉岡美佳、柄本武尊
 夏: ポリーナ・セミオノワ、ウラジーミル・マラーホフ
 秋: 田中結子、松下裕次
ほか東京バレエ団

マラーホフの全幕バレエからの抜粋。全体的に衣装がよかったデス。

水香さんは、やっぱり音楽性が独特ですから、集団で踊るよりもソロがいいですね。
一回足が床にひっかかって、ひやっとしました。

冬の男性4人の踊りは、振付がいかにもマラーホフな振付でした(マラーホフが好きな、彼自身がとても綺麗に見える姿勢が随所に盛り込まれている)。
もう少し揃っていたら、良かったですね。まあ、複数の男性ダンサーの踊りを揃えるって、恐ろしく難しいですが。

吉岡さんの頭につけている花輪が可愛かった。
相手の柄本さんが半獣神の役なのですが、モコモコの毛皮を腰から足にかけてつけていて、笑ってしまいました(このブログの過去記事のコメント欄で、ニジンスキーの「牧神の午後」が半獣神なのに、なんで羊じゃなくて牛なのかという点について、ちょいと盛り上がったことがあったので)。

田中さんは、あまり脚を高く上げない上品な踊りでした。
古臭いという人がいるとは思うけど、私はこれはこれで好き。
逆に、ギエム以降、皆、脚上げ過ぎるようになったという批判も耳にしますが、場合によりけり・ダンサーによりけり、で良いのではなないでしょうか。


【第3部】
●「カラヴァッジオ」よりパ・ド・ドゥ(第2幕より)
振付:マウロ・ビゴンゼッティ
音楽:ブルーノ・モレッティ(クロウディオ・モンテヴェルディより)
出演:ウラジーミル・マラーホフ、レオナルド・ヤコヴィーナ

男性デュオによる踊り。
「カラヴァッジオ」は、既にNHKでテレビ放映されているので、一応、録画を見直していきました。

ただ、この作品、難しいんですよね。
カファヴァッジオの人生を、演劇チックに具体的に振付けているのではなく、彼の描いた絵でつないでいくという趣向なんです。かなり抽象的。

テレビ放映のときはベルリンでのフルだったので、どの絵について踊っているのか、ちゃんとその「絵」がバックに掲げてあったんですよ。
が、今回は、それがない。
予習していったとはいえ、そこまで覚えていなくて、「えーと、この踊りは見た記憶はありますよ~。・・・何の絵だっけ~?」という有様。

踊り自体は、非常に高度なパートナーシップを必要とする振付で、見ごたえはありました。


●「ゼンツァーノの花祭り」
振付:オーギュスト・ブルノンヴィル
音楽:エドヴァルド・ヘルステッド
出演:ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル

ヤーナさん、もっと元気出しましょう、ということで。

●「椿姫」より第3幕のパ・ド・ドゥ
振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
出演:マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメイカー

多くの方にとって、今回の白眉だったのではないでしょうか。
最も大きな拍手とブラボーをもらっていました。
私もincredibleだと思いました。(が、私にとっての白眉はラストの白鳥。)

マルグリット役のアイシュヴァルトが、マントをはおって中央に立つ登場シーンから、既に情感あふれてました。
彼女は小柄だけど、技術も高くて演技派でもある、とても良いダンサーですね。
ラドメイカーの大きく長い腕の動きが、振付にとても合っていて、演技がダイナミックでした。

このPDDは、マルグリットとアルマンが、それまでの確執を乗り越えて激情に身をゆだねて愛を確認するシーンですが(もどかしげに、マルグリットのドレスを脱がせる振付まである)、アイシュヴァルトとラドメイカー2人の演技は胸を熱くするものがありました。

●「トランスパレンテ」
振付:ロナルド・ザコヴィッチ
音楽:アルシャク・ガルミヤン、マリーザ
出演:ベアトリス・クノップ、ミハイル・カニスキン(レオナルド・ヤコヴィーナから変更)

女性ボーカル入りの曲。
振付のザコヴィッチも、音楽のガルミヤンも、ベルリン国立バレエ団のダンサーなのだとか。
ポルトガルの民族音楽、ファドの歌姫マリーザの楽曲にフューチャーしたものだとか。

とても良かった。
が、すごく短い作品だったので、もう少し見たかったな。

●「瀕死の白鳥」
振付:マウロ・デ・キャンディア
音楽:カミーユ・サン=サーンス
出演:ウラジーミル・マラーホフ

私の白眉はこれ。(パブロワが踊って有名なフォーキンのものではありません。)
キャンディアの振付は、とーっても難しい。
パンフレットによると、キャンディアは、イタリアのアルテ&バレットの芸術監督を務めながら、様々なカンパニーに作品を提供している新進気鋭の振付家だそうです。

ご存知の通り、サンサーンスの「動物の謝肉祭」の「白鳥」の音楽なんですが。
この曲は、チェロ1台、ピアノ2台の、合計3台の楽器で演奏されます。
  チェロは、水の上の白鳥の動きを表し(これが主旋律)、
  ピアノ1(細かい音形が連続)は、水の下の白鳥の水かきの動きを表し、
  ピアノ2(ゆったりとした音形の連続)は、水面の動きを表す、
とされています。

有名なフォーキンの振付は、このうちチェロとピアノ1、つまり白鳥の動きにフォーカスした振付です。
しかも、脚のパドブレが水下の水かきの動きを表し、上半身が水上の白鳥の動きを表す、というかなり具象的な振付。
もちろん、これに死に行く白鳥の最後のきらめきみたいな情感をのっけて踊るわけですが。

今回マラーホフが踊ったキャンディアの振付は、ピアノ2の水面の動きをも取り込んで、全体をちょっと抽象化しつつ、時折、見ていて「皆さん、はい、注目。この状況のとき、白鳥はこんな動きしますよね~」と説明したくなるような、具体的な味付け(翼をはためかせるところや、ククーッ、カクンッ…みたいな白鳥の首の動きを、腕などで表す)が施されている。
これが絶妙なバランス。

この振付を真正面から踊って賞賛を受けられるダンサーとして、マラーホフは筆頭に上がると思う。
彼のエンターティナー性、お茶目なところもあるダンス大好きキャラクター、そして、それを単なる「ギャグ」にしない超絶技巧を支える技術の圧倒的高さ。
これらがあるために、この演目における彼の演技は光り輝いてる。
マラーホフ自身が、この演目をやることを強く意向した、というのは頷けます。

本当に、見ていて楽しかった。
また、マラーホフの演じた「瀕死の白鳥が見せる、最後の生の煌き」が、とっても美しかった。

私は、嬉しさの笑いをこらえるのに必死で、声を殺してひーひー言ってましたよ。
[PR]
by koharu-annex | 2010-06-06 10:58 | バレエ(座長公演)