もしかしてトホホ(http://blog.livedoor.jp/takurere1025/)の別館です。表現系に特化して更新します。


by koharu-annex

「演劇的な演目」か、「音楽的な演目」か、という視点

後半に書いている真央選手に合いそうな演目について、青字部分を加筆しました。

前回の記事の最後にお願いした真央選手の「表現力」に関する、過去の論評や解説について、たくさんのコメントをありがとうございました。

どれも有益な情報で、大変勉強になるとともに、今回の考えをまとめるのにとても役立ちました。皆様、ご協力誠にありがとうございました。追って個別にコメント欄で返信させて頂きます。
(いや~実は、昨日、ジムでトレーニングし過ぎたせいで、ひどい筋肉痛でPC打つのもちょっとつらいのです。。。トレーニング後のストレッチの際、後ろに「ゴリさん」(ガレッジセール)がいらっしゃったらしくて、ジム友が後でこっそり教えてくれたのですが、「え?太陽にほえろ?」(竜雷太氏)と答えて、友を絶句させるほど脳も疲弊・・・)

さて。
音楽にあわせた身体表現って、演劇的な演目か否か、という観点から分類することが出来ます。
演劇的でない演目の主なものは、音楽的な演目です。これらを簡単に説明すると以下のようになります。

演劇的な演目」 ・・・バレエで言うと物語バレエですね。全幕ものは全てここに入ります。

音楽的な演目」 ・・・バレエにおける、明確なストーリーがないコンテンポラリー作品の殆どはこれに入ります。
    「音楽的な演目」は、音楽と表現者の主従関係で、だいたい次の3つくらいに分類できる。
     (1)音楽が主役
         「音楽を視覚化」した、といわれる類型はここに入る。
         表現者の個性はむしろ消して、音楽と寄り添い、音楽に同化させる。
     (2)表現者と音楽が同格
         表現者が音楽に新たに別の旋律を加え、あたかも二重奏の様相を呈する。
     (3)表現者が主役
         表現者の個性を前面かつ全面に出し、音楽を利用して、ある世界観を表現。


ここで、押さえておくべきポイントは、4つあります。

1つ目は、「演劇的な演目」と「音楽的な演目」では、目指す表現が全く異なる、ということです。
なので、その演目が「音楽的な演目」なのに、「演劇的な演目」における表現(そしてその表現からもたらされる感動)を求めるのは、そもそも無理な話です。世の中には、ここが分かっていない人が、ものすごく多い。

2つ目は、多くの人々は、「音楽的な演目」よりも、「演劇的な演目」の表現の方が好き、という事実です。
どのバレエ団においても、「演劇的な演目」の方がチケットの売上げが圧倒的に良いのは、このせいです。別ジャンルだけど、演劇的な「オペラ」「ミュージカル」という形式の方が、オペラ歌手やミュージカル女優によるリサイタルやコンサートよりも人気がある、ということもこの表れかな、と。
私は、バレエ好きの中でも、比較的、「音楽的な演目」も好きなタイプだと思いますが、残りの人生で観られるバレエの類型を選択しなければならないとしたら、迷わず「演劇的な演目」を選びます。

3つ目は、「演劇的な演目」の感想は素人でも雄弁に表現できるけれど、「音楽的な演目」の感想を文章で表現することは、プロですら非常に難しい、という事実です。
私も、バレエのレビューで、露骨にその傾向があります(笑)。「音楽的な演目」の感想を具体的に書こうとすると、ものすごく哲学的になっちゃって「誰も読まんわ」みたいな文章になるか、感想を書いている私自身の内面を書いたような、こっ恥ずかしい文章になるか、どっちかですわ。だから、「良かった」とか「素晴らしかった」とか、表面的な、通り一遍の文章で、さらっと終わらせることが多い。
プロの舞台レビューをみても、哲学的、内省的、あるいは文学的になり過ぎて一般人にはチンプンカンプン、という傾向はあると思いますね。そして、チンプンカンプンであるがために、ますます一般人が離れていくという、レビュアーが意図しない恐怖の悪循環がそこに。

4つ目は、演劇的な演目においては、表現者の個性がその「役」と違和感がない場合は、「演劇的要素」に助けてもらえることが多々ある(=簡単に「表現力」を評価してもらえる)、という事実です。特に表現の地力が小さい人は、その傾向が顕著です。
ちなみに、バレエダンサーのデビューは、物語バレエからです。いきなり筋なしのコンテンポラリーから入ることは殆どない。演劇的な演目では、「役」のキャラクターで表現の方向性を固定してもらえる上、お芝居のマイムという表現手段を加えることができるから表現力の底上げができる、さらに、ちょっとした動作、あまつさえ意図しない表情やしぐさまでも、その「役」に結びつけた「表現」として捉えてもらえる等々、何かとお得なんですわ。

と、ここまで書いたら、私が言わんとしていることについて、皆様、既にほぼ理解されたかと(笑)。

そう、真央ちゃんの過去の演目です。
シニアに完全に移行(という言い方でOK?)してからは、彼女には、「演劇的な演目」が皆無です。
彼女の演目は、「音楽的な演目」の中でも、彼女自身を主役にもってきた(2)あるいは(3)しか、やってません。(私の感覚では、(1)はないです。そもそもフィギュアでは、敢えて(1)をやる必要はありませんしね。)

私は、これは、ものすごく理解できる。彼女、逸材だもの。

以前、表現力に特化して考える~真央ちゃんの特異性という記事で書いたように、彼女の「自己」って、非常に壮大です。
なので、「演劇的な演目」で、彼女の表現に「役」という付加価値をつけたり、底上げをする必要はない。
しかも、下手に「演劇的な演目」を選択すると、演技をその「役」に閉じ込めてしまうことになり、彼女自身の全てを出すことができない。
そんなもったいないこと、振付家やコーチは、ゼッタイに選択しない、「真央自身」を全面に出して勝負したい、と思うだろうと、ワタクシ、勝手に想像する次第。

ところで、私は、上記でも引いた、表現力に特化して考える~真央ちゃんの特異性という記事の最後に、真央ちゃんが表現力が劣っていると言われているならば、考えられる理由は「技術が高い」ことにあることを指摘し、バレエの世界でも一般的に跳びぬけて技術の高い人はその有する表現力が過小評価されてしまう、ということを書きました。

私は、今でも、この「技術の高さによる表現力の過小評価」が、「真央ちゃんの表現力は低い」とされている一番の理由だと思っています。

ただ、こと「表現力」を世間にどう評価してもらえるか、好評価であったとしても、どのような言葉で評価してもらえるか、という観点から考えた場合、上で述べた勝負の仕方(演目の選択)が裏目に出たかも、とも思います。

あぁ、それと、「子供っぽい」という評価は、「くるみ割り」を引きずっているか、そうでないなら、クラシックな「お行儀の良い表現」を「子供っぽい」という言い方で揶揄しているかどちらかでしょうね。そういう方々は、おそらく、バレエのことも、「優等生っぽくて退屈」とか、「型にはまって面白くない」とか、そういうタイプの批判をされるのだと思います。それはそれとして、ある一つの見方である、と認識しておけばいいだけの話ですわね。

いずれにしても、真央選手の「表現力」に対する世間の評価は、「演劇的な演目」を選択することによって、かなり好転する可能性が高いと思います。

もちろん、私は、大衆迎合的に、「演劇的な演目」を選択すればよい、と考えているわけではありません。
正直、鑑賞者としては、あれだけ確立した「自我」の土壌の上に乗せられる、演劇的な演技、というものに、大変に興味があるんです。
しつこく私が引退シーズンだったら良かったのに・・・と言い続けている、集大成感漂う、「鐘」という演目を世界選手権でやり遂げた以上、「音楽的な演目」にこだわる必要は、もはやないとも思いますし。そういう意味では、違う分野に踏み出すには、良い機会なのではないか、と。

真央選手は、これまで「演劇的な演目」をやってないし、そもそも彼女は本来的には役者タイプではありませんから、トップスケーターとしての面目躍如!な、演劇的な演技をするためには、それなりの訓練と、コツの習得が必要になると思います。

が、吸収力が高そうな彼女のこと、そこは大丈夫ではないでしょうかね。
まあ、ぶっちゃけると、タラソワさんに、「恋をしなさい。」と言われていたそうですが、その通りですよ。片思いでもいいから、切ない想いの1つや2つ経験すれば、おそらくあっという間ですよ(たぶん)。

具体的には・・・
コメント頂いた方からの情報によると、実現不能のようですが、ジュリエットは、今でも私の一押し。
これは、チャイコフスキーじゃなくて、プロコフィエフの方がお勧めでございます。

それが無理なら・・・椿姫かな。美しい高級娼婦だけど、高潔なところと、深い慈愛がある。これは彼女の個性と重なりますから。
こちらは、オペラのヴェルディじゃなくて、バレエの「椿姫」で使われているショパンの方ね~。
バレエの「椿姫」には、リストのピアノソナタを使ったものや(アシュトン版「マルグリットとアルマン」)、ベルリオーズを使ったもの(牧阿佐美版)などもあるのですが、ここはショパンで。


白鳥、というご提案も頂いたのですが、これは「演劇的な演目」を数演目こなして、満を持してやって頂ければ、と。
白鳥はサンサーンスの瀕死の白鳥も合わないわけじゃないけど、真央女史にやって頂くのであれば、やっぱりチャイコフスキーでしょ。

と言いながら、私は、「!!…そうきたか~」とか、「こりゃ、一本取られた!!(ペシッ)」と思ちゃうような演目も期待してたりします(笑)。

ここは、いろいろ皆様のご意見があると思うので、コメントまってまーす。

それじゃ、おやすみなさーい!
新しい1週間、また頑張りましょーー
[PR]
by koharu-annex | 2010-05-31 01:38 | フィギュアスケート女子